EPCIS(Electronic Product Code Information Services)実証実験 導入事例
国際標準識別コードGS1EPCで物流業務の効率化を実証
物流データプラットフォームの実現に向けた第一歩に
味の素株式会社
味の素グループは、「Eat Well, Live Well.」をコーポレートスローガンに、アミノサイエンスで人、社会、地球のWell Beingに貢献し、さらなる成長を続けています。1909年に世界初のうま味調味料「味の素(R)」を製品化して以降、調味料を中心としたさまざまな食品、健康にかかわる商品を数多く生み出してきました。味の素グループは現在、130以上にのぼる国・地域で販売、世界中の人々に愛され食されています。
※2025年7月時点
EPCIS(Electronic Product Code Information Services)
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PoC1
2024年1月
SSCC*1を中心としたGS1*2識別を用いた実運用 -
PoC2
2024年7月
各種サービスの連携によるCO₂排出量Scope3の算定と、それらを用いた実運用の実現性検証 -
PoC3
2025年11月(予定)
荷受けにかかる作業時間の削減検証
→納品伝票データを物流プラットフォームに連携 -
*1 SSCC(Serial Shipping Container Code):GS1が定める国際標準の識別コードで出荷用の梱包単位(パレットやケースなど)を一意に識別するためのコードです。物流業務の効率化やトレーサビリティの向上に活用されています。
*2 GS1(Global Standards One):商品や物流単位を一意に識別するための国際標準のコード体系を開発・維持する非営利の国際組織のことで、バーコードやRFIDなどの技術を通じて、製品の識別・追跡・情報共有を可能にする標準を提供します。特に医薬品や食品業界では、誤使用防止やトレーサビリティの確保に重要な役割を果たします。
EPC (Electronic Product Code)とは、GS1識別コードをRFIDで利用するための形式(フォーマット)であり、GTIN等のGS1が定める標準識別コードがベースとなっています。GTIN(Global Trade Item Number)などのGS1識別コードをベースとし、既存のバーコードシステムとの整合性を保ちながら、RFIDシステムの構築が可能となっています。EPCISはこれらの識別コードを活用し、サプライチェーン上の物流イベント情報を記録・共有・可視化するための仕組みです。
GS1EPC・EPCISを導入し、
サプライチェーン全体で物流情報の共有と見える化を
現在、物流業界はさまざまな問題を抱えています。人材不足と高齢化、『2024年問題』といわれた働き方改革、物流コストの上昇、そしてデジタル化の遅れとDX対応などです。これらの要因が重なり、2030年には国内の輸送能力が34%不足すると言われています。「味の素グループも例外ではありません。物流課題に加え人手不足という問題を抱えており、従来のやり方では対応できない時代がすぐそこに来ていると考え、今まさに改革が必要であると切迫しています。」そう語るのは、味の素株式会社 食品事業本部 東京支社 武田 建 家庭用第1グループ長です。
今回の取組みであるPoC1では、商品の出荷時に貼るラベルを荷受け・検品時に別のラベルに貼り替える必要があるという、出荷・荷受け・検品に関する課題を取り上げました。現在では多くの企業が物流効率やモノの動きの見える化に向けてラベルを使用した取組みを行っていますが、そのほとんどがプライベートコードとなっているため、ラベルの貼り替えが必須であるという問題を引き起こしています。さらにモノの動きはサプライチェーン全体を通しての見える化ができていません。「この問題を解決するために今回着目したのが、グローバルで共通に使えるコード、GS1の識別コードであるGS1EPCです。」(武田グループ長)
武田 建 家庭用第1グループ長
スタッフグループ 斎藤 隆志マネージャー
GS1EPCは、GS1が定める国際標準の識別コードです。主にRFIDを用いて商品あるいは物流単位、梱包単位を一意に識別するためのコードで、今回は『味の素』が物流委託をしている『F-LINE』の福岡物流センターから、得意先の『やまや』までの配送に対してGS1EPCを使用し、物流イベントの見える化にチャレンジしました。「結果的には、SSCCを中心としたEPCISの運用によって物流情報の可視化とトレースが実証できました。当初は、F-LINEでのデータ取得が問題なくできるか、SSCCとのデータ連携がうまくいくか不安がありました。PoC1では支障なく読取ができ、その後の連携もスムーズに進めることができています。」(味の素株式会社 食品事業本部 物流企画部 スタッフグループ 斎藤 隆志マネージャー)
▲味の素からF-LINEに積み込まれたアミノ酸調味料にGS1EPCラベルを貼付、やまやに配送されそのまま倉庫へ納入。
辛子明太子のうま味を引き出す調味料として使われます。
実証実験で得た知見を生かし、
物流データプラットフォームであらゆるデータを標準化、改善の糸口に
PoC1で実証された共有ラベルを継続して活用しつつ、PoC2では調達物流におけるCO2排出量算定の検証を行いました。ここでは東芝テックEPCISのパレット・荷積・荷卸データを、各社が提供するサービスと連携、統合管理することで、CO2排出量の可視化に向けた課題を洗い出し解決方法を検討しました。
PoC1では、GS1EPCを用いた共有ラベルを活用した結果、出荷・荷受け・検品にかかる作業および作業にかかる時間が軽減されたことが実証されました。PoC3ではこれらに加え、ドライバーの受領待ち時間がどの程度削減されたかを具体的な数値で実証する計画です。2024年1月から始まった3回にわたる実証実験をもって、実装を進め物流のデータプラットフォームを立ち上げるのが最終的な構想となっています。
「当初は加工食品業界を中心に利活用を進めていきますが、順次サプライチェーン全体に展開していくことも視野に入れています。最終的には各業界で物流データが活用され、日本全体の物流が効率化されている、そんな姿になっていたらいいと思っています。」そう話す、味の素株式会社 食品事業本部 物流企画部 長濱 賢治スタッフグループ長がさらに続けます。「サプライチェーン全体に広げていくためには、オープンで国内外の業界標準に準拠した仕様でつながるクラウドサービスとし、機密を保持しルールに即したデータ連携を実現したいと考えています。また新たな課題にも柔軟に対応できるよう進めていきたい、そんなふうにも考えています。」
長濱 賢治スタッフグループ長
物流全体の効率化と持続可能な業界を目指すため、2025年4月、物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)が施行されました。物流業界が抱える課題を、業界全体で協力体制の強化と情報共有の促進を後押しするものです。対象は物流事業者のみならず荷主にも、荷待ち時間等の短縮や積載効率向上等の措置に取り組むことが求められています。EPCISは、物流業界を守りさらなる発展を遂げるために必要なシステムであることが、今回の実験で実証されました。広く周知することで、サプライチェーン全体での活用が期待されます。
今後の展望と東芝テックへ期待すること
ECPISが、いろいろな業界、あるいは業界の垣根を超えて、あらゆる課題解決のきっかけになるのではないかと語る長濱スタッフグループ長に、今後の展望と東芝テックへの期待を伺いました。
「今回の実証実験では、EPCISの運営やGS1コードの読み取り端末などデータ収集のシステムについて、東芝テックさんに多大なるご協力をいただきました。このような知見を踏まえ、今後はさらに発展していただき、あらゆる業界間でのEPCISの利活用を進めて、さらなる物流データの見える化に邁進していただくとともに、ワールドワイドの製品、原材料トレースにも活用できるよう進めていただくことを期待しています。」(長濱スタッフグループ長)
導入事例インタビュー動画
サプライチェーンにおける物流課題と、ECPISによる実証実験効果を
味の素株式会社 武田 建様、斎藤 隆志様、長濱 賢治様にお話を伺いました。
※当記事は2025年7月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

