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NPS指標とは?
意味や顧客満足度との違いをわかりやすく解説

NPSは、顧客ロイヤルティを計測する指標です。従来の「顧客満足度」の観点では見えてこなかった評価が顕在化することから、BtoC・BtoBなどビジネス形態を問わず重視される場面が増えています。
本記事では、NPSの概要と意味、調査方法や計算方法について解説します。

NPS指標とは

NPSとは、企業や商品・サービスへの愛着度がどの程度あるかを数値化し、顧客ロイヤルティを測る指標です。
「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の頭文字を取ってNPSと呼ばれています。

0~10の11段階で顧客ロイヤルティを数値化することが特徴で、事業の成長率とも深い関係性が認められることから、欧米企業の3分の1以上が活用しているともいわれています。

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顧客満足度との大きな違いに、業績との相関関係があります。アメリカのコンサルティング会社であるBain & Companyの調査によると、顧客満足度よりもNPSのほうが事業成長との相関性が認められるという結果が示されています。

その原因は「顧客満足度」の定義の曖昧性に帰結すると考えられます。事実、同社の発表した資料では、NPSを活用している企業の成長率は、導入していない企業の平均2倍、一方でコストは15%減という結果を示しています。

顧客満足度だけではわからない部分を可視化できる点、そして事業の成長に大きく貢献できる点から、多くの企業がNPSに注目しているのです。

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NPSの調査方法

NPSの調査方法はいくつか手段がありますが、本記事ではアンケートによる方法を紹介します。集計と分析までの流れは次の通りです。

  1. 現在の課題を洗い出す
  2. アンケートを作成する
  3. 配信リストや配布リストを作成する
  4. アンケートの回答依頼を出す・配布する
  5. アンケートを回収して数値の集計・分析を行う

NPS調査で重要となるのは、調査を実施する目的の設定です。目的が明確になっていないと、設問も曖昧になってしまううえ、集まった結果の実効性にも疑問符がつくでしょう。企業ブランディングや商品・サービスの改善を目指すのであれば、目的を明確にしたうえで時間をかけて設問を作り、丁寧な分析を実施する必要があります。

NPSのスコア計算方法

NPSスコアの計算方法は、難しいものではありません。計算を始める前に、まずは回答者が属するカテゴリを理解します。回答者は0~10点の点数によって、以下の通りに分類されます。

分類 回答者の点数
推奨者(Promoter) 10~9点
中立者(Passive) 8~7点
批判者(Detractor) 6点以下

上記の点数基準は企業や実施者によって変化することはなく、すべて同じ基準です。上記の基準で回答者を集計し、推奨者と批判者の割合の差をスコアとして算出します。以下、算出例を紹介します。

分類 回答数 総回答数に対する割合
推奨者(Promoter) 150人 50%
中立者(Passive) 50人 20%
批判者(Detractor) 100人 30%

この場合、推奨者(50%)から批判者(30%)を引いて、NPSは20となります。計算結果がマイナスの場合は推奨者よりも批判者が多い状態です。

NPSの目安・平均値

NPSの目安や平均値は業界によって異なり、トップの企業と業界の平均が算出されています。

業界 トップ(pt) 平均(pt)
生命保険 -32.6 -47.8
生命保険(請求体験調査) -18.2 -32.4
生命保険(アフターフォロー) -35.1 -46.7
ダイレクト型自動車保険 -23.2 -27.7
代理店型自動車保険 -41.1 -44.5
銀行 -22.9 -44.1
クレジットカード -18.4 -38.7
QRコード決済 -24.5 -38.2
ネット証券 -8.1 -27.3
対面証券 -48.1 -53.9
MVNO・サブブランド -16.2 -21.9
電力(関東・関西) -32.0 -48.3
都市ガス(関東・中部・関西) -34.8 -48.7
通販化粧品 -2.0 -12.0
プレステージ化粧品 3.6 -7.9
ネットスーパー -6.2 -14.3
セキュリティソフト -12.7 -30.1
動画配信サービス -2.0 -22.7
アパレルECサイト -13.7 -20.1
人材派遣(BtoB) -18.4 -35.3

(参考:NTTコム オンライン「NPS®業界別ランキング&アワード」をもとに作成)

NPS全体としての目安や平均値はありません。各業界の平均値を参考にしましょう。

NPSを調査する意味

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NPSを調査すると、次のようなメリットを享受できます。

  • サービスの改善方法や方向性を判断できる
  • 企業のブランド戦略に役立てられる

点数で評価を行うため集計の手間が発生することがデメリットにはなりますが、NPSの調査にはそれを補って余りあるメリットがあります。

サービスの改善方法や方向性を判断できる

NPSは、顧客満足度よりも商品・サービスへの評価が詳細に表れるため、今後の改善の必要性や売上アップのための方向性の判断に役立ちます。NPSの改善は推奨者の声であり、この層が増えていくことでリピートや追加購入、継続購入が増していきます。

また、推奨者の増加は批判者の割合の減少だけを意味するのではなく、推奨者から第三者に対する口コミの増加も期待されます。結果、新規顧客の獲得につながり、収益拡大の可能性が高まるのです。

また、顧客の属性ごとにどのようにアプローチすればいいか、明確化できることもNPSのメリットです。批判者の意見を深堀りしてサービスを見直すことで、改善策が明らかになり、着実な収益拡大につながっていきます。

企業のブランド戦略に役立てられる

企業ブランディングに活用できることも、NPSを実施するメリットです。

従来の顧客満足度とは異なり、NPSは測定方法が統一されているため、他社と比較したうえでの自社の立ち位置を明確にできます。業界内でのポジションも明らかになるため、自社と他社を比較して何が優れている、あるいは劣っているのか、そのポイントを客観視できます。

NPSは商品やサービスの特性や性能に関わらず判断される、いわば「心の満足度」を測る指標です。つまり、NPSが高い顧客属性がそのまま自社のターゲットとなり、ブランド戦略に発展していきます。商品やサービスに求めているものが共通している層をターゲットにすれば、結果的にブランディング拡充にも収益性拡大にもつながります。

NPSを調査する際のポイントや注意点

NPSを調査する際は、次のポイントや注意点を押さえておきましょう。

  • 評価理由がわかる設問を入れる
  • 自社内における数値比較を行う
  • 他社との数値比較も行う

NPSは顧客の声を集める貴重な機会です。単にスコアを出すために利用するのではなく、顧客の生の声に耳を傾ける工夫も必要です。また、収集した数値は自社・他社で必ず比較しましょう。

評価理由がわかる設問を入れる

NPSで定められた点数のみを収集しても、顧客の思っていることや感じていること、批判や要望は可視化されません。NPSを実施する際は、その点数を選んだ理由を記述できる設問を設けるようにしましょう。自由記述欄を設けてもいいかもしれません。

ひとつひとつに目を通すのは骨が折れますが、評価を下した理由がわかると、具体的な改善策を講じやすくなります。

また、継続的にNPS調査を実施する場合は、チェックボックスやマークシートで回答できるようにすると、変更点の可視化分析が容易になります。実施頻度までを明確に定め、設問内容や方法を調整すると、より効果を実感できるでしょう。

自社内における数値比較を行う

NPSは1回実施して完結するものではありません。定期的に実施することで、高い効果につながります。調査結果を時系列に並べて分析することで、講じたマーケティング施策に応じた効果水準を評価できるようになるためです。

たとえば、想定顧客の洗い直しを行い、マーケティング戦略を改修した次のNPSでスコアが改善されていれば、その施策は成功したと判断できます。

他社との数字比較も行う

NPSは、自社の評価をはっきりさせ、次に取るべき行動を洗い出すのに有効な手段です。しかし、自社だけで完結していては、業界内でのポジショニングを把握できません。同じ業界内で比較対象を見つけ、その競合との差分を分析しましょう。

競合を設定すると、改善施策も変化します。どの部分を改善したいかによって比較対象は変わるため、適切な比較対象を設定しましょう。

まとめ

NPSで集まった数値や声は、企業や商品・サービスの改善を行うための重要な材料です。有効活用するには集計と分析がカギを握っているため、収集するだけで満足せず、比較・分析を繰り返し業績向上に向けた施策の実施や改善を行っていきましょう。

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