RFIDソリューション導入事例
食券にRFタグを組み込み、セルフそば店のレジ業務を改善
自動釣銭機との連携でフロアスタッフの負担を大幅に軽減
マツザワホールディングス株式会社「小木曽製粉所」
RFIDソリューション
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導入時期
2019年10月
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導入目的
レジ待ち行列の改善
スタッフの負担軽減
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課題
レジ待ち行列が回転率向上の障害になっていた
会計業務を担当するスタッフのマネーストレスの改善
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効果
食券ベースの仕組みの踏襲でセルフ会計へのスムーズな移行を実現
会計時にスタッフが現金に触れる必要がなくなり、マネーストレスを大幅に改善
レジ待ち行列の改善にいち早くRFIDに注目
中央アルプス(木曽山脈)の玄関口として知られる長野県駒ヶ根市。アルプスの山々に囲まれたこの街の小木曽製粉所 駒ヶ根店は、地元である飯田下伊那産のそば粉を使った二八そばがリーズナブルに味わえる人気店。平日は近隣で働くサラリーマン、週末は家族連れで賑わいます。
同店の人気の理由は、作り置きせず、注文を受けてからそばを茹で、冷水で洗い、氷水で締めて提供する点です。一連のサービスの起点になるのが、カウンター入口に並ぶ食券。お客様が食券を選ぶと同時に調理を開始し、食券に基づき会計を行うというのが一連の流れになります。
そばの茹で時間を考えると合理的な仕組みのように思えますが、実際はレジ待ち行列で流れが滞留することが少なくありません。運営会社であるイング株式会社を傘下に収めるマツザワホールディングスグループのシステム開発を長年担ってきた株式会社マツザワ 業務推進チーム チームリーダーの木下 哲也氏はこう説明します。
「当グループのセルフそば店業態は駒ヶ根店が2店舗目ですが、特にランチタイムなどピーク時のレジ待ち行列は回転率向上の大きな制約になっていました。駒ヶ根店の出店にあたり、レジオペレーションを効率化できれば売上も伸長するという仮説のもと、レジ業務を全面的に見直すことにしました」
その際、木下氏が注目したのがRFIDでした。駒ヶ根店のオープンは2019年。RFIDという言葉に馴染みがなく、飲食店への本格的な導入事例はまだ存在しない時代のことです。
「当社の場合、グループの祖業でもあるおみやげ店のレジ業務省力化という観点で、早くからRFIDに注目していたという背景がありました。当時、多くのベンダーさんにお声掛けしてリサーチを行っていたのですが、東芝テックのショールームを訪ねた際に担当の方からRFIDの最新情報に関するレクチャーを受け、セルフそば店にうってつけのソリューションではないかと直感したことがそもそものはじまりでした」(木下氏)
食券にRFタグを埋め込み、会計時にリーダーの上に食券を置くことで自動読み込みを行うというのが駒ヶ根店のレジ業務の基本的な考え方。従来のレジの仕組みを流用することで、お客様のストレスなくRFID導入が実現できる点も大きなポイントです。同店はさらにリーダーと自動釣銭機の連携により、セルフレジへの移行も果たしています。
RFIDによるマネーストレス解消が困難な人手確保に貢献
先行事例がないこともあり、導入にあたっては技術面の試行錯誤が繰り返されました。その一つがRFタグの誤読みへの対応です。
「当初はカウンター台にリーダーを置いていたのですが、その結果、レジを待っているお客様のRFIDまで読みとってしまうという問題が生じました。この問題は、自動釣銭機の上にリーダーを配置し、水平面より上のRFIDのみ読み込むようにチューニングすることで解決しています」(木下氏)
当初の計画通り、RFIDはお客様にもスムーズに受け入れられています。店舗を運営するイング株式会社 飲食事業部長の川野 悟氏はこう振り返ります。
「食券を選び、レジで示すという一連のフロー自体に変更はないため、特にお客様の観点ではRFID導入は極めてスムーズに進んでいます。むしろ自動釣銭機の扱いに戸惑う方の方が多かったのですが、それもオープン後、半年程度のことです。今、店舗スタッフのサポートを必要とするのは、はじめて当店を利用する観光客の方ぐらいですね」
RFIDと自動釣銭機によるソリューションの効果としてまず挙げられるのは、フロアスタッフのマネーストレス解消です。
「当社の場合、レジ行列の解消という観点からRFID導入を検討していますが、現時点で最も大きな効果を挙げているのはマネーストレスに代表されるフロアスタッフの負担経験です。人手不足が表面化する中、我々はより幅広い層の方々に働いていただきたいと考えていますが、現金を扱うストレスは、課題だと感じていました。機械に任せることができれば、違算は機械の責任。人手不足対策という観点でもRFIDは大きな役割を果たしています。セルフそば店の利益率を考えると既存店舗へのRFID導入は難しいのが実情ですが、RFID単体で考えると低コストで導入が可能です。今後の新規出店は当然、RFID導入が前提になると考えています」(木下氏)
下げ膳専用など、これまでにないロボット活用を検討
マツザワグループは、セルフそば店のほか、和食食事処、ラーメン、フードコートなど、多様な飲食事業を展開しています。業務効率の改善という観点で、現在注目するのがモバイルオーダーの導入です。
「当グループに限らず、飲食業態は利益率の問題もあり新規ソリューション導入は難しいのが実情です。しかし、お客様のモバイル端末をオーダー端末として利用する場合、イニシャルコストは最小限に抑えることが可能です。和食処やフードコート事業を中心にお客様のモバイルデバイスを活用するソリューション導入を積極的に検討していきたいと考えています」(木下氏)
さらにロボットの活用にも注目しているといいます。
「私たちは自動配膳ロボットの試験運用も行っていますが、配膳を前提にしてしまうと、衛生上の観点も含め、導入ハードルはかなり高くなってしまいます。こうした中、注目しているのが下げ膳に特化したロボット活用です。特に和食業態の場合、テーブルを拭く作業と下げ膳を切り分けるだけでも、大幅な省力化が可能になると考えています。レジ機能を持つロボットも登場していますが、その活用も面白いと思いますね。下げ膳と会計を担うと共に、おすすめメニューをディスプレイに表示するなどの役割を担わせることで十分に投資分の回収が可能になると考えています」(木下氏)
※当記事は2024年4月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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