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ラインロビングとは?
目的や注目される背景、事例から考察

ドラッグストアに並ぶ商品といえば、医薬品や生活用品が連想されますが、生鮮品を陳列している店舗もいまでは珍しくありません。スーパーに寄るのを億劫に感じ、ついで買いをするケースも多いのではないでしょうか?

このように、これまでに取り扱っていなかった商品カテゴリーを手がけるなど、別の業態からシェアを奪う戦略を「ラインロビング」といいます。

小売店がこれからの時代を生き抜くために欠かせない戦略とされているラインロビングの目的や重要性について、事例を交えながら考察していきます。

ラインロビングとは

ラインロビングとは、既存の商品カテゴリーに加えて新たな商品ラインを取り扱い、他社や他業態からシェアを奪う戦略のことです。なお、この言葉は「商品ライン(Line)」を「奪う(robinng)」に由来しています。

いまでは当たり前の光景になった「生鮮品や医薬品を取り扱うコンビニエンスストア」や「生鮮品を取り扱うドラッグストア」などは、ラインロビングの代表例です。

ラインロビングの目的

ラインロビングの目的は、競合店との差別化を図り、1人あたりの来店回数や購買単価を増やすことにあります。

たとえば、薬局やドラックストアでの取り扱い商品が医薬品に限定されている場合では、病気やケガの際に必要なものを求めている人にしか来店意欲を促せません。しかし、そこに生活用品や日配品、生鮮品など、これまで取り扱いがなかった商品群を加えることで、限定的だった客層の幅を広げられます。

ラインロビングでは単純に取り扱う商品群を増やすのではなく、商圏分析によって高い需要が見込める商品群に対して、低価格などの付加価値を与えて販売します。新たな価値を提供し競合との差別化を図り、1人あたりの来店回数や購買単価を増やしていくのです。

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ラインロビングが注目される背景

EC市場の拡大などの影響を受け、昨今では需要に対して店舗数が上回る「オーバーストア」が進んでいます。また、消費者人口に対して高齢者が占める割合が相対的に増加し、買い物時の移動距離が短縮傾向にあるなかで、来店を見込む地理的な範囲を狭めるリアル店舗の小商圏化も取りざたされています。

こうした背景があるなかで、特定の商品カテゴリーだけを展開しているままでは競合との差別化を図れないことはもちろん、利便性の面からも客足は遠のきかねません。

現代の購買行動を踏まえたうえで、生き残りを賭けた競争に勝ち抜いていくためにも、ラインロビング戦略の重要性が増してきているのです。

ラインロビングの使い方・事例

注目度の高まりを見せているものの、ラインロビング自体は特段新しい戦略というわけではなく、かねてからコンビニやドラッグストアを中心に導入が進んでいました。具体的な事例を確認していきましょう。

事例①コンビニエンスストア

小商圏化が進むコンビニエンスストアは、ラインロビングにおける代表的な成功事例です。

もともとは日用品雑貨や食料品を取り扱っていたコンビニエンスストアですが、ニーズの高まりやデジタル化の進行などの背景をキャッチアップし、宅配便の取り次ぎサービスや公共料金収納代行サービスを手がけるようになりました。

コンサートチケットやゲームソフトの販売、銀行サービスなど、デジタルとの親和性が高いサービスを広く展開するようになり、客数・店舗数をさらに増やし続けています。

事例②ドラッグストア

市販薬や美容品に留まらず、さまざまな商品カテゴリーを取り扱うドラッグストアは、「利便性の高い店舗」として今では確固たる地位を確立しています。

元来は医薬品のみを取り扱っていた薬局が、顧客数を増やすべく日用品や雑貨を置くようになったことから、ラインロビングの歴史が始まったともいわています。つまり「ドラッグストアの歴史=ラインロビングの歴史」でもあるのです。

ドラッグストアの攻勢はさらに続き、ペット用品、文房具、食品、生鮮品など、商品カテゴリーの幅を次々と拡張。新型コロナウイルス感染拡大の影響でさまざまな業態が売上を落とすなか、ドラッグストアの店舗数は右肩上がりとなっており、売上総額も年々最高額を更新しています。

まとめ

購買行動にあたり、高い利便性が優先されるようになった現代において、特定のカテゴリーのみに限定した商品ラインアップ戦略に活路を見出すのは困難です。店舗の小商圏化が進行するなか、ラインロビングは生き残りに欠かせない戦略として位置付けられるでしょう。

しかし、ただ商品カテゴリーを拡張するだけでは、施策の実効性は不十分です。POSデータなどを活用した商圏分析に取り組み、客層の幅の拡大効果を見込める商品カテゴリーの抽出から取り組んでいきましょう。

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