購買行動とは?
主な種類とマーケティングへの具体的な活用方法を解説
消費者の購買行動は時代に応じて常に変化し続けており、それに相関するさまざまな購買行動モデルが提唱されています。店舗経営者や事業主、マーケターなどは、複数の購買行動モデルから最適な種類を当てはめて、消費者の商品購入における心理状態や行動内容の理解に努めなくてはいけません。
本記事では、購買行動と購買行動モデルの基本的な内容と、その重要性について解説します。
購買行動とは
購買行動とは、消費者が商品・サービスを購入する際に取る行動を指します。
消費者の行動原理は、その時、その瞬間の心理状態に大きく左右されることがわかっており、心理状態の背景には、消費者を中心に取り巻くさまざまな環境要因があります。消費者は置かれた環境要因の影響下にて、「衝動買い」や「ついで買い」といったアクションを促されるなど、商品購入を後押しされているのです。
また、購買行動モデルとは、購買行動の過程をいくつかのステップに分類したものです。購買行動を知ることは、購買行動モデルの理解を深めることにもつながります。
購買行動と消費者行動の違い
購買行動と類似した用語に「消費者行動」があります。
消費者行動の言葉に明確な定義はありませんが、消費者に影響を与えるような社会情勢やトレンドなどを踏まえて、実際に消費者がとる行動のことと解釈できるでしょう。
購買行動と同じ意味合いで使われることもあるため明確な線引きは難しいですが、「消費者行動のなかに購買行動が含まれる」といったニュアンスです。
購買行動モデルの種類
購買行動モデルとは、購買行動の過程をいくつかのフローに分類しモデル化したものです。
その時のトレンドや社会情勢などから、消費者心理は少なくない影響を受けるため、購買行動モデルも時代に応じて変化します。現代では「マス中心」「インターネット中心」「SNS中心」の3つに大まかに分類できるでしょう。
【マス中心の購買行動モデルの種類】
購買行動モデル | 構成要素・意味 |
---|---|
AIDA(アイダ) | ● Attention(認知) ● Interest(関心) ● Desire(欲求) ● Action(行動) |
AIDMA(アイドマ) | ● Attention(認知) ● Interest(関心) ● Desire(欲求) ● Memory(記憶) ● Action(行動) |
AIDCAS(アイドカス) | ● Attention(認知) ● Interest(興味・関心) ● Desire(欲求) ● Conviction(確信) ● Action(行動) ● Satisfaction(評価) |
【インターネット中心の購買行動モデルの種類】
購買行動モデル | 構成要素・意味 |
---|---|
AISAS(アイサス) | ● Attention(認知) ● Interest(関心) ● Search(検索) ● Action(行動) ● Share(共有) |
AISCEAS(アイシーズ) | ● Attention(認知) ● Interest(関心) ● Search(検索) ● Comparison(比較) ● Examination(検討) ● Action(行動) ● Share(共有) |
DECAX(デキャックス) | ● Discovery(発見) ● Engagement(関係構築) ● Check(確認) ● Action(行動) ● eXperience(体験と共有) |
【SNS中心の購買行動モデルの種類】
購買行動モデル | 構成要素・意味 |
---|---|
VISAS(ヴィサス) | ● Viral(口コミ) ● Influence(影響) ● Sympathy(共感) ● Action(行動) ● Share(共有) |
SIPS(シップス) | ● Sympathize(共感) ● Identify(確認) ● Participate(参加) ● Share & Spread(シェア&拡散) |
ULSSAS(ウルサス) | ● User Generated Contents(認知) ● Like(好印象) ● Search1(検索1) ● Search2(検索2) ● Action(購買) ● Spread(拡散) |
以降では、これらのなかでも現在効果的とされている3つの購買行動モデルを紹介します。
- AISAS(アイサス)
- DECAX(デキャックス)
- ULSSAS(ウルサス)
AISAS(アイサス)
AISAS(アイサス)は、2005年に電通が提唱した購買行動モデルです。ネット検索が主流となった現代における、代表的な購買行動モデルとして知られています。
AISASは、以下で示す5つのステップで消費者の購買行動をモデル化したものです。
【AISASを構成する5つの要素】
- Attention(認知):消費者が商品を認知する状態
- Interest(関心):消費者が商品に関心を持つ状態
- Search(検索):消費者がネットで商品を検索する状態
- Action(行動):消費者が検索した商品を購入する状態
- Share(共有):消費者が購入した商品をネットで共有・拡散する状態
AISASは、何かしらを経由して「認知」した商品を、ネットで「共有・拡散」するまでのプロセスをモデル化しています。EC事業やネット販売にも力を入れている小売店などに適した購買行動モデルです。
AISAS(アイサス)における購買行動の例
化粧水の購買行動を、AISASにあてはめて具体化します。消費者は各ステップでどのような行動をとり、それに対して企業はどのようなアクションを起こすべきなのか、確認していきましょう。
A(認知)
化粧水の告知動画、テレビCM、ネット広告などから消費者は商品を認知します。企業側は記憶に残る告知動画などを展開し、化粧水の記憶を消費者に浸透させます。
I(関心)
告知動画や商品イメージから得られる印象により、消費者は化粧水に対する強い魅力を植え付けられます。企業側は化粧水の印象をより鮮明にするために、ターゲットに寄り添ったストーリーの告知動画や、実際に使用してみたくなるような理想的なイメージ画像などを作成し、認知から興味・関心段階へとステップアップさせます。
S(検索)
消費者は、実際に興味を持った化粧水をインターネットで検索します。企業側は商品専用ページを用意したり、口コミの増加を図ったりといった施策を講じます。
A(行動)
消費者が実際に化粧水を購入します。企業側は商品の購入を後押しできるよう、お得なセットやタイムセールなどを展開し、購入アクションを実際に起こしてもらえるように促します。
S(共有)
消費者は、実際に化粧水を使用した感想を共有・拡散します。企業側は悪い印象を抱かれないように、商品の質を担保する必要があります。
DECAX(デキャックス)
DECAX(デキャックス)も、電通が2015年に提唱した購買行動モデルです。コンテンツマーケティングに注力する企業に適した購買行動モデルで、コンテンツユーザーと企業間の関係性の構築を重要視したプロセスを踏みます。
DECAXは、以下で示す5つのステップで消費者の購買行動をモデル化したものです。
【DECAXを構成する5つの要素】
- Discovery(発見):ネット上のコンテンツで商品を発見する状態
- Engagement(関係構築):企業のコンテンツを繰り返し閲覧し、消費者と企業の関係性が深まっていく状態
- Check(確認):購入する価値のある商品かどうかを確認する状態
- Action(行動):実際に商品を購入する状態
- eXperience(体験と共有):実際に商品を使用した体験をもとに、SNSなどを通じて共有・拡散する状態
このモデルは、自社のコンテンツにリーチしてもらう過程や、コンテンツを介しての消費者の関心の醸成が求められるためハードルの高さはあるものの、中長期的なマーケティング戦略に組み込む価値は十分にある購買行動モデルです。
DECAX(デキャックス)も、電通が2015年に提唱した購買行動モデルです。コンテンツマーケティングに注力する企業に適した購買行動モデルで、コンテンツユーザーと企業間の関係性の構築を重要視したプロセスを踏みます。
DECAXは、以下で示す5つのステップで消費者の購買行動をモデル化したものです。
【DECAXを構成する5つの要素】
- Discovery(発見):ネット上のコンテンツで商品を発見する状態
- Engagement(関係構築):企業のコンテンツを繰り返し閲覧し、消費者と企業の関係性が深まっていく状態
- Check(確認):購入する価値のある商品かどうかを確認する状態
- Action(行動):実際に商品を購入する状態
- eXperience(体験と共有):実際に商品を使用した体験をもとに、SNSなどを通じて共有・拡散する状態
このモデルは、自社のコンテンツにリーチしてもらう過程や、コンテンツを介しての消費者の関心の醸成が求められるためハードルの高さはあるものの、中長期的なマーケティング戦略に組み込む価値は十分にある購買行動モデルです。
DECAX(デキャックス)における購買行動の例
同様に、化粧水の購買行動を、DECAXにあてはめて具体化します。コンテンツの重要性が高く、量はもちろん質も伴わなくてはならないことの必要性が示唆されます。
D(発見)
消費者は美容関係のコンテンツなどを通じて対象の化粧水に出会います。消費者に発見してもらえるようなコンテンツの制作が企業側に求められるため、検索上位を獲得できるメディア制作のオペレーションや、フォロワー数の多いSNSアカウントの構築に注力します。
E(関係構築)
消費者はコンテンツを通じて化粧水に関心を抱くようになり、さらに同じ企業が提供する他のコンテンツも閲覧しながら関係性が深まっていきます。企業側は消費者のニーズに応えられるように、多くのコンテンツを用意する必要があります。
C(確認)
ここまでの関係構築の経緯や企業への理解度を踏まえ、消費者は「購入する価値があるのか」を確認します。企業側は化粧水への理解をさらに促進できるようなコンテンツを制作したり、自社の強みをより深く知ってもらえたりするような施策を講じます。
A(購買)
消費者は、化粧水の価値をあらためて確認できたら、実際に購入へと向かいます。企業側は購入を後押しできるようなキャンペーンなどを実施します。
X(体験)
消費者が実際に化粧水を体験したレビューをネットで共有・拡散することで、コンテンツへの流入量は増加します。企業側はネットで好印象が拡散されるような質の高い化粧水を開発する必要があります。
ULSSAS(ウルサス)
ULSSAS(ウルサス)は、2019年にホットリンクが提唱した購買行動モデルです。SNSの利用が活性化する現代にマッチした購買行動モデルで、従来の検索行動にSNS上でのアクションが加わっていることが特徴となります。
ULSSASは、以下で示す6つのステップで消費者の購買行動をモデル化したものです。
【ULSSASを構成する6つの要素】
- User Generated Contents(認知):SNSなどに消費者が投稿した情報で商品を知る状態
- Like(好印象):SNSなどに投稿された商品に反応して好印象を抱いている状態
- Search1(検索1):SNSで商品について検索する状態
- Search2(検索2):一般検索(検索エンジン)で商品を検索する状態
- Action(購買):実際に商品を購入する状態
- Spread(拡散):商品に関する情報を消費者がSNSで拡散する状態
ULSSASはSNSによる認知から始まり、その出口にてSNSによるさらなる拡散を促す、多くのユーザーを巻き込んだ循環的な購買行動モデルになっています。
ULSSAS(ウルサス)における購買行動の例
同様に、化粧水の購買行動を、ULSSASにあてはめて具体化します。SNSの重要性が極めて高く、拡散力を有する商品でないとモデルの成立自体が難しくなるため、体験価値やビジュアルにこだわった商品開発が求められます。
U(認知)
消費者がSNSで化粧水の感想などの投稿に出会い、認知します。
L(いいね)
投稿に対して消費者が好印象を抱いたら、「いいね」や「お気に入り」をタップして強い関心が醸成されます。
S(SNS検索)
好印象を抱いた化粧水に関する情報を集めるために、消費者はSNSで同じ商品について取り上げている投稿が無いか検索します。
S(Web検索)
続いて、検索エンジンを利用して化粧水について検索し、消費者はさらに理解を深めます。企業側は、化粧水の魅力が伝わるような詳細情報を提供できるコンテンツを用意します。
A(購入)
消費者は実際に購入することを決断します。企業側は購入を後押しできるようなキャンペーンなどを実施します。
S(拡散)
消費者が実際に化粧水を体験したレビューをSNSで拡散します。結果、入り口のU(認知)へとつながり循環します。
購買行動モデルが重要な理由
購買行動モデルの理解や適切な運用は、現代のマーケティングにおいて欠かせない切り口です。
- 最適なアプローチ・プロモーションを選択できる
- 購買プロセスにおける課題を発見できる
最適なアプローチ・プロモーションを選択できる
顧客行動モデルと照らし合わせて、ユーザーの購買行動に対する理解の解像度が高まれば、商品にマッチしたプロモーション手法などが浮かび上がります。
また、購買行動は人や商品それぞれで異なるものです。対象の顧客や商品との親和性が高い購買行動モデルを当てはめ、適切な手法やタイミングにてユーザーにアプローチするためには、複数の購買行動モデルについて正しく理解しておく必要があるでしょう。
購買プロセスにおける課題を発見できる
顧客の購買行動をモデルに当てはめることで、購入までのプロセスは可視化されます。結果、購入までのプロセス内で発生しているボトルネックに気づけるようになり、早急な改善を講じていけます。
まとめ
購買行動は、消費者が商品やサービスを購入する際に取る行動のことです。購買行動をモデリングし可視化することで、消費者に向けて適切な手法やタイミングにてアプローチできるようになります。
商品自体の進化はもちろんのこと、ビジネスモデルの多様化やITなど技術革新の影響を受け、購買行動は時代に合わせて変化し続けています。従来の店舗だけに限定されるのではなく、ECサイトからの購入が当たり前になっていることなどはその好例でしょう。
旧来のイメージにとらわれたままでは、消費者への効率的なリーチやプロモーションが望めなくなり、売上の低迷などを招きます。時代の変化を見極めて、企業はユーザー心理や購買行動への理解をアップデートしなくてはいけません。