感染症流行期のシフト管理と休業補償の考え方
2026年1月27日
お店づくりトピックス
■業種・業態:飲食店
■キーワード:感染症流行期/シフト管理/休業補償
冬になると飲食店にとって大きな課題となるのが、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症への対応です。スタッフの急な体調不良による欠勤は避けられず、結果として人員不足が発生し、シフト管理や店舗運営に大きな影響を与えます。また、感染の疑いがあるスタッフを無理に出勤させてしまうと、店内で集団感染が発生し、営業停止に至るケースもあります。冬の飲食店には、通常時以上に「感染症リスクを前提とした労務管理」が求められます。本稿では、感染症流行期に特に注意すべきシフト管理と休業補償の考え方について解説します。
感染症流行期に必要なシフト管理の基本方針
まず重要なのは、流行期のシフト作成を「通常時と同じ考え方で行ってはいけない」ということです。特に1〜2月はインフルエンザやノロウイルスがピークを迎え、スタッフの欠勤率は年間で最も高まる傾向にあります。予測される欠勤リスクを前提に、以下のような対策が有効です。
- 「急な欠勤前提」のバックアップ体制を組む
可能な限り平時よりも多めにスタッフを確保しておく、もしくは「呼び出し可能」なアルバイトや社員を確保しておくなど、欠勤が発生することを前提でシフトを作成します。特にピークタイムには1名余剰の配置を標準にすると、急なシフトの穴にも対応しやすくなります。 - 兼務できるスタッフを増やす
ホールとキッチンの両方にある程度対応できる「ハイブリッド人材」を普段から育てておくことで、急な欠勤時の応援対応が可能になります。冬の繁忙期前にクロストレーニングを行うことで、現場の柔軟性が大きく向上します。 - シフト公開後の“調整ルール”を明確化
「誰が休んだら誰が代わりに入るか」「代替要員の決定方法」「ヘルプ要請の基準」などをあらかじめ明文化しておくと、店長の現場負担も減り、スタッフ間の不公平感も抑えられます。 - 体調不良時の“早めの申告”を促す
飲食店は特に感染症リスクが高いため、熱・咳・嘔吐などが出た時点で早期に申告してもらう仕組みが欠かせません。「無理して出勤しない文化づくり」が、結果的には店舗全体を守ることにつながります。
体調不良時の出勤可否判断と休業補償
次に重要なのが、体調不良で欠勤するスタッフへの休業補償をどう考えるかという点です。休ませるべきタイミングを明確にしないと、無理な出勤が発生し感染拡大につながります。
□原則:感染症の疑いがある場合は“出勤停止”
飲食店では、嘔吐や発熱などの症状は重大なリスクです。
特にノロウイルスは少量でも感染力が強く、営業停止命令の対象となる可能性があります。
店側は安全配慮義務の観点から、症状があるスタッフを出勤させない判断が求められます。
□休業手当(労基法第26条)のポイント
従業員が出勤できない理由に応じて、休業手当が必要かどうかが変わります。
店側の判断で休ませる場合(自主的な出勤停止)
→ 原則として、休業手当(平均賃金の60%以上)が必要。
(例)
- 熱が37.3℃だが出勤は不安 → 店側判断で休ませる場合
- 感染者発生に伴う店舗消毒で休業させる場合
本人の体調不良・感染確定で働けない場合
→ 労働者都合の欠勤扱いで休業手当は不要。
※ただし無理に出勤させると安全配慮義務違反になるため注意。
濃厚接触で行政が出勤停止を指示する場合
→ 休業手当は不要。ただしシフト調整や代替対応が必要。
飲食店では「感染疑いの初期段階で店側が止めるケース」が多く、この場合は休業手当が発生しやすいため、方針を明確にしておくことが重要です。
感染症時の“無理な出勤”を防ぐための制度づくり
現場で最も危険なのは、スタッフが「休むと迷惑をかける」と思って無理に出勤してしまうケースです。
これを防ぐために、以下のような仕組みを導入すると効果的です。
□症状申告フォームやチャットツール等での報告ルール
店長への電話連絡のみでは見落としが発生しやすく、ルールも属人的になりがちです。申告フォームやチャットツール等での統一ルールを整えることで、情報の漏れや誤解が減ります。
□休業時の「賃金取り扱い」を事前に共有
休む際の賃金がどう扱われるか分からないと、無理に出勤しようとします。
休業手当が発生する条件・無給となるケースなどを事前に周知しておくことが大切です。
□代替シフトへの協力インセンティブ
急遽ヘルプに入ってくれたスタッフに手当を出す店舗も増えています。
こうした仕組みは繁忙期の安定運営に有効となるでしょう。
シフト管理の基本方針
- 急欠勤を前提にバックアップ要員を配置する
- ホール/キッチン兼務スタッフを育成し柔軟化
- シフト公開後の調整ルールを明確化
- 体調不良時の早期申告を促す仕組みづくり
出勤可否の判断
- 発熱・嘔吐・下痢など感染症が疑われる場合は原則出勤停止
- ノロウイルスやインフルエンザ疑いの場合は特に厳格に対応
- 安全配慮義務の観点から「無理な出勤」をさせない方針が必要
休業補償(休業手当)の考え方
●店側判断で休ませる場合
→ 休業手当が必要(平均賃金の60%以上)
●本人の体調不良で働けない場合
→ 休業手当は不要(労働者都合の欠勤扱い)
●行政の指示による出勤停止
→ 休業手当は不要
※飲食店では「感染疑いの初期で店側が止めるケース」が多く、
休業手当が発生しやすいため事前に基準を定めておくことが重要。
無理な出勤を防ぐ仕組み
- 症状申告フォームやチャットツールなどの報告ルールの統一
- 休業時の賃金取扱い方針を事前に明確化
- 急なヘルプ協力者へのインセンティブ制度
以上のように、インフルエンザやノロウイルスの流行期に、飲食店が最大の力を発揮するためには、単に“人が足りるかどうか”ではなく、欠勤が発生しても店舗が回る仕組みをあらかじめ整えておくことが必要です。
特にシフトの余剰配置、兼務スタッフの育成、早期申告ルール、休業手当の整理などを組み合わせることで、感染症のリスクを最小限に抑えつつ、スタッフが安心して働ける職場環境が整います。冬の時期こそ、飲食店の労務管理の力量が問われる季節と言えるでしょう。店舗のスタッフ全員で、無理なく乗り越えたいですね。
(文)こんくり株式会社 代表取締役
特定社会保険労務士 安 紗弥香
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭
※当記事は2025年12月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

