リテールメディアとは?

リテールメディアとは?
日本国内・世界の市場規模から読み解く今後の拡大予測と注目の背景

リテールメディアとは、小売企業が保有する顧客データを活用した広告配信の仕組みを指すものです。

従来の広告配信とは異なり、実際の購買行動から獲得した顧客データをマーケティングに応用するため、確度の高いプロモーションやターゲティングがなされます。また、リテールメディアの特性は、広告主はもちろんのこと、広告媒体を提供する小売企業、ひいては消費者にも波及することから、現在注目を集めている手法です。

本記事では、そんな「三方よし」のリテールメディアについてわかりやすく解説。新たなビジネスモデルとしてこれから浸透・定着が予想されるリテールメディアのメリットや、その背景にある時勢の流れを考察します。

リテールメディアとは

リテールメディアとは、小売(リテール)企業が保有する、より消費者の生活に則った顧客データ(ファーストパーティデータ)を活用して、広告を配信する仕組みのことです。

リテールメディアとは

リテールメディアの最大ともいえるポイントは、小売企業が独自に蓄積したファーストパーティデータ(第三者を介さないデータ)を活用し、ターゲティングを高精度化することにあります。具体的な施策には、小売企業が保有する消費者の購買行動データを反映した、広告配信やクーポンの配布などが挙げられます。

小売企業側は店舗での購買行動をより促進でき、メーカー(広告主)側は消費者ニーズに合致した商品の広告配信を介して収益を上げられる、小売企業側とメーカー側、双方にメリットの大きい仕組みです。

リテールメディアが注目される理由

リテールメディアが注目されている理由は、サードパーティクッキーの規制やメディアのあり方の変化など、データの取り扱いやテクノロジーの進化に伴う、昨今の潮流が密接に関係しています。

  • プライバシー保護の強化
  • テクノロジーの進化
  • デジタル媒体による顧客との接触頻度の拡大
  • 米国の小売業界では既に大きな領域になっている

これらの項目を総括するなら、やはり大きな要因といえるのは「時代背景」です。インターネットの進化、およびそれに付随する諸問題や、技術革新に伴う購買行動の変化などに対応する手段として、リテールメディアは時代に要請されています。

プライバシー保護の強化

2023年5月、Googleはプライバシー保護の観点から、ユーザーの行動や興味関心などの個人情報を第三者が追跡する技術「サードパーティクッキー」の廃止を表明し、大きな話題になりました。

また、米国の「CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)」や、欧州圏における「GDPR(一般データ保護規則データ保護規制)」など、各方面においても個人情報を保護する動きは強化へ向かっています。

これにより、これまでサードパーティクッキーをWeb広告のターゲティングに活用してきた企業の広告配信の精度が危ぶまれる事態となったのです。

そこでサードパーティクッキーに代わり、存在感を増したのがファーストパーティデータです。小売企業各社が保有するファーストパーティデータを活用するリテールメディアが注目されるようになるのは自明の理ともいえます。

テクノロジーの進化

IoT技術の進化に伴い、仕入れから販売に関わる一連の業務の仕組み化を果たす「リテールDX」が推進されたことも、リテールメディアが注目される要因です。

リテールDXは、オンライン・オフラインのデータ統合・利活用を推進し、AIによる店舗来店予測などを可能としました。これにより、店舗独自の顧客データの獲得および蓄積が加速。リテールメディア導入にむけた土壌が整ったことにより、ますます注目度が高まる循環を生んでいます。

デジタル媒体による顧客との接触頻度の拡大

顧客が情報を収集する媒体といえば、紙媒体やテレビCMなどが主流。しかしインターネット技術の発展に伴い、そうした時代は終焉へと向かいました。

情報収集の主役は、すでにオフラインからWebメディアやアプリなどのオンラインに移行しています。スマートフォンの普及もそれを後押しし、消費者がデジタル媒体に接触する頻度は向上する一方です。

このような変革を受け、マーケティング活動もオンライン化が進んでいます。そしてマーケティング施策の起点となるのは、小売企業に蓄積されている購買データである点は、これまでに述べてきた通りです。メーカーと小売企業の双方にメリットを還元する、リテールメディアが脚光を浴びるのは必然でしょう。

米国の小売業界では既に大きな領域になっている

海外に目を向けて見ると、アメリカではすでにリテールメディアは急成長しており、検索広告とSNS広告に次ぐ3番目となる6兆円規模にまで市場が拡大しています。

この勢いは留まることなく、2024年には市場規模8.2兆円にまで到達し、アメリカの全デジタル広告費の19%を占めるまでに成長すると予測されているのです。

さらにアメリカでは、AmazonやWalmartなどの大手をはじめとする多種多様な業態の小売企業がリテールメディア市場に参入。小売を本業とするWalmartでは、前年比が40%弱のハイペースでリテールメディアが成長しています。

リテールメディアのメリット

リテールメディアは小売企業、広告主、消費者の3方にとってメリットのある仕組みです。それぞれのメリットを具体的にまとめました。

小売企業
  • 活用しきれていなかったオフラインデータを応用し、販路拡大・売上の向上が見込める
  • 商品の売り上げ以外の収入源を確保できる
広告主
  • 小売企業が持つ顧客データを活用し、ターゲティング精度が向上する
  • 効果検証の精度が見直され、より確度の高い施策を打てる
消費者
  • 興味・関心の高い広告のみが表示され、購買までの不快な体験が減る
  • 興味・関心に沿った広告が最適なタイミングで表示され、購買体験の満足度が高まる

小売企業では、使われていなかったデータ資産を有効活用できるうえに、広告収入も得られます。広告主においては、新たな視点のデータの活用によって、マーケティングの精度が向上し、売上アップにもつながります。

さらに消費者にとってもメリットが大きく、ニーズに沿った商品の広告が表示されやすくなるため、購買体験から不快感が排除され満足度が向上します。

リテールメディアの市場規模

株式会社CARTA HOLDINGSと株式会社デジタルインファクトの共同調査によると、国内のリテールメディアの広告市場規模は2023年には245億円、2024年には410億円と右肩上がりの成長曲線を描くと予測されています。

この背景には、リテールメディア事業の中長期的な収益確立を経営計画に組み込んだ大手小売企業によるサービス開発の推進や、広告プラットフォームによるリテールメディア事業の支援があります。

この動きは年々の加速が予想されており、2026年には805億円規模の市場に達すると推測されています。

参考:リテールメディア広告市場に関する調査

今後リテールメディアは拡大するのか?

先に紹介した調査報告やアメリカの動向からもわかるとおり、リテールメディアは今後、世界規模での急拡大が予測されます。

国内においては、地域に根ざしている小売企業が多いこと、そして多くの店舗では商圏もそれほど広くないことから、本業である物販のみで売上を伸ばしていくには限界があります。

しかし、リテールメディアへの参入は、広告収入の獲得など、収益の間口を広げます。売上停滞を打破する起爆剤としても機能するでしょう。国内でもリテールメディアに挑戦する企業は増えていくと予測されます。

その一方、顧客に「最適な情報」を「最適なタイミング」で提供できてこそ、リテールメディアのメリットは還元されます。つまりデータ分析のフェーズは、リテールメディアの運用において必要不可欠です。

しかし多くの小売企業において、顧客データの活用および広告事業への参入は未知の領域です。「何から、どうやって着手すれば良いのかわからない」の課題を解決するところからのスタートになります。

小売店がリテールメディアに参入するために、不足する知見や経験値をどのようにカバーするべきか。この意思決定や戦略構築が問われるのかもしれません。

東芝テックのリテールメディアプラットフォーム構想

東芝テックのリテールメディアプラットフォーム構想

リテールメディアの活用は、小売店の販路拡大や売上向上を促すほか、広告収入など物販以外の事業創出にもつながる施策です。中小企業や地域に根差した小売店においても、より大きな市場で勝負できるチャンスが巡ってくるでしょう。

東芝テックでは、「リテールメディアプラットフォーム構想」を推進し、小売店の挑戦を強力にバックアップいたします。

リテールメディア構想とは、メーカー・小売企業・消費者の「三方よし」を目指し、東芝テックが展開する「クーポンデリ」「スマートレシート」などのソリューションと、メーカーや小売企業が運用するオウンドメディアやSNSなどを統合。管理運営から広告・販促配信までをワンストップで牽引するプラットフォームです。

メーカーや小売店におけるリテールメディアプラットフォームの利活用は、販促活動や効果検証の高機能化を促し、マーケティングの高精度化を強力に推進します。

【リテールメディアプラットフォームの活用例】

  • レコメンド機能のリアルタイム化:
    消費者がスマホレジでスキャンした商品情報から「買い物カゴの中身」を把握。事前に獲得した顧客データと組み合わせ、高い購入確度が見込める商品をリアルタイムでレコメンドする。
  • セグメントのパーソナライズ機能:
    顧客の過去の購入データや検索履歴データ、さらにタイミングといった「リアル」に紐づいた情報などから新たなセグメントを抽出。年代や性別など、旧来のセグメンテーションでは到達できない精度で広告枠を特定・発信する。
  • 効果検証の高機能化:
    実店舗での回遊データや、店舗来店前後の行動など、これまでにないデータの利活用を実現。新しい視点からの顧客理解を促進し、商品開発やマーケティングに応用する。

リテールメディア構想の詳細内容は、下記の資料からも閲覧いただけます。

リテールメディアプラットフォーム構想|お役立ち資料はこちらから

まとめ

従来の広告においても、消費者ニーズの予測に紐づいた広告配信は可能でしたが、あくまで予測の域に過ぎません。広告に対して不快感を覚える消費者もおり、購買促進どころか商品・企業に対するネガティブキャンペーンとして逆作用してしまう危険性も孕んでいたことは事実です。

一方、リテールメディアは、実際の購買行動から獲得したデータを活用してセグメンテーションを実行するため、消費者のリアルなニーズに則った広告配信が可能です。広告主をはじめ、小売企業、消費者の3方よしが実現します。

今後の急成長が確実視されるリテールメディアのポテンシャルについて、リテールメディアプラットフォーム構想と合わせてご検討ください。

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