飲食店に広がるPOSレジの進化と普及

2026年2月20日

国内流通トピックス

■業種・業態:飲食店  
■キーワード:オーダーシステム/普及率/補助金制度

レストランのイメージ画像

近年はスーパーなどの小売業だけでなく、中小の飲食店でもPOSレジの導入が進んでいます。POS(Point of Sales)は「販売時点情報管理」の略で、POSレジは商品の売上を単品単位で集計・管理できる機能を搭載したレジスターのことで、売上情報の管理や集計だけでなく、分析まで対応することができます。今回は、飲食業界で急速に広がるPOSの導入状況をレポートします。

中小小売店、飲食店へPOSレジ導入が広がった背景

レジカウンターのイメージ画像

初期のレジ機は今から150年近く前にアメリカで開発されました。当時のレジ機は会計金額の計算と金銭の収納という、基本的な機能だけを備え、不正防止のために作られた機械でした。日本では現在も、そうしたシンプルな機能に特化したレジ機が、個店経営の小規模な商店で使い続けられています。

POSレジは、日本では1983年に某コンビニが全店舗に導入したことで注目を集めました。しかし当時、POSシステムは高価なものであったため、注目度は高まっても中小規模の店舗が容易に導入できるものではなく、従って普及のペースはゆるやかでした。

コンビニではバーコードを読み取る仕組みを使うことで、商品一点一点に値札を付ける必要がなくなり、作業効率が大幅にアップ。さらに商品管理機能を品揃えや在庫管理に活用し、欠品による売上ロスや過剰在庫も大幅に削減されました。
コンビニに続いてスーパーマーケットやドラッグストアなど、大型店を中心にPOSレジの導入は拡がり、POSレジのないチェーン店はほぼ見かけなくなりました。

しかし、それでも中小小売店や飲食店で、気軽に導入できるものではありませんでした。そうした状況を変えたのが、ITデバイスの小型化と安定したネットワーク環境の普及です。

2010年代に入るとパソコン用に開発されたWindowsやタブレットを利用したPOSレジが登場しました。PCやタブレットは、業務用に開発されたOSを搭載した専用機に比べると安定性に欠けるところはあるものの、様々なアプリをダウンロードし、インストールすれば簡単に機能を追加したりアップデートできるといった利便性があります。POSレジとして機能するアプリも数多く開発されたことで、中小規模の店舗にもPOSレジが普及し始めたのです。

オーダーシステムで飲食店の仕事が激変

オーダーシステムを利用しているイメージ画像

POSレジで売上管理やメニューの分析ができることで、問題点や改善策の検討に役立ちましたが、劇的に飲食店の業務を変えたのがオーダーシステムです。ハンディターミナルやタブレットを使って注文を受けてキッチンへ自動で伝達できるシステムは、従業員の作業負担や注文ミスを大幅に減らしました。また、メニューブックの印刷も不要になり、コストの削減とメニューの入れ替えも簡単にできるようになりました。

そしてさらに無線LANやモバイルルーターなどが普及し、どんな場所でもネットワークに接続できる環境が整ったことも、中小規模店にタブレット型POSレジの導入を促した要因です。

クラウドの発展と普及も、大きく影響しました。クラウドは、データやサービスをインターネット上にあるサーバー上で管理する仕組みです。クラウドを活用すれば、ソフトウェアやサーバーなどを自社で購入・管理しなくてよく、初期投資が抑えられます。またデータをクラウドサーバー上に保存するので、複数店舗の売上げや顧客動向をリアルタイムで管理することができます。各店舗の売上データを比較して、全体的な経営戦略を効果的に立てることもできます。

そのため、タブレット型POSレジの多くはクラウド型POSシステムの形態をとっており、POS市場で急成長を見せています。

飲食店でのPOSレジ普及率は44%

サービスカウンターのイメージ画像

飲食店の経営に関する某情報サイトは2023年7月、同サイト会員の飲食店経営者・運営者約390名に対し、POSレジの利用状況についてアンケート調査を行いました。その結果、全体の約44%がPOSレジを「利用している」と答えています。

過去の同調査では、2016年に37.1%、2019年に41.6%が利用しているという状況でしたから、ゆっくりとした足取りながら、POSレジの普及率は着実に高まっています。普及率上昇の背景には先述したように、導入のハードルが下がったことが大きいようです。

またPOSシステムの進化と多機能化の流れも、POSレジの普及を後押ししてきました。従来のレジ機能は会計処理が主体でしたが、POSシステムは多様な機能を備えており、飲食店の業務効率や経営効率の向上にも役立ちます。

例えば顧客の注文履歴データや嗜好などの分析機能は、売れ筋メニューの把握や営業戦略の立案に役立ちます。また最新のPOSレジは従業員のシフトや勤怠管理の機能も備えているものもあり、これにより働きやすい職場環境の整備をサポートするとともに、人件費の最適化にも役立てることができます。

また複数店舗の情報を一元管理できるため、売上げなどのデータをリアルタイムで把握でき、的確な複数店管理が可能になることも、最近のPOSレジが備える大きな利点と言えるでしょう。

さらに、クレジットカードや交通系IC、QRコードなど様々なキャッシュレス決済に対応しているシステムが増えています。ある調査によると、飲食店におけるキャッシュレス決済比率は、2025年11月に全国で55.2%でした。

POSレジの導入に際し、飲食店が利用できる補助金制度も

メニュー表を持った店員のイメージ画像

POSレジを導入している飲食店が、全体の半数近くにまで増加していると先述しました。その要因は、比較的安価なタブレット型POSレジが普及したこと以外にもあります。政府が消費税増税に合わせて実施した軽減税率対策補助金制度がそれです。
2019年10月1日に消費税が8%から10%に引き上げられました。そのとき政府は、増税と合わせて軽減税率を導入しました。ところが同時に、初めてテイクアウト(8%)とイートイン(10%)の税率を分けたため、飲食店の経営者はレジや受発注システムの対応に追われたのです。

そうした状況の支援策として、国は軽減税率対策補助金の制度を設けました。これは中小企業・小規模事業者等が軽減税率対応レジを導入する際に、国がその経費の一部を補助する制度です。例えばタブレットとレシートプリンター、キャッシュドロワ(現金保管用引き出し)の3台合計の購入費用が112,800円(税別)だとします。詳細についての説明は省略しますが、補助金によってその3台が実質45,066円(税別)で購入できたのです。かなり大幅な補助だと言えます。

また2023年10月にインボイス制度がスタートしましたが、その際にも、ITツール(会計や受発注のソフト、レジなど)を導入するための経費に対し、国による補助金制度が設けられました。

現在は飲食店経営者に対し、そうした特定の目的を設定した補助金制度はありませんが、飲食店がPOSレジの導入に際し利用できる補助金制度がないわけではありません。

例えば「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化のための取り組みを国が支援する制度で、2026年度(第19回・第20回)も継続される予定です。POSレジ導入は業務効率化の一環として補助対象に含まれており、補助率は2/3、補助上限額は50万円。第19回は5~6月に公募が始まると見られています。

小規模事業者持続化補助金の支給を受けるには、公募期間内に申請者が応募し、審査を受けて採択される必要があります。応募に際しては管轄の商工会議所に「事業支援計画書」の交付を依頼し、提出しなければならず少なからず手間はかかりますが、積極的に利用したい制度です。

人手不足が深刻化する飲食店にとって、セルフオーダーシステムやキャッシュレス機能を備えたPOSレジを導入することは、お客様の利便性の向上や従業員の作業効率アップに確実に貢献します。POSレジは、飲食店を開業する際のマストアイテムになったといっても過言ではないでしょう。

(文)流通ジャーナリスト 渡辺米英
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2026年1月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。