「あの人頼み」をなくすには?
情報の見える化と仕組みづくりで属人化を解消する方法

2026年1月23日

コラム

■業種・業態:製造業/物流業・倉庫業  
■キーワード:RFID/属人化/見える化/仕組み化

作業台を囲んで複数の作業者が書類とタブレットを共有しながら打ち合わせをしている俯瞰写真
属人化の解消は、情報を「個人」から「チーム」へ移すことから始まる

属人化とは?その定義と現場でよくある悩み

「となりの人は何をやっている?」そう聞かれて、すぐに答えられるでしょうか。自分の担当業務については説明できても、隣の席の同僚がどんな手順で仕事を進めているのか、詳しくは知らないという方も多いはずです。

この「知らない」が積み重なった状態こそ、属人化の典型的な姿です。属人化とは、特定の業務の進め方やノウハウが担当者個人に集中し、その人がいなければ業務が回らない状態を指します。

製造現場では、次のような場面に心当たりがあるかもしれません。

  • 「この機械の微調整は○○さんしかできない」
    癖のある設備の立ち上げ手順がベテランの頭の中だけにある
  • 「過去の帳票がどこにあるか知っているのは△△さんだけ」
    紙の保管ルールが担当者の記憶頼みで、本人不在時に書類探しで時間を浪費する
  • 「トラブルが起きたら、とりあえず□□さんを呼んで」
    異常対応の判断基準が暗黙知化している
  • 「あのファイルどこ?」「○○さんのPCの中」
    情報が個人のローカル環境に散在し、共有されていない

こうした状況が常態化すると、担当者の急な休みや退職で業務が止まるリスクが生まれます。株式会社SMBが2025年に実施した調査によれば、建設業・製造業の管理職の約8割が「属人化している業務がある」と回答しています。属人化は多くの現場が抱える共通の悩みなのです。

属人化にもメリットはある—全否定は禁物

ただし、属人化を一方的に「悪」と決めつけるのは早計です。

特定の担当者に業務を任せることには、いくつかのメリットもあります。たとえば、経験豊富な担当者が継続して同じ業務を担うことで、専門性が高まり、品質が安定するケースは珍しくありません。「○○さんに任せれば安心」という信頼感が、顧客との良好な関係構築につながることもあります。

また、担当者本人にとっても、特定の業務を一任されることでモチベーションが上がり、スキルアップの機会になる面があります。自分の裁量で進められる環境は、やりがいにもつながります。

近年注目されるT型人材やジョブ型雇用の考え方も、個人の専門性を活かす方向性を持っています。すべての業務を均一に分散させることが必ずしも正解ではなく、「どの業務を誰に任せ、どこまでを共有するか」という線引きを考えることが大切です。

本当の問題は「ブラックボックス化」

書類が山積みになった乱雑なデスクと、それを見て困惑する作業者
担当者しか把握していない情報は、不在時に業務を止めるリスクとなる

では、属人化の何が問題なのでしょうか。答えは「ブラックボックス化」です。

属人化していても、業務の進め方や判断基準が周囲から見える状態であれば、大きな問題にはなりにくいものです。担当者の動きが把握でき、成果も可視化されていれば、いざというときの引き継ぎもスムーズに進みます。

一方、ブラックボックス化した状態では、何をどう進めているのかが外部からまったく見えません。担当者本人に聞かなければ分からず、その人が不在になると業務が完全に止まってしまいます。

属人化の解消とは、担当者個人の能力や専門性を否定することではありません。その人が持つ強みを活かしながら、業務の「見える化」を進め、組織として対応できる状態をつくることです。言い換えれば、「属人化していても見える化されていればOK」であり、「ブラックボックス化しているからNG」なのです。

属人化が発生する主な原因

属人化はなぜ起こるのでしょうか。現場でよく見られる原因を整理します。

業務引き継ぎや教育の軽視

「見て覚えろ」で済ませてしまう教育や、退職時に十分な引き継ぎ期間を設けない慣行は、属人化を加速させます。マニュアルがあっても更新されておらず、「マニュアルより○○さんに聞いたほうが早い」という状況が続くうちに、ますます属人化が進むという悪循環に陥ります。

人手不足による業務集中

人員に余裕がなければ、業務を分担する相手がいません。「この仕事はあの人に任せておけばいい」という状態が続くうちに、他の誰も手順を知らない状況ができあがります。前述の調査でも、属人化の原因として「人材不足により特定の人に業務が集中している」が最多でした。2024年版ものづくり白書によれば、「指導する人材が不足している」と回答した事業所は61.8%、「育成の時間がない」は46.1%に達しています。

「あの人に頼めば安心」という組織文化

経験豊富な担当者に仕事が集まるのは自然なことですが、その状態を放置すると、ますます属人化が進みます。周囲も「自分がやるより○○さんに任せたほうが早い」と考え、結果として特定の人への依存が強まります。担当者本人も「自分がいないと回らない」という状況に慣れ、無意識のうちにノウハウを抱え込んでしまうことがあります。

IT未活用による情報の分散

帳票や作業記録が個人のPCや紙のファイルに散在していると、担当者以外はどこに何があるか分かりません。情報共有の仕組みが整っていないことが、属人化を生む土壌となります。

属人化解消の第一歩は、業務の「見える化」から始める

属人化解消の第一歩は、現状を「見える化」することです。いきなり標準化やシステム導入を進めても、何をどう変えればいいのか分からなければ効果は出ません。まずは業務の実態を可視化するところから始めましょう。

ステップ1:現状把握と属人化業務の洗い出し

最初に、自社の業務を棚卸しします。「この業務は誰が担当しているか」「その人以外にできる人はいるか」「手順は文書化されているか」といった観点で整理し、属人化している業務を特定します。

現場の担当者へのヒアリングも有効です。「自分しか分からない業務は何か」「引き継ぎに不安がある作業はあるか」と聞くことで、本人も気づいていなかった属人化が見えてくることがあります。

ステップ2:リスク・重要度に応じた優先順位づけ

洗い出した業務すべてを同時に解消することは現実的ではありません。「担当者が不在になった場合の影響度」「業務の発生頻度」「代替要員の有無」などを基準に、優先順位をつけます。

まずは影響が大きく、かつ比較的取り組みやすい業務から着手するのが効果的です。小さな成功体験を積み重ねることで、現場の協力も得やすくなります。

ステップ3:見える化の実施

優先度の高い業務から、手順や判断基準を可視化します。文書化、フロー図作成、動画マニュアルなど、業務の性質に応じた方法を選びます。

重要なのは、担当者の頭の中にある「暗黙知」を、誰でも理解できる「形式知」に変換することです。「なぜその順番なのか」「どこを見て判断しているのか」といった背景まで含めて記録することで、実効性のある見える化が実現します。

ステップ4:標準化・分担・教育へ展開

見える化ができたら、業務の標準化と複数人での分担体制づくりに進みます。マニュアルを整備し、教育を実施し、実際に複数の人が業務を回せる状態を目指します。

一度つくって終わりではなく、定期的に見直し、改善を続けることが定着の鍵です。

属人化解消のための具体的な取り組み

見える化を進めるうえで、具体的にどのような取り組みが有効でしょうか。

情報共有の仕組みをつくる──どこに何があるかを誰でも分かるように

製造現場でタブレットの作業指示を確認する作業者
情報の所在を明確にするだけで、担当者不在時の混乱は大幅に減る

帳票、作業記録、過去の対応履歴などを、個人のPCやデスクに埋もれさせず、共有できる場所に集約します。共有フォルダ、クラウドストレージ、あるいは紙であればファイリングルールを統一するだけでも効果があります。

「○○さんのPCの中」「△△さんの机の引き出し」という状態をなくすことが第一歩です。情報の所在が明確になるだけで、担当者不在時の混乱は大幅に減ります。

紙とデジタルを併用したハイブリッド運用

現場によっては、すぐにすべてをデジタル化できないケースもあります。紙の帳票を残しながら、管理台帳やインデックスをデジタルで共有する方法も有効です。

たとえば、紙の帳票にIDを振り、どの帳票がどこに保管されているかを一覧化しておけば、担当者以外でも必要な書類を探せるようになります。紙とデジタルの良いところを組み合わせることで、現場の負担を抑えながら見える化を進められます。

認証や権限管理を標準化し「誰が・何をできるか」を明確にする

業務システムや機器へのアクセス権限が担当者個人に紐づいていると、その人がいなければログインすらできない事態が起こります。

一例として、ある工場では検査機器の設定変更権限が特定のベテランにしか付与されておらず、その方の不在時に製品規格の切り替えが遅れ、ライン停止につながったケースがありました。

誰がどのシステムにアクセスできるか、どの機器を操作できるかを整理し、権限を適切に分散しておくことで、属人化のリスクを軽減できます。

マニュアルと教育のサイクルを回し続ける

マニュアルは作成した時点から陳腐化が始まります。業務の変化に合わせて更新し、定期的に教育・研修を実施することで、属人化の再発を防ぎます。

ベテランから若手への技術継承も、このサイクルの中に組み込むことで効果が高まります。

属人化解消を進めるうえでの注意点

取り組みを進めるにあたり、いくつか注意すべき点があります。

一人のエキスパートを否定しない

属人化解消は、特定の担当者の能力や貢献を否定するものではありません。「あなたの仕事を取り上げる」と受け取られないよう、「あなたの知見を組織の財産にしたい」という伝え方が重要です。長年その業務を担ってきた担当者の気持ちを尊重しながら進めることが、協力を得る鍵です。

現場を巻き込み、無理のないステップで進める

トップダウンで一気に進めようとすると、現場の反発を招きかねません。担当者の協力を得ながら、小さな成功体験を積み重ねていくアプローチが有効です。

「属人化しない仕組み」を維持・改善し続ける

一度解消しても、人の入れ替わりや業務変化によって再び属人化が進むことがあります。定期的な棚卸しと見直しを習慣化し、属人化しにくい組織文化を育てることが大切です。

技術継承・人材育成との関係

属人化の解消は、技術継承を進めるための土台になります。

ベテラン社員が持つノウハウを次世代に引き継ぐには、まずそのノウハウが「見える」状態になっていなければなりません。属人化したままでは、何を継承すべきかすら分からないのです。

属人化を解消し、業務を見える化することで、技術継承の対象が明確になり、計画的な人材育成が可能になります。「○○さんの技術を継承したい」と考えても、その技術が言語化されていなければ、何をどう教えればいいのか分かりません。見える化は継承の前提条件なのです。

人手不足が深刻化する中、属人化の解消と技術継承は表裏一体の課題といえます。両方をセットで考えることで、より効果的な取り組みが可能になります。

技術継承の具体的な考え方や進め方については、関連記事「技術継承とは?人手不足時代に製造現場が取り組むべき課題と進め方」で詳しく解説しています。属人化解消と併せてご覧ください。

帳票の動きを見える化する
──A3カラープリンターRFIDソリューション

属人化した業務の成果を見える化する手段のひとつとして、帳票や文書の動きを可視化するソリューションがあります。

東芝テックのA3カラープリンターRFIDソリューションは、用紙にあらかじめ貼付されたRFタグに対し、印刷と同時に必要な情報を書き込む仕組みです。
これにより、帳票は発行された瞬間から「データを持った媒体」となり、後工程でRFIDを読み取ることで、帳票とともに動く製品・部品・パレット、さらには作業者の動きをデジタルに把握できるようになります。

紙業務を残しながら、帳票情報をデジタルで一元管理

製造現場で作業指示書などの帳票が必要な業務でも、作業開始前後でRFIDを読み込むことで、作業進捗などをシステム上で管理できます。「あの書類どこにある?」「この伝票いつ出力した?」という問い合わせに、担当者以外でも対応できるようになります。

拠点・担当者をまたいだ情報共有で「この人しか分からない」をなくす

複数拠点間をまたぐRFIDによる管理システムを構築すれば、特定の担当者だけが把握していた情報を組織全体で共有できる基盤が確立されます。これにより、拠点が離れていても、帳票の所在や処理状況を一元的に確認できます。

紙とデジタルを併用するハイブリッド運用で、現場の負担を増やさず属人化解消を進められるソリューションです。

まとめ:属人化しない強い組織づくりに向けて

属人化の解消は、特定の担当者への依存を減らし、組織として安定的に業務を遂行できる体制をつくることです。属人化そのものが悪いのではなく、ブラックボックス化して見えなくなることが問題であり、見える化こそが解消の第一歩となります。

まずは自社の属人化の実態を見える化し、リスクの高い業務から優先的に取り組みましょう。情報共有、紙とデジタルの併用、認証の標準化をセットで考えることで、持続的な改善が可能になります。

属人化解消は技術継承の土台でもあります。関連記事も参考に、自社に合った進め方を検討してみてください。

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※当記事は2026年1月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。