RFタグの価格ガイド:RFID導入時に知っておくべきコスト
2025年11月27日
コラム
■業種・業態:製造業/物流業・倉庫業
■キーワード:RFID/タグ/コスト/導入
この記事のポイント
RFタグの価格は種類や用途によって大きく異なります。本記事では、製造業や物流業でRFID導入を検討する担当者向けに、RFタグの価格目安と導入コストの全体像を解説します。タグ単価だけでなく、運用コストも含めた総合的な視点で、自社に最適なRFID導入を実現しましょう。
※本記事の価格は一般的な市場相場(参考小売価格)であり、実際の価格はメーカーや仕様、発注数量により異なります
製造業や物流業の現場では、在庫管理や生産管理の効率化を目的としたRFID導入が進んでいます。導入検討時に最も気になるのが「RFタグの価格」ですが、タグ単価だけでなく、リーダーやシステム構築費用、運用コストまで含めた総額を把握することが重要です。本記事では、RFタグの価格目安から導入コスト全体、価格変動要因まで、導入検討に必要な情報を整理します。
RFタグとは?価格低下の背景と導入状況
RFタグの基本構造と仕組み
RFタグとは、小型ICチップとアンテナを一体化した電子タグで、電波を使ってデータの読み書きを行うものです。バーコードと異なり、非接触で複数のタグを一括読み取りできるため、在庫確認や棚卸、部品管理などの業務を大幅に効率化できます。
RFIDの仕組みや基礎知識について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
導入効果の実例(アパレル・自動車・物流業界)
アパレル大手では、RFタグ導入により検品作業時間が従来比で70%削減され、年間数千時間の工数削減を実現しました。自動車部品を扱う企業では、月次棚卸の所要時間が3日から半日に短縮され、在庫精度も95%から99%以上に向上したケースがあります。物流業界では、入出庫管理の自動化により誤出荷率が大幅に低減し、顧客満足度向上とクレーム対応コストの削減につながっています。こうした効果により、初期投資を2〜3年で回収できた事例も報告されています。
近年の価格低下と普及拡大の動向
かつてRFタグは1枚数百円から数千円と高額でしたが、技術進歩と量産効果によりここ5年ほどで価格が大幅に低下しています。現在では汎用的なパッシブ型RFタグ(リーダーからの電波で動作する電池不要タイプ)で1枚十数円~程度が市場相場となっています。政府も「IoT等を活用したサプライチェーンのスマート化」施策を通じてRFID普及を推進しており、中小企業でも導入のハードルが下がってきています。
RFIDシステム導入に必要なコストの全体像
RFタグ以外に必要な機器・インフラ
RFID導入を検討する際、タグ単価だけに注目しがちですが、実際にはリーダーや周辺機器への投資も必要です。ハンディ型や据置型のRFIDリーダー・ライターは約15万円から30万円程度が相場で、倉庫や工場入口に設置するゲート型リーダーは50万円から数百万円程度が一般的です。また、読取データを管理するPCやサーバー、RFIDラベル印刷用プリンター、データベース連携開発などを含めると、パッケージソフト使用で数十万円から、フルカスタム開発の場合は数百万円規模以上の投資が必要とされています。
導入規模別の概算コスト例
小規模導入の場合、1,000枚のパッシブRFタグ(電池不要タイプ)とハンディリーダー1台、管理用PCソフトウェアで初期投資100万円程度から始められます。中規模の倉庫で入出庫管理を自動化する場合は数百万円規模、大規模な製造拠点で工程管理まで含めた全面導入では1,000万円を超える場合も珍しくありません。
初期導入と運用にかかる隠れコスト
見落としがちなのが導入初期の調整コストと運用段階でのランニングコストです。リーダーの設置・調整、運用ルール策定、スタッフ教育などに時間とコストがかかります。タグ印刷・貼付作業だけでも、1枚あたり5〜10秒を要するため、10万枚規模では作業時間だけで週140〜280時間、人件費換算で数十万円の負担となります。この工程が全体工数の数割を占めるケースもあります。
既存の在庫管理システムや倉庫管理システム(WMS)との連携開発も、API仕様の調整やデータフォーマット変換で想定以上の工数がかかる場合があります。特に事前検証が不十分だと、金属や液体の影響を受ける現場では読取エラー対応に想定外の工数がかかります。安価なタグを大量購入したものの金属棚での読取率が60%程度しかなく、金属対応タグへの買い替えで総コストが1.5倍になった例もあります。
運用段階では、RFタグの追加購入費用、リーダーのメンテナンス費用、システムの保守費用が継続的に発生するため、年間の使用枚数を想定した予算確保が重要です。
RFIDシステムの導入コストについてさらに詳しくはこちらの記事で解説しています。
RFタグの種類別価格目安
UHF帯パッシブタグ(物流・製造向け)
市場相場では1枚あたり十数円から30円程度です。10万枚以上の大量発注では10円台前半まで下がるケースもあります。物流や製造現場で最も広く使われるのがUHF帯パッシブタグで、通信距離が数メートルから10メートル程度と長く、一度に複数のタグを読み取れるため、在庫管理や入出庫検品に適しています。ただし、同じUHF帯タグでも耐熱仕様や防水仕様になると単価が1.5〜2倍程度上昇する傾向があります。
HF帯・NFCタグ(近距離通信向け)
市場相場では1枚あたり数百円前後です。HF帯タグやNFCタグは通信距離が短く、近距離での確実な読み取りが必要な用途に向いています。スマートフォンでの読み取りが可能なため、個品管理やアクセス認証などに利用されます。金属や液体の影響を受けにくいという特性があります。
金属対応タグ(製造・部品管理向け)
市場相場では1枚あたり100円程度からとなっています。金属対応タグは、金属製の工具管理、金属棚への直接貼付、金属製品の個体管理など、製造業の部品管理や設備管理で重宝されます。特殊なアンテナ設計により金属面での電波反射を防ぐ構造で、金属環境での読取精度を優先する場合に選択されます。なお、製造業の部品管理ではUHF帯パッシブタグが使用されるケースも多く、用途に応じた選定が重要です。
アクティブタグ(高価だが高性能)
市場相場では1枚あたり数百円から数千円と高額です。内蔵バッテリーで能動的に電波を発信するアクティブタグは、通信距離が数十メートル以上と非常に長く、温度センサーや加速度センサーを搭載できます。バッテリー交換も定期的に必要となるため、高額商品の管理や特殊な用途に限定して使用されるのが一般的です。
RFタグ価格を左右する主な要因
タグ仕様・機能(耐久性・セキュリティ・容量)
RFタグの価格は、搭載されるICチップの性能や機能によって大きく変動します。大容量メモリや暗号化機能、耐熱性・防水性を強化したタグは価格が上昇する傾向があります。用途に応じて必要な機能を見極めることがコスト最適化の鍵です。
周波数帯・通信距離・対応規格
周波数帯によっても価格は異なり、UHF帯タグは量産効果により価格が抑えられる傾向がありますが、HF帯やNFCタグはやや高価です。通信距離や対応する国際規格(EPC、ISO等)も価格に影響します。
発注数量と市場動向による価格変動
RFタグの価格は発注数量によって大きく変わります。少量発注では1枚数十円でも、数万枚以上の規模でまとめて発注すれば単価が下がる可能性があります。年間契約で数量を確約することで、より有利な条件で調達できるケースもあります。また、半導体チップや素材の市況、為替レート、需給バランスといった市場動向も価格に影響を与えます。
今後の価格トレンドと政府施策
経済産業省が推進する「IoT等を活用したサプライチェーンのスマート化」など、政府による普及促進策がRFID導入を後押ししています。半導体メーカーもタグ用チップの小型化と低コスト化を継続的に進めており、中長期的な価格低下が期待されています。
RFタグ選定のポイントとコスト最適化のコツ
使用環境と取り付け条件の確認
RFタグを選定する際、まず確認すべきは使用環境です。屋内か屋外か、高温・低温環境か、金属面への取り付けかといった条件によって必要なタグの仕様が変わります。使用環境に適さないタグを選ぶと読取エラーが頻発し、結果的にコスト増につながります。
必要な読み取り距離・メモリ容量の見極めと現場検証
読み取り距離とメモリ容量も、用途に応じて適切に選定することでコストを最適化できます。倉庫の入口で一括検品する用途であれば数メートルの読取距離が必要ですが、作業台での個品確認であれば数十センチで十分です。必要以上の性能を求めると価格が上昇するため、実際の運用に即した仕様選定が重要です。
現場検証では、実際の読取距離、同時読取可能枚数、誤読率の3点を必ず確認します。検証期間は最低でも2週間、できれば1ヶ月程度設けて、日々の業務フローの中での動作を確認することが推奨されます。検証時には、想定される最も厳しい条件(満載状態の棚、金属製の什器など)でのテストも行いましょう。
信頼性・品質と小ロット検証の重要性
価格だけで選ぶと品質にばらつきがあったり読み取り精度が不安定だったりするリスクがあります。信頼できるメーカーの製品を選び、納入前にサンプル評価を行うことが推奨されます。
初期フェーズでは小ロットで購入して現場検証を行い、最適な仕様を確定してから大量発注に移行することで、結果的にコストを抑えられます。本番稼働前に全体の10〜15%程度の予備タグを確保しておくことで、不良タグの発生や追加需要に柔軟に対応できます。
まとめ:RFタグ価格を正しく理解して導入を成功させる
コストと性能のバランスを取る視点
RFタグの価格は1枚十数円から数千円まで幅広く、種類や機能によって大きく異なります。RFID導入を成功させるには、タグ単価だけでなく、リーダーやシステム構築費用、運用コストまで含めた総額で判断することが重要です。
特に見落としがちなのが、タグの貼り付け作業や管理にかかる人件費です。安価なタグでも貼り付けに手間がかかると運用コストが膨らむため、帳票とRFタグを一体化させる手法が注目されています。
導入目的に合ったタグ選定の重要性
RFID導入の目的を明確にし、それに合ったタグを選定することが成功の鍵です。スモールスタートで効果を検証してから段階的に拡大することで、リスクを抑えながら投資対効果を最大化できます。RFタグ価格の正しい理解は、省人化と業務効率化を実現する第一歩です。RFID導入を成功させるには、価格情報を定期的にアップデートする姿勢も欠かせません。
東芝テックのRFIDソリューションとタグ価格について
用途別RFIDトータルソリューションの特徴
東芝テックは、製造業から物流業まで幅広い業種に対応したRFIDトータルソリューションを提供しています。RFタグの選定から、リーダー・ライターの設置、システム連携まで、一貫したサポート体制で導入を支援します。
特に注目すべきは、A3カラープリンターRFIDソリューションです。RFタグの価格を検討する際、タグ単価だけでなく貼り付け作業にかかる人件費も考慮する必要があります。このソリューションは、帳票印刷とRFタグ書き込みを同時に行うことで、ラベル貼り付けの手間を削減し、運用コスト全体を最適化できます。従来は別途必要だったタグの貼付作業が不要になるため、現場の作業負荷軽減にもつながります。
お問い合わせ
A3カラープリンターRFIDソリューション導入による棚卸作業の効率化や在庫管理精度の向上について、無料相談を受け付けております。現場環境のヒアリングから最適なシステム設計のご提案まで、一貫した支援体制をご用意しています。
お問い合わせフォームから導入相談やデモのリクエストを受け付けております。
※当記事は2025年11月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

