データドリブンマーケティングとは?
指標の立て方や進め方をわかりやすく解説
データドリブンマーケティングは、勘や経験といった定性的な基準ではなく、定量的なデータを起点に据えたマーケティング手法です。インターネットの普及、社会情勢の変化スピードの加速、企業が保有するデータ量の増加などの背景が絡み合い、いまではマーケティングにおけるデータの有効活用は事業成長に欠かせない要素となっています。
本記事では、データドリブンマーケティングの概要と目的・指標、進め方や、成功させるためのポイントを解説します。
データドリブンマーケティングとは
データドリブンマーケティングとは、収集したデータを遵守して、経営判断や意思決定を下すマーケティング手法です。定性的な「勘」に立脚したマーケティングでは、その再現性には疑問符が付きまといます。一方、データドリブンマーケティングでは収集したデータに立脚する定量的な意思決定が重視されます。
一部では「データドリブンマーケティング=データ分析をすること」と解釈される向きもありますが、それは誤りです。データドリブンの意味である「データ駆動」を踏まえると、データ分析はマーケティングのスタート地点にすぎません。
「データドリブンマーケティング=データ分析から始まるマーケティング」と覚えておきましょう。
直感や感覚に依存しない
先にも触れましたが、データドリブンマーケティングは直感や感覚からは始まりません。あくまでも収集したデータに基づいた分析・検証工程を経て、マーケティング戦略を組み立てて実行・改善することがデータドリブンマーケティングです。
データドリブンマーケティングに注目が集まっている背景には、社会を取り巻く環境の変化、ならびに市場競争の激化があります。インターネットの普及や、社会情勢の変化スピードが加速していることから、直感や感覚に依存していたマーケティング手法が成り立たなくなってきたのです。
また、データドリブンマーケティングは定量的な評価が可能であることからPDCAサイクルを回すことにも適しています。変化の速い現代では、マーケティングの効果検証と改善をリアルタイムで繰り返せるスピード感が求められているのです。
データから仮説を立てることが重要
感覚的な発想から根拠となりそうなデータを探し求めるのではなく、取得したデータから仮説を立てるベクトルを遵守することも、データドリブンマーケティングのポイントです。
データドリブンの対義語に「デマンドドリブン」があります。これは「要求」をマーケティングの出発点とする考え方で、その要求は、戦略を実行するだけの価値を有するのかを検証するためにデータ分析が行われます。
こうした流れではなく、あくまでもデータ分析を起点として仮説を立てていくプロセスが、データドリブンマーケティングでは重要です。
データドリブンマーケティングの目的
データドリブンマーケティングが注目されている背景には、企業が保有するデータ量が増えていることも挙げられます。
例えばホームページを持っている企業であれば、Googleアナリティクスを使ったデータ収集が可能です。CRMなどの顧客関係管理ソフトを導入していれば、さらに多くのデータを集積できます。
これらのデータを分析することで、これまではブラックボックスとなっていた顧客行動をある程度推測できるようになりました。結果、データドリブンマーケティングを活用して、新たな市場の開拓やマーケティング戦略の立案が可能となったのです。
データドリブンマーケティングの指標
マーク・ジェフリーの著書「データ・ドリブン・マーケティング 最低限知っておくべき15の指標」では、次の15個の指標が示されています。
指標 | 意味 |
---|---|
ブランド認知率 | 自社のブランドの認知度がどの程度なのかを測る指標 |
試乗 | 購入を判断するために商品を試してみるアクション |
顧客満足度 | 商品・サービスに対する満足度 |
解約率 | 商品・サービスの購入を中止した人の割合 |
オファー応諾率 | オファーの送付数に対する応諾した顧客の比率 |
正味現在価値(NPV) | 現在価値から費用を差し引いたもの |
顧客生涯価値(LTV) | 顧客が企業との関係性を持つ期間における購買額の総和 |
利益 | 売上高から費用を引いた利益 |
内部収益率(IRR) | キャンペーンなどの特別な状況下での投資利回り |
投資回収期間 | 累計支出と同じ額に累計利益を獲得するまでの期間を表す指標 |
直帰率 | ユーザーがWebサイトに訪問して最初に入ったページから移動することなく離脱した割合 |
クリック単価 | リスティング広告やディスプレイ広告で1回クリックされるのにかかる単価 |
トランザクションコンバージョン率 | インターネット上で広告をクリック→商品・サービスの購入に至った割合 |
口コミ増幅係数 | 商品やサービスのWebページへのアクセスのうち、シェアからのクリックに至った割合 |
広告費用対効果 | 収益を費用で割り、投資対効果を測る指標 |
これらはデータドリブンマーケティングを進めるうえで重要な指標です。数値化された上記の指標を分析し仮説を立て、データドリブンマーケティングを推進しましょう。
逆にいえば、上記の指標がそろっていないとデータの信用性は相対的に低下します。データドリブンマーケティングを進めるためには、まずは該当するデータの収集から始めてください。
データドリブンマーケティングの進め方
データドリブンマーケティングは、次の4つのステップで進めていきます。
- プロジェクトメンバーを編成する
- 指標を定める
- 施策を実行する
- 効果検証する
これらを実行する前段階には、前述したデータの収集があります。前章で取り上げた15の要素を満たすデータを手元にそろえ、次のステップに移りましょう。
プロジェクトメンバーを編成する
まずはデータドリブンマーケティングに関係する人物でプロジェクトメンバーを編成します。同時に、メンバーの意思決定フローも定め、どのような流れで施策を実行に移していくのかを整理します。
メンバーは誰でもいいわけではありません。適している人物像には、データの価値を理解する人、データを根拠にしてしか動かない人が挙げられます。勘や感情で判断する人はデータドリブンマーケティングのプロジェクトには不向きです。
指標を定める
ひと口にデータといっても、その種類は無数に存在します。企業に集まるデータの量も格段に増えているため、すべてのデータを活用することは困難でしょう。
つまりデータドリブンマーケティングの実施には、「特定のデータを重視する」決定が欠かせません。「データドリブンマーケティングの指標」で紹介した15項目のなかから、特に自社が重視すべき指標を決定し、具体的な施策の立案へと移ります。
この際には、15の指標がそろっている状態が望ましいです。一覧表や資料にまとめておくと、指標の決定に役立ちます。
施策を実行する
立案した施策を実行するフェーズでは、規定したデータ指標の分析や可視化、加工が必要です。そこから問題点や課題を特定し、初めてマーケティング施策の立案へと移行します。
施策の内容に応じ、マーケティング担当者や関連するクリエイターなどをアサインし、定期的な打ち合わせなどを進めます。
効果検証する
実施した施策は、必ず効果検証を行います。効果を定点観測しなければ、施策の評価や今後の改善の必要性などの判断を下せません。
データドリブンマーケティングの本質は、先に定めたKPIの達成にあります。PDCAサイクルを回し改善点を特定し、次の施策にフィードバックしてください。
データドリブンマーケティングを成功させるポイント
データドリブンマーケティングを成功させるために、次の3つのポイントを意識しましょう。
- データを正しく取り扱う
- 全員がデータを中心に考える
- 効果検証のPDCAを早く多く回す
データを正しく取り扱う
データの価値は高騰しており、いまでは「21世紀の石油」と呼ばれることもあるほどです。その重要性ゆえに、データは正しく扱わなければ、正確な施策立案や判断には役立ちません。
データを正しく扱うためには、そのデータはどのような可能性・ポテンシャルを秘めているのか、考える能力が必要です。データを起点に導き出されるものは何か、明確にする論理的な思考が求められます。
具体的には、異常値に左右されない、複数の項目を掛け合わせて仮説を立てられるなどの能力です。異常値に目を向けず施策に反映してしまうようでは、データドリブンマーケティングは成り立ちません。また、必要に応じて複数のデータを掛け合わせて仮説を立てなければ、到達できない結果があることも理解しておく必要があるでしょう。
全員がデータを中心に考える
メンバーの全員が、データを中心に考えることも重要です。勘や経験に基づく人物の発言力が強い状態では、データドリブンマーケティングは必ず暗礁に乗り上げます。
定性的な判断は無意味なものではありませんが、ことデータドリブンマーケティングを実施する以上、勘や経験に依存する人物はプロジェクトにふさわしくありません。チーム編成の際は、必ずデータ中心で考えられるメンバーで編成しましょう。
効果検証のPDCAを早く多く回す
データドリブンマーケティングで重要なことは、どれだけ早くデータから仮説を生み出せるか、そしてその仮説を動かして効果検証ができるかにあります。つまりPDCAサイクルを可能な限り早く、そして多く回すことが重要です。
データに基づいて実施した施策でも、すべての施策が必ずうまくいくわけではありません。施策の効果を検証し、改善する施策を実行し続けるプロセスこそが重要です。
まとめ
データドリブンマーケティングは、情報が高い価値を持っている現代において、強く求められるマーケティング手法です。長年、勘や経験に頼ったマーケティングを実施してきた企業にとっては、切り替えが難しいかもしれません。しかし、データは「21世紀の石油」とも呼ばれる大切な資産です。
データドリブンマーケティングを実践する際の注意点はいくつかありますが、もっとも大事なことは、データの重要性をメンバー間で共有することです。データに基づいたPDCAサイクルを可能な限り早く、そして多く回すことを意識してください。