POSデータを活用して「メニュー計画」を立て、客単価アップを狙う

2026年1月27日

国内流通トピックス

■業種・業態:飲食店  
■キーワード:客単価アップ/バスケット分析/POSデータ

集計データのイメージ画像

客数を増やすことが難しい昨今の環境において、既存のお客様の客単価を適切に向上させることは、売上増加の最も確実な方法の一つです。
本稿では、客単価アップを目的とした「メニュー計画」の立て方に焦点を当て、バスケット分析を活用した具体的な手法を解説いたします。

客単価アップの重要性

メニュー表のイメージ画像

「客単価をなんとか上げたい」という方は多いかと思いますが、単純な値上げはお客様離れを招くリスクがあります。
重要なのは、お客様の購買行動を正確に理解し、自然な形で追加注文を促すメニュー戦略を立てることです。POSデータに基づくバスケット分析により、お客様自身も気づいていない「相性の良い商品の組み合わせ」を発見し、戦略的なメニュー開発・配置が可能になります。

バスケット分析(合わせ買い分析)の基本

集計グラフのイメージ画像

バスケット分析とは、同一会計内で一緒に購入される商品の組み合わせを分析する手法です。この分析により、次のことが分かります。

  • どの商品とどの商品がよく一緒に注文されるか
  • ある商品を注文したお客様が次に注文する可能性が高い商品は何か
  • 効果的なセットメニューの組み合わせ

バスケット分析では、2つの重要な指標を使用します。支持度と信頼度です。

  • 支持度(Support)の計算式
    支持度 = (商品AとBが同時に注文された回数) ÷ 総取引数 × 100
  • 信頼度(Confidence)の計算式
    信頼度 = (商品AとBが同時に注文された回数) ÷ 商品Aが注文された回数 × 100

(例)カフェレストランA店の分析事例
総取引数:1,000件

  • ハンバーガー注文数:400件
  • ポテト注文数:350件
  • ハンバーガーとポテトの同時注文:280件
  • 支持度=280 ÷ 1,000 × 100 = 28%
  • 信頼度=280 ÷ 400 × 100 = 70%

こちらのA店では、全取引の28%でハンバーガーとポテトが同時注文され、ハンバーガーを注文したお客様の70%がポテトも注文しています。この組み合わせは「ゴールデンコンビ」として、セットメニュー化の候補となります。

POSデータから「ゴールデンコンビ」を発見する

次に、3品以上の分析例を紹介します。

(例)イタリアンレストランB店の事例

1ヶ月間のPOSデータ分析(総取引数:2,500件)

商品A 商品B 同時注文数 支持度 信頼度 判定
マルゲリータ グラスワイン赤 625件 25% 68% ★★★
カルボナーラ シーザーサラダ 450件 18% 62% ★★★
ペペロンチーノ ブルスケッタ 375件 15% 58% ★★
ボロネーゼ ミネストローネ 300件 12% 54% ★★
リゾット 白ワイン 275件 11% 72% ★★★

判定基準

  • ★★★:支持度15%以上かつ信頼度60%以上(最優先でセット化)
  • ★★:支持度10%以上かつ信頼度50%以上(セット化検討)
  • ★:支持度10%未満または信頼度50%未満(通常管理)

さらに、3品以上の組み合わせパターンも見てみましょう。

人気の3品セット組み合わせ

組み合わせ 同時注文数 支持度 平均単価
パスタ + サラダ + ドリンク 380件 15.20% 1,850円
ピザ + 前菜 + ワイン 285件 11.40% 2,650円
リゾット + スープ + デザート 195件 7.80% 2,200円

この分析により、お客様が自然に選ぶ組み合わせが明確になり、効果的なコース設計が可能になります。

セットメニュー開発の実践

マルゲリータ×ワインセットのイメージ画像

次に、価格設定の戦略的な考え方について述べます。
セットメニューの価格は、単品合計よりも魅力的な設定が必要ですが、利益を確保することも重要です。

価格設定の計算例

「マルゲリータ×ワインセット」の開発

項目 単品価格 原価 粗利 粗利率
マルゲリータ 1,200円 360円 840円 70%
グラスワイン赤 600円 180円 420円 70%
単品合計 1,800円 540円 1,260円 70%

セット価格の設定シミュレーション

セット価格 割引率 粗利額 粗利率 評価
1,680円 7%引き 1,140円 68% ◎ お客様にとって魅力的、利益も確保
1,600円 11%引き 1,060円 66% ○ バランス良好
1,500円 17%引き 960円 64% △ 割引が大きすぎる

推奨価格:1,680円(7%割引)

  • お客様メリット:120円お得
  • 店舗メリット:粗利率68%を維持、注文率向上による売上増

セットメニュー導入による効果
(例):イタリアンレストランB店の導入前と後の比較

□導入前(単品注文)

  • マルゲリータ単独注文:200件/月
  • ワイン単独追加注文率:68%(136件)
  • 売上:1,200円×200 + 600円×136 = 32.16万円
  • 粗利:840円×200 + 420円×136 = 23.52万円

□導入後(セットメニュー含む)

  • マルゲリータ注文:200件/月
  • セット注文率:85%(170件)※単品注文より向上
  • セット売上:1,680円×170 = 28.56万円
  • 単品売上:1,200円×30 + 600円×15 = 4.5万円
  • 合計売上:33.06万円(+0.9万円)
  • 合計粗利:1,140円×170 + 840円×30 + 420円×15 = 24.99万円(+1.47万円)

□月間改善効果

  • 売上増加率:2.8%
  • 粗利増加額:1.47万円
  • 年間粗利増加:17.64万円

クロスセル・アップセルの促進

ワインを提供する店員のイメージ画像

さらに、スタッフによる提案販売の強化について考えてみましょう。POSデータから得られたゴールデンコンビ情報をスタッフに共有し、効果的な提案販売を実施します。

  • 提案販売トークスクリプト例

(例1):ゴールデンコンビの提案
お客様:「マルゲリータをお願いします」
スタッフ:「マルゲリータですね。当店では、グラスワインとのセットが大変人気でして、セットですと120円お得になります。いかがでしょうか?」

(例2):3品目の提案
お客様:「パスタとサラダをお願いします」
スタッフ:「ありがとうございます。お食事後にエスプレッソはいかがですか?パスタとの相性が抜群で、多くのお客様にご好評いただいています」

□提案販売の効果測定

レストランD店の提案販売導入効果

項目 導入前 導入後 改善値
セット注文率 32% 54% 22%
追加注文率 18% 35% 17%
平均客単価 1,650円 1,925円 +275円
月間客数 2,000人 2,000人 -
月間売上 330万円 385万円 +55万円

□年間効果:660万円の売上増加

以上、POSデータを活用した客単価の改善策について紹介しました。本稿で紹介した以外にもメニューブックの配置やデザイン、スタッフによる提案販売などを工夫することで、客単価のアップを図ることができるはずです。

株式会社横浜マネジメントコンサルティングJPS
中小企業診断士 江草 和彦
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2025年12月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。