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ウォンツとニーズの違いとは?
それぞれの意味・マーケティングに生かして売上をアップさせる方法

顧客心理を表す「ウォンツ」「ニーズ」は、マーケティング戦略構築における核心的な要素です。顧客が求める本質を理解するためには、ウォンツとニーズの理解もセットとして付随します。

本記事では、ウォンツとニーズの違いに始まり、顧客心理を把握するポイントや、顧客のウォンツ・ニーズ解析に立脚したアプローチ手法などを解説します。

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ウォンツとニーズの違い

顧客心理を理解するにあたっては、「ウォンツ」「ニーズ」は混同することなく覚えておきたい用語です。

ウォンツは「手段」を表す心理であり、ニーズは「目的」を表す心理です。まずは両者の違いを明確にしておきましょう。

意味 具体的な例
ウォンツ 手段・欲求 高級マットレスと枕が欲しい
ニーズ 目的 質の高い睡眠ができる環境が欲しい

ウォンツとは

ウォンツとは、直訳すると「欲求」を意味しますが、マーケティングの場では「手段」の意味で用いられることがほとんどで、ウォンツはニーズを満たすための「手段」と解釈されています。

ウォンツの特徴に、顧客の顕在化した心理状態を表すことがあります。「○○が欲しい」といったように、望みが具体的に言語化されやすい状態です。

【ウォンツの例】

  • ミネラルウォーターを飲みたい
  • ハンバーグを食べたい
  • ジョギングシューズが欲しい

また、ウォンツは以下の3つに分類されることがあります。

  • 基本ウォンツ
  • 条件ウォンツ
  • 期待ウォンツ

基本ウォンツ

基本ウォンツとは、ニーズ(目的)を満たすために、商品やサービスを求めるウォンツです。「のどが渇いた」というニーズに対して「ミネラルウォーターを飲みたい」といったように、多くの場合で、最初に思い浮かぶウォンツといえるでしょう。

【具体例】

  • ミネラルウォーターを飲みたい
  • ジョギングシューズが欲しい

条件ウォンツ

条件ウォンツとは、基本ウォンツに条件が付加されたものです。

たとえば「ミネラルウォーターを飲みたい」という基本ウォンツは、条件ウォンツになると「冷たいミネラルウォーターを飲みたい」に変化します。求める手段がより鮮明になっている心理状態です。

【具体例】

  • 冷たいミネラルウォーターを飲みたい
  • 軽いジョギングシューズが欲しい

期待ウォンツ

期待ウォンツとは、満たされることが当然のものとして期待感が高まっているウォンツです。過去の経験などをベースに構成される「当然」を求めます。

たとえば、「水は変な味はしない」「新品の商品は汚れていない」といった、潜在的に浸透している「当然」をイメージしてみましょう。「満たされるのは当たり前である」を期待ウォンツは求めています。

【具体例】

  • 変な味がしないミネラルウォーターを飲みたい
  • 汚れていない新品のジョギングシューズが欲しい

ニーズとは

ニーズとは、直訳すると「必要」を意味しますが、マーケティングの場では主に「目的」の意味で用いられています。

ニーズは、そもそも「満たされていない」心理状態であるため、ニーズを満たすことは「顧客が必要としている状態」を満たすことと同義です。ウォンツを掘り下げていくことでニーズが見つかります。

【ニーズの具体例】

  • のどが渇いた
  • お腹が空いた
  • 痩せたい

また、ニーズは以下の2つに分類できます。

  • 顕在ニーズ
  • 潜在ニーズ

顕在ニーズ

顕在ニーズとは、消費者自身が気づいている・自覚しているニーズです。

たとえば「ミネラルウォーターを飲みたい」というウォンツの背景には「のどの渇きを潤したい」というニーズがあります。これは消費者が自覚できているケースがほとんどといえる顕在ニーズです。

顕在ニーズは、多くの場合で消費者自身による言語化が可能です。言語化の可否を基準とすると、顕在ニーズとして区別しやすくなるでしょう。

潜在ニーズ

一方、潜在ニーズとは消費者自身が気づいていないニーズです。顕在ニーズを掘り下げていくことで見つかります。

たとえば「ジョギングシューズが欲しい」というウォンツの背景には「痩せたい」という顕在ニーズがあります。それをさらに掘り下げていくと「モテたい」「海に行きたい」などの潜在ニーズが見つかります。

マーケティングでは、この潜在ニーズを突き詰めることが重要です。多くの企業やマーケターは、消費者の潜在ニーズをつかむために、アンケートや取材などあらゆる手法を駆使して心理調査を実施しています。

ニーズとシーズの違い

ニーズと混同されやすい言葉に「シーズ」があります。シーズとは「企業が持つ独自の技術やノウハウ」を意味し、ニーズと対比で着目されることが多いです。

意味 具体的な例
ニーズ 消費者の求めているもの VOC(消費者の声)に合わせて開発された商品など
シーズ 企業が持つ独自の技術・ノウハウ オリジナル商品や特許技術など

誰の視点から商品やサービスを開発するのか、その違いによってニーズとシーズは使い分けられます。

たとえば、オリジナルの特許技術など企業目線で商品を開発する「シーズ」に立脚したマーケティングでは、消費者のニーズにマッチしない可能性があります。しかし、志向に共感するコアなファンを獲得できたり、新たな価値を市場に投入できたりといった強みにもつながります。

ウォンツからニーズを把握する

ウォンツはあくまでも手段です。消費者が必要としている状態を満たすためには、ニーズに着目したマーケティング戦略が求められます。ウォンツからニーズを把握する流れについて、具体的な事例から紐解いていきます。

  • 「食洗機を購入したい」のウォンツに対するニーズ
  • 「旅行に行きたい」のウォンツに対するニーズ
  • 「ITツールを導入したい」のウォンツに対するニーズ

「食洗機を購入したい」のウォンツに対するニーズ

「食洗機を購入したい」というウォンツの背景には、どのようなニーズがあるのでしょうか。おそらく「皿洗いの手間を軽くしたい」といった目的がほとんどでしょう。

これはひとつのニーズであり、ほかのニーズをキャッチアップする基準にもなります。「皿洗いの手間を軽くしたい」というニーズから、さらにニーズを深掘りします。

  • 皿洗いの手間を軽くしたい
  • 家事に使う時間を節約したい
  • 育児に使える時間を増やしたい
  • 遊びに使える時間を増やしたい
  • ゆっくり休む時間を確保したい

このように、「皿洗いの手間を軽くしたい」のニーズからは、多様な潜在ニーズが予測されます。

「旅行に行きたい」のウォンツに対するニーズ

「旅行に行きたい」というウォンツの背景には、「気分転換したい」「新しい体験をしたい」などのニーズが考えられます。同様にさらにニーズを深掘りしてみましょう。

  • 気分転換したい
  • 新しい体験をしたい
  • 家族や友人との交流を深めたい
  • 映える写真でバズりたい

「家族や友人との交流を深めたい」といったように、旅行という「手段」の背景にはさまざまなニーズがあることがわかります。

「ITツールを導入したい」のウォンツに対するニーズ

「ITツールを導入したい」というウォンツの背景には、「業務効率化を図りたい」といったニーズがあるでしょう。これを突き詰めていくと、以下のように多様なニーズを想定できます。

  • 業務効率化を図りたい
  • 利益率の向上を図りたい
  • 人員を削減したい
  • 社屋を縮小したい
  • 対外向けにアピールできる設備を持っておきたい

ウォンツからニーズを把握するときのポイント

続いて、ウォンツからニーズを把握する際の具体的なポイントについて考察します。

  • 「なぜ?」を繰り返して考える
  • ニーズを調査・リサーチする

前者はニーズを「推測」、後者はニーズを「調査」のアプローチです。

「なぜ?」を繰り返して考える

ニーズの把握に効果的なプロセスは、以下のようにウォンツに対して「なぜ」を繰り返し問うことです。

ウォンツ ITツールを導入したい
ニーズ① なぜ? → 業務効率化を図りたい
ニーズ② なぜ? → 利益率の向上を図りたい
ニーズ③ なぜ? → 従業員の給料を上げたい
ニーズ④ なぜ? → 従業員に長く働いて欲しい

ニーズを調査・リサーチする

実際の調査やリサーチから、ニーズを理解する方法も効果的です。消費者自身が言語化できている顕在ニーズを効率的に収集できるでしょう。具体的な方法には、アンケートやモニター調査などが挙げられます。

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ただし、より定性的な側面の強い潜在ニーズまでの獲得は困難です。収集した顕在ニーズに対して「なぜ?」を繰り返し、潜在ニーズを推測する必要があるでしょう。

ウォンツ×ニーズの顧客セグメント

ウォンツとニーズをある程度把握できていれば、顧客のセグメンテーションが可能になります。

主に以下の4つのパターンにセグメントでき、これらを把握することで、商品やサービスを購入するまでの「距離」を予測できます。顧客との距離に応じた、適切なアプローチ戦略の策定などに役立つでしょう。

ニーズが明確 ニーズが不明確
ウォンツが明確 ①商品を購入するまでの距離が最も近い
商品が欲しい、すぐにでも必要と感じている
②必要性を感じられれば購入を促せる状態
商品は欲しいが必要性自体は感じていない
ウォンツが不明確 ③欲しい気持ちを訴求できれば購入を促せる状態
商品を欲しいとは思っていないが必要性は感じている
④商品購入までの距離は遠い状態
商品に必要性を感じていない

1.ウォンツもニーズも明確

ウォンツもニーズも明確な顧客は、対象の商品を購入すればそれらを満たせることを理解している状態と評価できます。該当の顧客に対しては、「対象商品が顧客の悩みの解決に最適である」ことをあらためて伝え、購入を促しましょう。

2.ウォンツは明確だがニーズは不明確

商品に魅力を感じているものの、必要性自体を感じていない心理状態です。こうした顧客に向けては、必要性を訴求するようなアプローチが効果的です。

必要性に訴えかけるには、顧客が抱えている問題や悩みに気づいてもらうプロセスが欠かせません。「なぜ商品に魅力を感じているのか?」を明確化し、その背景にある問題や悩みを特定していきます。

3.ニーズは明確だがウォンツは不明確

必要性は理解しているものの、どの商品を利用すべきなのかが定まっていない心理状態です。こうした顧客に向けては、商品の特徴や強みを積極的に伝え、「対象商品が顧客の悩みの解決に最適である」ことを示します。

ニーズが明確であれば、不足しているのは商品の訴求力です。商品の魅力がしっかりと伝われば購入を促せます。

4.ウォンツもニーズも不明確

商品を購入してくれる可能性がもっとも低い心理状態です。この場合のアプローチには長期的な視点が求められ、将来的に商品に興味を持ってもらえるように努めます。

具体的には、チラシによる告知や営業電話などの方法です。しかし、過度なアプローチになってしまっては将来的に顧客になる可能性自体が消失します。ある意味では、もっとも慎重にアプローチすべき顧客であるともいえるでしょう。

まとめ

ウォンツは「手段」を表す心理であり、ニーズは「目的」を表す心理です。顧客が求める本質を理解すべく、両者の違いを明確にしておきましょう。

両者の理解は、顧客の抱える潜在的な欲求を見える化したり、購入までの距離感を測ったりと、マーケティング戦略構築における重要な役割を担います。

ウォンツやニーズにマッチしていないアプローチは、商品購入の機会損失の直接的な要因にもなりかねません。「なぜ?」の繰り返しや調査などを活用し、顧客心理の理解に努めましょう。

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