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顧客体験(CX)と顧客ロイヤルティ
価値を高める方法と事例

現代のマーケティングでは、企業と顧客をつなぐすべての接点における体験にフォーカスする「顧客体験」が重要視されています。

その背景には、顧客接点の多様化や、商品で差別化を図る難しさがあります。顧客ロイヤルティを高め、継続的に売上を確保していくには、顧客体験のコンセプトはマーケティング施策に欠かせません。

顧客体験の概要や重要性と合わせ、顧客体験を向上させる方法について紹介していきます。

顧客体験(CX)とは

顧客体験とは、顧客が商品やサービスに興味を持ったタイミングから利用する段階まで、企業とのさまざまな接点で触れるすべての体験を指します。

  • テレビ番組やCMで商品のことを知る
  • SNSで商品のことを調べる
  • 店舗に商品を見に行く
  • ホームページで商品のことを調べる
  • 店舗で商品を購入する
  • アフターサービスを利用する
  • 口コミを見て再購入を検討する

これらすべての接点が顧客体験に該当します。なお、この顧客と企業との接点を「顧客接点」といい、顧客体験は「Customer experience」の略語であることから、CXとも呼ばれています。

顧客体験の重要性

顧客体験が重要視されるようになった背景には、顧客接点の多様化・複雑化があります。

店舗やテレビ、新聞、雑誌、チラシなど、かつてはオフラインの流通チャネルが顧客接点の中心でした。しかし現代では、ネットショップやWEB広告、口コミサイト、SNSなど、オンラインの流通チャネルも発達しています。

特にSNSや口コミサイトによる顧客への情報発信力は強力です。顧客が自ら情報を取得するように変わってきていることから、従来のマス広告のように企業が消費者に直接的な影響力を与えることは困難となっています。

そこで重要になるのが、顧客ロイヤルティをいかに高めていくかという視点です。企業が顧客体験の向上に目を向けるのも自然の流れでしょう。

● 顧客ロイヤルティ:

企業やブランド、商品、サービスなどに対し、顧客が抱いている信頼や愛着。顧客ロイヤルティが向上すると、長期間にわたっての継続的な商品やサービスの利用が見込まれる。顧客ロイヤルティを高めるための施策の一環として、顧客体験の向上があるという関係性。

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また、商品やサービスのコモディティ化が進み、独自性を打ち出すことが困難になってきていることも、顧客体験による価値で差別化を図る必要性が高まっている要因です。

一方、顧客側からみると、商品そのものの価値だけではなく、それによって得られる体験を重視する傾向に購買価値が変容してきていることも理由に挙げられるでしょう。

顧客体験を向上させる方法

顧客体験の向上を図るには、次の3つのプロセスを踏み、施策を推進していきます。

  1. 自社商品・サービスの顧客接点を整理する
  2. 総合評価を測定し現状把握する
  3. 顧客体験向上の課題を洗い出す

自社商品・サービスの顧客接点を整理する

まずは、自社商品やサービスの顧客接点を整理する段階です。あらゆる顧客接点を洗い出し、ステージごとに並べて整理していきます。

【顧客接点の例】

認知
  • ポスティング
  • 新聞折り込み広告
  • テレビCM
情報収集・検討
  • Webサイト
  • SNS
  • 口コミサイト
  • 店頭
購入
  • 店頭
  • ネットショップ
購入後
  • DM
  • メルマガ
  • SNS

総合評価を測定し現状把握する

次に顧客体験を測定して総合評価を行い、現状を把握します。顧客体験を測定するための主な指標を確認していきましょう。

  • NPS(ネット・プロモーター・スコア)
  • 顧客満足度(CS)
  • 顧客努力指標(CES)
  • カスタマージャーニー・タッチポイント
  • 苦情・クレーム

NPS(ネット・プロモーター・スコア)

NPSは、商品やサービスを家族が友人に対してどの程度勧めたいか、「推奨度」を計測する調査です。「0~10」の11段階で評価し、「9・10と評価した人(推奨者)の割合」から「0~6と評価した人(批判者)の割合を引いて求めます。

顧客満足度(CS)

顧客満足度とは、顧客が商品やサービスに満足している度合いを示す指標です。

CSはアンケート調査の実施で比較的容易に把握できます。商品やサービスに対してどの程度満足したか、「1~5」の5段階、または「1~10」の10段階で評価を行います。調査対象者の平均点が顧客満足度になります。

顧客努力指標(CES)

顧客努力目標は、顧客がサービスを利用するにあたり、課題解決に割いた手間や労力を図る指標です。

たとえば商品の使い方がわからないときには、Webサイトで調べたり、カスタマーセンターに問い合わせをしたりと、課題解決を図ります。この際に「Webサイトが見づらく、情報を得るまでに手間がかかった」「カスタマーセンターへの電話がつながりにくい」といった状況では、顧客努力目標は低くなります。

顧客努力目標は、主にアンケート調査によって7段階程度で評価を行い、調査対象者の平均点を算出します。

カスタマージャーニー・タッチポイント

カスタマージャーニーとは、商品やサービスを認知し、情報収集を重ねて検討し、購入してリピート利用していくまでのプロセスを「顧客の旅」として捉えた概念です。そしてカスタマージャーニー・タッチポイントは、カスタマージャーニーに含まれる企業やブランドの顧客接点にあたります。

横軸に「認知」「興味」「検討」「購入」「購入後」などステージを記入し、縦軸には「顧客接点」「顧客行動」「顧客心理」「感情」などの項目を設けたカスタマージャーニーマップを作成すると、現状の課題や顧客のアクション契機などを視覚的に理解しやすくなるでしょう。

苦情・クレーム

苦情やクレームは、顧客体験がマイナスとなっている要素の把握に役立ちます。カスタマーセンターに寄せられる内容を集計するほか、SNSの投稿から情報を取得する方法もあります。

顧客体験向上の課題を洗い出す

NPSなどの手法を用いて顧客体験を総合評価し、現状を把握した結果をもとに課題を整理します。

具体的には、顧客体験の評価を下げている顧客接点を見つけ、改善を図るアプローチです。たとえば「レジの会計待ちの時間が長い」という課題が顕在化しているなら、会計時間の短縮に向けてセルフレジの導入などを検討します。「パッケージの説明が見にくい」という課題であれば、説明文の内容や文字の大きさなどが改善するべき点となります。

顧客体験の向上事例

ここまで顧客体験を向上させる方法を解説してきましたが、実際に顧客体験の向上に成功した事例を紹介します。

事例1:ポイントカードからアプリへ切り替え

某アパレルブランドでは、テレビCMなどを展開して認知拡大を果たし新規顧客の獲得に成功した一方で、顧客ロイヤルティが上がってこないという課題を抱えていました。

そこで、購買フェーズのどこに問題があるか把握すべく顧客接点を調査したところ、「ポイントカードを出すのに手間がかかり、レジ待ちが長引く要因になっている」課題を発見。ポイントカード機能を有するスマホアプリに切り換えたところ、顧客のリピート率の向上につながりました。

事例2:アプリでスムーズに欠品商品を自宅にお届け

別のアパレルブランドでは、店舗に在庫がない商品を自宅に配送するサービスを展開しています。しかし、配送の都度、会員番号や氏名、住所などをその場で確認していたのでは、手間や時間がかかります。そこで、スマホアプリのバーコードを読み込み、店舗で迅速に会員情報を取得できるシステムを導入しました。

これにより、欠品時の配送手続きは大幅に簡略化。顧客が来店したときに欲しい商品が欠品していると、顧客体験の評価は通常では下がってしまいますが、手軽に商品を配送するシステムが導入されたことでビハインドも解消され、顧客体験の向上につながっています。

まとめ

オンラインを含む顧客接点の多様化や、商品のコモディティ化を背景に、「顧客体験」のコンセプトは年々重要性を増しています。顧客が自ら情報を取得する動きが当たり前になっている現在、差別化を図るには顧客体験の向上、ならびに顧客ロイヤルティの獲得は欠かせない施策になるでしょう。

NPSや顧客努力指標、あるいは苦情やクレームから購買行動のボトルネックとなっている顧客接点を特定し、課題の解消に努めましょう。

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