Toshiba 東芝テック株式会社

CVC投資担当に聞く
いま注目の投資領域と
出資先企業と描きたい未来

東芝テックのCVCチームは、東芝グループがこれまでに培ってきた事業アセットを活用して、
出資先スタートアップ企業の事業内容やステージに合わせた支援を行い、
事業成長のお手伝いをさせていただいています。
今回は実際にCVC投資を担当している鳥井敦氏、小澤慶二氏、吉村公一氏に、
東芝テックが注力する投資領域や、近年注目している市場動向、
スタートアップ企業と実現したい未来について話を聞きました。

コロナ禍で加速するDX化と消費行動の変化に注目

はじめに、皆さんが担当されている投資領域を教えていただけますか?

吉村

私は主にHRテック分野を見ています。具体的にはHRテックの市場調査、スタートアップ企業の動向調査、スタートアップのソーシング活動、出資の検討などを担当しています。

小澤

私はAI分野と飲食業界を中心に、さまざまな領域のスタートアップ企業動向を追いながら、ソーシング活動や出資検討を行なっています。

鳥井

私はCVCチームリーダーとして、チーム全体の動きを統括する立場から、割と幅広く関わりながら多くの経営者とお会いし、出資や出資後の支援を行なっています。個人の注力領域としては、楽天でのECの経験および東芝テックとしてのリアル店舗向けのソリューションの知識経験をベースに、OMOやニューリテールフォーマットなど、リテール領域のスタートアップ企業を中心に出資検討も実施しています。

担当領域における市場動向やスタートアップ企業の動きについて、
注目していることを教えてください。

吉村

当社のお客様である小売・飲食店は、人口減少による労働力不足が常態化しているため、生産性を高める手段としてHRテックが待ったなしの状況です。こうした社会ニーズを受けて、これまで国内のHRテックは採用や人事、労務管理などのサービスが主流でしたが、近年は従業員のエンゲージメントを向上させるソリューションがスタートアップ企業を中心に増え始めています。たとえば、AIを使ったシフト管理、ビジネス向けSNSツール、動画を活用した教育ツールなどです。

また、リファラル採用やスポットワーカー向けのサービスなど、多様化する働き方やキャリア形成に対応するソリューションへの需要も高まっています。

HRテックは数年前から日本でも正規向けのソリューションを中心に少しずつ浸透していましたが、コロナ禍で店舗や企業のDX化が急速に進んでおり、いまはその動向を注視しながら非正規向けのソリューションを展開するスタートアップ企業を中心に出資先企業を検討しています。

小澤

AI領域に関しては、未来の需要予測や売上予測を行うフォーキャストテック、小売におけるダイナミック・プライシングや物流における在庫・配達ルートなどの最適化分野、スマートフォンの発達とともに進化を続けるパーソナライズド分野、これら3つの分野に特に注目しています。

飲食業界はコロナ禍で厳しい状況が続く中、急速に進んでいるのがDX化です。Uber Eatsをはじめとするデリバリープレイヤーが急増し、店舗販売からECやモバイルオーダーへの移行が活性化しています。同時に、デジタル対応に苦戦する店舗を支援するスタートアップ企業が他業種からも参入し始めております。

鳥井

リテール分野でいうと、消費者の消費行動や情報接触に大きな変化が起こり、いわゆるOMO(Online Merges Offline:オンラインとオフラインを統合して考えるマーケティング概念)のように、情報接点はインターネットで実際に購入するのは店舗といった消費行動が一般化しています。

たとえば、顧客がインターネットで注文した商品を遠方の工場から届けるよりも、顧客の近くの小売店から届けたほうが効率良く、運送コストや燃料消費も減らせます。テクノロジーによって既存のリテールの形態がまだまだ大きく変革していける状況まできています。

同時に、店舗のオペレーションや提供価値も変化していくでしょう。テクノロジーを活用して業務を効率化するDXだけでなく、時代に合わせた新しい業務を最適な形で創出するDXを実現するための、Vertical SaaS分野にも注目しています。

既存事業との連携だけでなく、
連携を前提としない投資にも挑戦

これまで数多くのスタートアップ企業や経営者の方とお会いしてきたと思いますが、その中で得られた気づきはありますか?

吉村

多くの経営者の方が新しいアイデアやビジョンを持って事業に取り組まれていると思いますが、特に「世の中を変えたい」という熱いパッションを持った経営者の方とお会いすると、とてもワクワクするし、いつも大きな刺激を受けています。

小澤

私もこれまでにいろいろなスタートアップ企業の経営者の方とお会いしてきましたが、時代によって経営者のキャラクターや経営チームの雰囲気が変わってきていると感じます。ひと昔前はトップダウン型で事業を引っ張っていく経営者が多かったのですが、最近は経営者自身がエンジニアでチームを組んで経営を回す方や、熱いパッションを内に秘めた控えめな方など、スタートアップ企業の形に多様性が生まれているので、私自身も皆さんと接する中で日々新しい学びや発見が得られています。

そのようなスタートアップ企業に対して、
東芝テックとしてどのようなアセットが提供できるでしょうか?

小澤

当社はPOS事業で国内シェアトップの実績があり、飲食店・スーパー・コンビニ・アパレル店など全国各地に膨大な小売ネットワークが張り巡らされています。この事業アセットは大きなメリットの一つとして提供できることだと考えています。

一方、POSとAPI連携したいというご要望をよくいただくのですが、実はPOSのAPI連携は簡単ではなく、多くのハードルをクリアしなければなりません。そこを踏まえた上で、一緒に何ができるかを考えていただけると心強いですね。

吉村

提供できる事業アセットはいろいろとありますが、個人的には既存事業との連携を意識しすぎないようにしています。我々の事業とかけ離れた分野であっても、おもしろい事業と一緒に成長することで、将来的に大きなイノベーションをもたらす新規事業がつくれるのではないかと思っています。

小澤

もう一つ、当社はリテール事業などこれまで培ってきた事業アセットを軸に、グローバルカンパニーを目指して活動しています。最近はグローバル市場を志向するスタートアップ企業も増えているので、そういった企業は我々と手を組むことでビジネスのグローバル展開を加速させることができるのではないかと思います。

情熱のあるスタートアップ企業と、
新規事業創出という難題にチャレンジしたい

すでにいくつか投資実績があると思いますが、
どのような事業に投資をしてきたのか教えていただけますか?

鳥井

ABEJAは、小売・流通業界に特化したSaaSを提供している会社です。画像解析技術とAIのディープラーニング技術を活用し、店舗運営の最適化を実現します。

ダブルフロンティアは、地域密着型の買い物代行プラットフォーム「ツイディ(twidy)」を提供しています。

VRCは、最先端技術を駆使した3Dの画像処理、画像解析のアルゴリズムなど、さまざまなサービスに必要な基礎技術を開発・提供しています。

直近では、複数の無人航空機を安全かつ簡単に運行させる飛行ルートを自動生成する、AI管制プラットフォームを提供する企業への出資が決まりました。

本当に幅広い事業領域への出資を行なっているのですね。
投資するスタートアップ企業とはどのような関係を築いていきたいでしょうか?

吉村

ひと言でいえば、「Win-Winな関係」です。スタートアップ企業の方と共創を取り組む上で、大企業とスタートアップ企業で上下関係が生まれるケースも少なくないのですが、そうならずに、お互いに足りないものを補いながら一緒に成長していく仲間、フラットなパートナー関係を大事にしていきたいです。

小澤

Win-Winであることは大前提として、スタートアップ企業の経営者が悩んだり苦しんだりする時にメンター的な役割を果たしたり、事業をピボットさせたい時にサポートできるような存在でありたいと思っています。CVC担当として投資させていただいて終わりではなく、出資後も良好な関係を継続していきたいですね。

最後に、今後プロジェクトを通して達成したい目標を教えてください。

吉村

CVCは新規事業をつくるための一つの手段であり、最終的には新規事業を生み出して世の中に新しい価値をもたらすことが大きな目標です。新規事業の成功率は1割にも満たないと言われるほど、難易度が高いチャレンジをさせてもらう中で、しっかりと社会に価値提供ができてビジネスとしても成り立つ事業をつくりたい。それを、素晴らしいパッションとビジョンをお持ちの経営者の方と一緒に取り組んでいきたいですね。

小澤

東芝テックという歴史あるハードウェア機器メーカーがビジネスモデルを大きく変革する手段の一つとして、CVCに挑戦していることに大きな意義があると思っています。日本でCVCが成功しているケースはまだ少ないので、スタートアップ企業の方々と一緒に実績をつくり、CVCのユニークな成功例として取り上げていただけるような立ち位置を目指したいです。

東芝テックと一緒にやりたいという熱い想いを持った方、東芝テックとの協働による具体的な仮説を描ける方は、ぜひ我々に声をかけていただければと思います。

鳥井 敦経営企画部 ビジネス・イノベーション・センター CVCチームリーダー

楽天で約10年間勤務し、楽天オークションサービスをDocomo社とのJVとして立ち上げや、動画配信サービス、電子書籍サービスなど数多くの新規事業立ち上げに携わる。2013年に東芝入社、文教文向けの新規事業PJにて教育分野向けのクラウドサービスの立ち上げ推進に従事、東芝テック転籍後、経営企画部にてオープンイノベーションを活用した新規事業創出およびCVC投資を推進している。

小澤 慶二経営企画部 ビジネス・イノベーション・センター

JAFCO Groupで日米の投資案件・Value-Up活動に携わる。その後、外資でのプロジェクトリーダや大手商社や人材派遣会社で新規事業立ち上げ、製造業での経営管理、組織開発等に従事し、2019年より東芝テックCVCチームに参画。

吉村 公一経営企画部 ビジネス・イノベーション・センター

サンクスの店舗運営を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブにて旗艦店のフロアマネージャー、FC店舗指導、IT企画、勤怠システム外販サービス化の企画運営、求人メディアの立ち上げなどを経験。2018年東芝テックに入社し、2020年よりCVCチームに参画。

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