東芝テックCVCは、スタートアップのさらなる成長や産業の進化に貢献すべく、
さまざまな活動を通して事業会社との連携強化にも取り組んでいます。
その活動の一つが、コマース領域特化型ベンチャーキャピタルのNew Commerce Ventures株式会社と
定期的に共同開催している『New Commerce Pitch』です。
『New Commerce Pitch』は招待制ピッチイベントで、
ピッチ登壇のほかにブース出展も含めて毎回20社程度のスタートアップと、小売・流通関連の事業会社が参加。
ピッチ発表後の交流会やアンケートを通して、相互に興味・関心のあるスタートアップと事業会社をつなぐだけでなく、
事業会社同士の新たな交流も数多く生まれています。
小売・流通という共通領域においてスタートアップエコシステムへの共通課題・認識を持つ両社が、
どのような思いで共催イベントを開催することになったのか、
その目的や活動を通して得られた効果・気づきについて、
New Commerce Ventures代表の松山馨太氏と東芝テックCVC推進室の石井達也にインタビューを行ないました。
はじめに、東芝テックが共催イベントを開催することになった背景を教えてください。
石井
まず、スタートアップと事業会社をおつなぎする場所、機会をつくることで双方の成長を支援したいというイベントのコンセプトに共感しました。さらに言うと、小売・流通領域ではスタートアップと事業会社1社の共創によるシナジーは一定数生まれますが、ユーザーや世の中に大きなインパクトを与えるようなイノベーションに発展させるのは難しいという課題があると感じています。その壁を乗り越えるためには、スタートアップと事業会社が1対1の関係ではなく、事業会社同士の連携も含めてN対Nの関係で変革に取り組むことで、より変革を加速できると思っています。
たとえ既存事業で競合関係にある事業会社でも、新規領域においては一緒に新しい価値創出にチャレンジできるはずです。そのような新しい連携をブーストさせる機能として、New Commerce Pitchが大きな役割を果たすのではないかと考えました。
松山氏
New Commerce Venturesは、人々の生活を支える小売・流通領域に特化して、スタートアップの成長やスタートアップと事業会社の共創を支援し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しているVCです。
立ち上げた背景には、スタートアップに対して幅広く成長に役立つような事業会社を紹介していきたいという思いがあり、そのミッションを体現する活動の一つとしてNew Commerce Pitchをスタートさせました。そして、石井さんと会話する中で事業会社同士をつなぐ場としても有効活用できることをご提案いただいたことや、実際に事業会社の方々から横のつながりを増やしたいという声を多数いただいたことから、スタートアップと事業会社だけでなく、事業会社同士のマッチングも目的の一つとして考えるようになりました。
イベントの規模感はどのぐらいですか?
松山氏
最初は50名弱の参加者で始まったイベントですが、イベントを続けていくうちにご参加いただける方が増えていき、現在は最大で140名以上、参加企業数もトータルで約100社に広がっています。事業会社の業種はスーパーからコンビニ、百貨店、家電量販店といった小売事業者、アパレルなどのブランド、化粧品などの消費材メーカー、物流企業、EC領域の企業まで幅広く、多様な企業の方にご参加いただいています。
石井
最近は不動産デベロッパーや商業施設、デジタル領域の事業会社の方も増えている印象があります。主に経営層や新規事業、CVC、DX推進といった部門に所属している方がボリュームゾーンですが、自社の事業部の方を連れてきてくださるような動きが起きているのも非常に面白いと思っています。
参加者はどのように増えているのでしょうか?
松山氏
このイベントの特徴の一つでもあるのですが、基本的には招待制となっていますので、私たち主催者や共同代表の大久保、石井さんなどから直接事業会社の方にお声がけしてご参加いただくケースが多いです。やはり一番の目的はスタートアップや事業会社に良い関係を築いていただくことなので、営業や勧誘目的ではなく、純粋にスタートアップ連携に興味・関心を持ってくださっている方や、前向きに活動されている企業の皆さまにこの場をご活用いただきたいという思いがあります。
実際にイベントではどのようなマッチングが生まれているのでしょうか?
松山氏
数字で言うと、トータルで400件以上のマッチングが生まれています。これはあくまでもアンケートを通じて私たちが後日つなぐお手伝いをした件数なので、当日の交流会で直接生まれているものも含めるとさらに多数のマッチングが実現していると思います。内容としては、スタートアップのソリューションを事業会社が導入して新規サービスを立ち上げるケースや、事業会社が運営しているアプリマーケットの中でスタートアップのプロダクトを販売するケース、次の資金調達ラウンドで事業会社が投資したケースなど、さまざまな形での連携が起きています。
石井
当初の狙いどおり、事業会社同士のコミュニケーションも懇親会を通して生まれています。すぐに協業や具体的なプロジェクトの話にはならずとも、お互いのナレッジシェアや相談、新たなイベントの企画など、オープンな交流が活発になっています。それこそ、競合にあたる企業様同士で業界の課題感を話し合う場面もあり、そこに第三者として我々がさりげなく入り込み、「それなら2社でこんな取り組みをしたら面白いじゃないですか」、「その領域にすごく詳しい人がいるので、おつなぎしますよ」と勝手に話を盛り上げることもあります(笑)。コミュニケーションの質を高めることが将来的なオープンイノベーションのきっかけにつながると思うので、交流会のサポートにはかなり力を入れているつもりです。
なるほど、スタートアップや事業会社のコミュニケーション活性化に向けて意識していることはありますか?
石井
事前に一社一社のことを詳しく知ることが難しいため、日頃から小売・流通領域のトレンドや各カテゴリの動きにアンテナを張り、情報をインプットするようにしています。些細なきっかけではあるのですが、相手が取り組んでいる領域に対して「今こういう動きが注目されているって聞いたんですけど、実際はどうですか?」とお聞きするだけでも、より深い会話に発展したり、想定していない課題のマッチングにつながったりするケースがあります。
松山氏
分かります。スタートアップと事業会社のマッチングをきっかけに、この業界を一緒に盛り上げていくことがイベントの目的なので、参加者の皆さんの興味・関心や課題感を把握し、適切な人との出会いを提供することが重要ですよね。
定期的にイベントを開催することで、見えてきた変化や気づきはありますか?
石井
そもそも小売・流通領域特化型のピッチイベントは珍しく、“点”としても価値があると思っています。さらに、継続的に取り組むことで徐々にこの場を有効活用していただくスタートアップや事業会社がこの場を有効活用し始め、新たな共催という形でご支援いただく企業もいらっしゃるなど、“点”が“線”になっていく中で「この業界を一緒に盛り上げたい」という共感が広がっている実感があります。それから、毎回参加してくださる方も一定数いるので、「ここに行けば、この人たちと話せる」というように、定期的なコミュニケーションを取り合う場として機能しているのも嬉しいですね。
これからNew Commerce Pitchはどうなっていくのか、今後の展望を教えてください。
松山氏
スタートアップや事業会社の皆さまにフル活用していただき、「ここに行けば良いスタートアップや事業会社に出会える」など価値のあるイベントにしていきたいと考えています。参加者からのリクエストやフィードバックを反映し、さらに良いイベントにブラッシュアップしていきますので、ぜひ皆さまと一緒にこの業界を盛り上げていけると嬉しいです。
石井
そうですね。先ほども申し上げたとおり、1社、2社ではなく、仲間を増やしながら共にチャレンジしていくことが、小売・流通領域の変革には欠かせないと思っています。このイベントが大きなイノベーションを生むきっかけの一助となれるよう、これからも一生懸命取り組んでいきたいです。
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