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セグメンテーションとは
企業マーケティングでの事例と「ターゲティング」との違い

マス広告を展開し商品やサービスの認知拡大を図ることが売上に直結する時代もありましたが、こうした手法は現代において必ずしも効率的なマーケティング施策とはなりません。趣味趣向のバリエーションが多様化する昨今のマーケティングにおいては、顧客への効率的なアプローチを講じるための「セグメンテーション」が重要視されています。

セグメンテーションの概要やポイント、企業マーケティングの具体的な成功事例などを紹介していきます。

セグメンテーションとは

セグメンテーション(segmentation)は「区分」を意味する言葉です。マーケティングでは、不特定多数の人をニーズや性質などの属性にて、「セグメント」と呼ばれる塊(かたまり)に細分化することをセグメンテーションといいます。こうした特性から、セグメンテーションは市場細分化とも呼ばれています。

セグメンテーションとターゲティングの違い

セグメンテーションと混同されやすい言葉にターゲティングがあります。ターゲティングは自社の商品やサービスを売り込むターゲットとなる顧客層を決定する行為です。

両者には下記のような明確な違いがあります。

  • セグメンテーション:顧客を性質などに応じて区分すること
  • ターゲティング:セグメンテーションによって細分化された顧客層からターゲットを決定すること

セグメンテーションの重要性

かつての大量生産・大量消費の時代では、大多数の人に向けて幅広くアプローチを行う「マスマーケティング」が、大量の顧客獲得に結びついていました。

しかし現在では、ライフスタイルの変化や商品バリエーションの充実、さらにインターネットやSNSの普及で消費者が知りたい情報に自らアプローチできるようになったことにより、消費者の価値観や消費行動は多様化しています。そのため、消費者に幅広くアプローチを図っても、多くの人から歓心を獲得するのは難しくなっています。

そこで重要性が高まっているのがセグメンテーションです。特定のニーズや属性を有する消費者に特化したマーケティングを講じることで、利益の最大化を効率よく図れるようになっています。

セグメンテーションの分類・切り口

市場や顧客を分類するセグメンテーションの切り口となる基準は、さまざまな変数から導き出されます。セグメンテーションの代表的な方法として、次の4つの変数について確認しましょう。

  • 人口動態変数
  • 心理的変数
  • 地理的変数
  • 行動変数

人口動態変数

人口動態変数は、消費者を年齢や性別、職業、学歴、家族構成、所得水準といった客観的な属性で分類するものです。消費者ニーズと結びつきやすく、データの入手も比較的容易なため、セグメンテーションでもっとも高頻度で活用される変数でもあります。

人口動態変数は、たとえば自動車や住宅、金融商品などで、所得水準ごとに商品のラインナップを設定するといった形で用いられています。また、人口動態変数をセグメンテーションの最初の大枠の分類に用いて、次に紹介する心理的変数などと併用してさらに細分化を図るアプローチも見られます。

心理的変数

心理的変数はさまざまな心理要素から分類を行うもので、パーソナリティやライフスタイル、価値観、社会階層といった切り口があります。

消費者ニーズが多様化した結果、人口動態変数によるセグメンテーションだけでは同一のセグメントでもまったく異なる消費行動を取るケースが見られるようになったことから、この心理的変数が重要視されるようになりました。たとえば、同じ30代の女性で所得水準も同一であっても、ディスカウント品の取り扱いが多いスーパーに通って節約に励む層もあれば、デパ地下での買い物を好む層もあります。

そこで、パーソナリティやライフスタイル、価値観といった切り口も加味してセグメンテーションを図り、同一のニーズを持つ顧客ごとに分類していきます。

地理的変数

地理的変数は、国や市区町村、地域、人口密度、都市の進展度、気候、宗教といった地理的な要素を切り口とするものです。食料品や衣料品、空調機器など、気候によって売上に地域差分が表れやすい商品のセグメンテーションに主に使われています。

なお、複数の変数を用いてセグメンテーションを行う場合には、通常、地理的変数は初めの段階で用いられます。

行動変数

行動変数は、商品やサービスに対する消費者の態度や知識、行動パターンなどから分類する切り口です。具体的な基準として、商品やサービスに関する期待値や利用するシーン、利用頻度、購入経路などが挙げられます。

インターネットの普及によって顧客の購入履歴などのデータを把握しやすくなるにつれて、行動変数が活用される機会も増えています。たとえば、新規顧客とリピーターでアプローチ方法を変えるといった手法にも、行動変数が考慮されています。

セグメンテーションをマーケティングに活用する企業の事例

セグメンテーションは、企業のマーケティング戦略において幅広く活用されています。施策の成功事例として、ユニクロとハーゲンダッツ、スターバックスの3社の例を見ていきまよう。

アパレルの事例:ユニクロ

ユニクロは年齢や性別といった人口動態変数ではなく、行動変数の活用によるセグメンテーションで成功した企業です。「トレンドを追うのではなく、飽きの来ないベーシックな服」「フォーマルではなく安価でカジュアルな普段着」という行動変数からセグメンテーションを実施し、「LifeWear」のコンセプトを掲げました。

結果、1998年に大ヒットしたフリースや2007年にキャンペーンを打ち出したヒートテックなどをはじめとする商品は、地域や性差などを問わず幅広い年齢層から支持され続けています。

食品の事例:ハーゲンダッツ

従来、アイスクリームは主に子どもに向けた商品でした。一方、ハーゲンダッツは年齢や性別、所得水準といった人口動態変数によるセグメンテーションを行い、「経済的に余裕のある大人」という顧客層に着目。大人向けの満足感のあるプレミアムアイスクリームの分野を確立し、競合他社との差別化に成功しました。

ハーゲンダッツは、現在はパッケージ商品のみを展開し、コンビニエンスストアやスーパーなどで購入できる高品質なアイスクリームとして定番になっています。

飲食店・カフェの事例:スターバックス

スターバックスは都市の規模などの地理的変数、さらに職種や所得水準などの人口動態変数のセグメンテーションにより成功した企業です。

スターバックスは顧客層を「大都市圏の高所得のオフィスワーカー」に絞り込み、スタイリッシュな空間で質の高いサービスを提供すべく、セルフスタイルで500円程度という高価格帯のドリンクを販売しました。フラペチーノや季節ごとの限定メニューなどを展開することで、コーヒーを飲まない顧客にもアプローチしています。

スターバックスはセグメンテーションによるブランディングの成功によって人気を集め、訴求力が拡大。若い世代からも支持されるようになりました。

セグメンテーションのポイント

セグメンテーションを効果的に行うためのポイントには、次の2点が挙げられます。

  • 細分化しすぎない
  • MAを活用する

細分化しすぎない

セグメンテーションを行うにあたっては、切り口の設定によって塊はどこまでも細分化できます。しかし、不必要に細分化していくことは避けるべきです。

セグメンテーションを検証するために、下記の項目の頭文字をとった「4R」という指標があります。

  • Rank(優先順位)
    セグメントした顧客層に、自社商品やサービスに有利な重要度の優劣があるか確認する
  • Realistic(規模の有効性)
    セグメントした顧客層の市場規模の大きさが、収益を見込めるものか見極める
  • Reach(到達可能性)
    セグメントした顧客層に、現実的に商品やサービスを届けることができるか検討する
  • Response(測定可能性)
    セグメントした顧客層からの反応を分析できるか確認する

この指標からセグメンテーションが正しく働いているかを検証し、過度な細分化を抑制していきます。

MAツールを活用する

MAとは「Marketing Automation(マーケティングオートメーション)」の略称で、MAツールはマーケティング業務を自動化するためのツールです。顧客情報の収集や一元管理、顧客層に応じたメール送信や資料送付といったアプローチによる見込み顧客の育成、マーケティング施策の分析など多彩な機能を有します。

たとえば、資料請求の問い合わせが来たときに見込み顧客リストに追加し、セグメンテーションに応じた資料の送付を行い、反応がなければ次回のキャンペーンの案内のメールを自動で送信するといった施策を展開できます。

まとめ

セグメンテーションを行うことで、自社の商品・サービスを主に提案していく市場を絞り込み、マーケティング施策を効率よく展開できるようになります。消費者のニーズが多様化している昨今では、経営資源を効果的に活用していくために、セグメンテーションの重要性はさらに高まっていくでしょう。

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