ポイントサービスからロイヤリティマーケティングへの流れを振り返る

2024年11月8日

お店づくりトピックス

■業種・業態:小売業  
■キーワード:ポイントシステム/ポイントカードシステム/マイレージサービス

ポイントサービスのイメージ画像

ポイントサービスは、さまざまな業界に広がり、第二の通貨とまで言われるようになりました。一時は、ポイント引当金が財務会計に与える影響が懸念されるとの声が上がっていましたが、今ではそうした声も聞かれなくなり、通貨と同じように消費やサービスの購入で使われています。今回は、このポイントサービスの歴史を振り返りつつ、ロイヤリティマーケティングへの流れを説明します。

ポイントサービスの始まり

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ポイントサービスとは、お店が顧客に対し、商品・サービスの利用の程度に応じてポイントを発行し、顧客が蓄積したポイント数に応じて、景品やクーポンと交換あるいはキャッシュバックする顧客サービスの仕組みです。

一般的にお店は、商品やサービスの購入額に対して数%分のポイントを付与し、顧客は、商品等の購入を通じて蓄積したポイントを、例えば1ポイント=1円で発行店舗での再購入時に利用することができます。

蓄積したポイントの利用範囲は、これまでは発行元企業に限定されていましたが、他企業への移行・交換や電子マネーへの交換もできるようになってきています。

また最近では、流通サービス業だけでなく地方自治体など様々な分野に広がってきており、複数の企業が共通のポイントサービスを相互利用し、集客効果を高めようとする取り組みも広がっています。

このポイントサービスの原型は、スタンプカードです。

米国のある小売業者が、大量に抱えた洗濯石鹸の在庫をさばくため、洗濯石鹸の包装紙にスタンプ券を貼り付け、これを集めると絵画と交換できるサービスをはじめたのがはじまりと言われています。

日本では、1910(明治43)年に福岡の呉服店がスタンプサービスを始めたのが最初といわれ、欧米のように広くスタンプカードが普及したのは戦後1950年代に入ってからです。

最初に各地の商店街で発行されはじめ、その後、全国を網羅するスタンプ発行会社が登場しました。

その代表的な発行会社が、1962(昭和37)年に登場したスタンプサービスBです。続いて、1963年(昭和38年)には、スタンプサービスのCが発足しています。

ポイントカードシステムの登場

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ポイントサービスをシステム化したのがポイントカードシステムです。
従来、台紙にシールやスタンプを押印してポイントを貯め、一定額に達した時点で商品やサービス券と交換する方法をとってきました。

今でもシステム化せずにこのような方法でポイントサービスを実施しているお店もあります。

ポイントカードシステムは、台紙や紙の会員券に代えて、磁気カードを発行しポイントサーバーによって会員の氏名、住所、生年月日、メールアドレスなどの基本属性データと、購買日、購入金額といった購買履歴データを蓄積管理することが出来ます。

このようにシステム化することで、ポイント会員の意向で必要なときに必要な分だけキャッシュバックサービスを受けられるなど、紙カードでは出来ない蓄積ポイントの還元方法が利用可能になり、お客様にとってより魅力的なサービスを提供できるようになります。

ポイントカードを発行するお店や企業にとっては、取得した顧客情報を基にしたエリア戦略や品揃えに役立てることが出来ますし、会員の来店頻度や購入額に応じてメールやDMを使い、よりワンツーワン的な販売促進策を打つことだが出来るといったメリットがあります。

また、ポイントカードはリライト型のPETカードやキャッシュカードのようなプラスチックカードが主流でしたが、最近はスマートフォンを使ったポイントシステムが広まっています。

ポイントシステムの狙い

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ポイントシステム導入の狙いは、第一義的には会員顧客の再来頻度と再購入率、購入金額のアップにあります。

そのために多くお店が、高いポイント還元率で他店に負けないように魅力アップを図っています。

会員顧客にとって魅力的なサービスになるほど、他店からの新規顧客の獲得を期待できますし、逆に他店へのスイッチ、流出を防止することが出来ます。

しかし、昨今、業種を問わずポイントシステムを導入するお店や会社が増え、財布の中はポイントカードで一杯という声も多く上がっていて、中にはポイントカード専用の財布を別に持つといった方もいるくらいです。

こうした財布の中でポイントカードが生き残っていくには、より魅力的なサービスが求められます。

ポイント還元率ばかりを焦点にすると、値引き競争と同じ事態になってしまいますので、ポイントサービスの内容の前に品揃えや接客等のサービスといった基本が何より大切になります。

また、ポイントシステムを導入すると、簡単に中止することは出来ません。
少なからずシステムの導入、運用の費用もかかりますから、ポイントシステム導入には、しっかりとした戦略と体制作りが必要となります。

日本でポイントサービスが本格的に普及するきっかけを作ったのが、1989年に家電量販店のY社が導入したポイントシステムです。

スタンプサービスは、購買時に発行されるシールを台紙に貼り貯めいっぱいになったところで、商品やサービスと交換する仕組みでしたが、Y社のポイントシステムでは、購入し発行されたポイントをその日から使うポイント数を指定して利用できるという画期的なものでした。

また、どこの店で付与されたものかと無関係に、ほぼリアルタイムに管理され、いつでもどの店でも使えるという点も、以前のスタンプサービスにはないサービスでした。

このポイントカードを開始したことをきっかけに、日本では様々なポイントカードが発行され、日本の消費経済に定着しています。

マイレージサービスのインパクト

マイレージサービスのイメージ画像

そして1993年、ポイントシステムに新たな展開が始まります。それが、アメリカからやってきたマイレージサービスです。

航空便で移動した距離に応じてマイルを付与し、マイルというポイントの年間取得数によって顧客を識別し優先搭乗やランクアップ、ラウンジの無料サービスなどを行い他社へのスイッチを防止し、上位の優良顧客を囲い込むのです。

これがFFP(Frequent Flyers Program:フリークエント・フライヤーズ・プログラム)です。

最初に始めたのは、アメリカンエアラインズのアドバンテージプログラムでした。

驚いたことにそのデータを分析したところ、企業収益の60%以上がわずか数%の上位顧客によってもたらされたことがはっきりしました。

そこで、収益を支えてくれる上位顧客を優遇して囲い込み、離反を防ごうというロイヤリティーマーケティングの考え方が広まったのです。

その後、アメリカンエアラインズだけでなく航空各社が同様のサービスを開始し、日本には1993年に導入が始まりました。

そしてさらにアメリカでは、この航空会社のFFPの考え方を小売業に当てはめたプログラムが登場し、コンピューターのダウンサイジングもあって、スーパマーケットで導入が始まり業界に革命をもたらしました。

それがFSP(Frequent Shoppers Program:フリークエント・ショッパーズ・プログラム)です。

今回は、スタンプカードからFSPの登場までの歴史を振り返りました。
次回は、FSPそのものについて紹介させて頂きます。

(文)販売革新 編集部
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

※当記事は2024年9月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。