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お客様の声の効果的な集め方のポイントと
顧客レビューを活かす手順

お客様の声は、事業の現状把握や改善プラン策定の貴重なヒントとなるものです。顧客満足度の向上に役立つのはもちろんのこと、企業の今後の成長の推進力ともなりえます。

まさに宝の山ともいえるお客様の声を集める方法には複数のアプローチが考えられるため、ターゲット層などに応じて最適な方法を選択しましょう。

本記事では、お客様の声の集め方や活用方法を紹介。お客様の声の活用事例にも触れていきます。

お客様の声の集め方

お客様の声を集める方法として、次の4種類を考えてみましょう。

  • アンケート
  • モニター
  • インタビュー
  • SNSの投稿

なお、アンケートやモニターの活用の場合は、よほど時間がある、あるいは商品や企業のファンでなければ、「お客様の声の収集に協力しよう」というモチベーションは高まりません。多くの回答を集めるためには、プレゼントや割引クーポンといったインセンティブの設定が有効です。

また、お客様のリアルな声に触れるために、SNSの投稿にも目を向けてみましょう。耳の痛い意見もありますが、忖度のないレビューが集まりやすいです。

アンケート

質問を記載したアンケートへの回答をお願いし、お客様の声を集めていく方法です。

アンケートの実施にあたっては、次のようなアプローチが考えられます。

  • アンケート用紙と回収箱を店舗に設置する
  • お客様の住所・氏名がわかっている場合は、アンケート用紙を郵送する
  • お客様のメールアドレスが分かっている場合は、メールやWebフォームを送信する

アンケートの実施方法は、年齢層に応じて馴染みのある方法を選択するのがおすすめです。たとえば若年層の場合は、メールやWebフォームを活用する、年配の方がターゲットの場合は、はがきなどを活用して自宅まで郵送すると良いでしょう。

ここで注意すべきは、収集する個人情報の範囲です。匿名の場合は忌憚のない意見を得られる可能性が高まる一方で、氏名を記載するとなると、遠慮して本音を書いてもらえないことがあります。アンケートに記入を求める個人情報欄は、年齢や性別といった基礎的な属性情報に留めておくのがおすすめです。

また、突然送られてきたアンケートに答える人はそれほど多くありません。インセンティブを用意していたとしても、多くの声は集まらないことを前提として実施すべきでしょう。

しかし、これは裏を返せば「わざわざ回答してくれた人=コアなファン」とも捉えられます。優良顧客やロイヤルカスタマーは自社や商品に対してどのような感想を持っているのかを測るのに有効な手段とも評価できます。

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モニター

新商品や新サービスの発売前に、お客様の声を集めることはできません。そこで有効なのが、発売前の商品やサービスを提供し、使用感の感想を受けとる「モニター」の活用です。

モニターでは商品の感想を聞けるだけではなく、その声を活かして発売前の改善にフィードバックすることも可能です。モニターを実施するか否かで、発売後の売上にも影響が出てくるでしょう。

モニターの実施にあたっては、次のようなアプローチが考えられます。

  • 既存顧客に依頼する
  • Web広告などで募集する
  • 従業員の知人・友人に依頼する

モニターの場合は、商品・サービスの提供自体がインセンティブになります。あるいは「今だけ正規価格から○円OFFで試せる」といった割引を提供してもよいでしょう。

既存顧客への依頼はもっとも手軽なうえ、企業とのより深い関係性の構築にもつながります。一方、Web広告での募集や従業員の知人に依頼する方法は、モニター募集と同時に新規顧客へのアプローチとしても機能します。それぞれに異なるメリットがある施策です。

インタビュー

商品やサービスに対する感想を、既存顧客に電話や対面で直接聞く方法です。こちらも商品発売前であれば、「購入したいかどうか」「購入したくないと思った理由」などをヒアリングすることで、より良い商品開発に活かせるでしょう。

アンケートやモニターとは違い、インタビューのメリットは情報量の多さにあります。

人が1分間に書ける文字数は40~70文字程度とされていますが、話せる文字数は300文字程度にまで増加します。特にアンケートでは記入枠も決まっているため、獲得できる情報量はより少なくなる傾向です。

そのため、多くの情報の獲得を図るならインタビューがおすすめです。また、1対1のインタビューよりも座談会形式で複数人を招いて開催する方が、より多くの情報を得られるでしょう。

SNSの投稿

InstagramやYouTube、TwitterなどのSNSには、企業側から問いかけずとも日々何かしらの商品やサービスに対する口コミが投稿されています。

そのため、SNSでお客様の声を集める場合は、特にインセンティブを用意する必要はありません。企業側はSNSの検索機能を活用して、商品名やサービス名を入力するだけでお客様の声を手軽かつ迅速に収集できます。また、この方法では、競合商品やサービスに対する感想も獲得できます。

基本的に、投稿者側は企業に見られることを意識して投稿しているわけではありません。忖度のない意見を書き込んでいることが期待されます。リアルな声を集めたい場合は、SNSでのエゴサーチがもっともおすすめの方法です。

お客様の声の活かし方

お客様の声は集めることがゴールではありません。集めた声を集計して、分析した結果から傾向を把握しましょう。良い点はより良くなるように、そして悪い点は効果的な改善を図る。それが正しいお客様の声の活かし方です。

お客様の声を集計する

お客様の声を集計する方法はさまざまです。

集計方法 概要
単純集計 「はい」「いいえ」など、単純な基準で集計する方法。大まかな傾向把握に最適
クロス集計 属性と設問への回答をかけ合わせた集計方法。単純集計よりもさらに深い分析が可能
自由記述集計 数値、または文章で回答してもらったアンケートなどを集計する方法。数値の場合は平均値、中央値、標準偏差、最小値・最大値での分析が可能。文章の場合は回答を一覧化し、属性によって傾向を探るなどが可能

属性ごとに細分化した分析を行うのであれば、クロス集計が向いています。目的によって集計方法は異なるため、質問として用意する項目も変わってくるでしょう。

定量調査とは?定性調査との違いや調査方法・費用目安

集計・分析した結果から傾向を探る

集計・分析が完了したら、得られた結果からお客様が商品やサービスに対してどのような感想を抱いているのか、傾向を探っていきます。

商品に対して不満が多いのか、満足度が高いのかを調査するのはもちろんのこと、クロス集計の要領で年齢や性別、居住地など属性別の傾向まで深掘りしましょう。

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お客様の声から見つかった課題に対して対策を講じる

傾向を探るうちに、現時点における商品やサービスに対する課題が見えてきます。顕在化した課題に向き合い、どのような改善策を講じるべきか検討していきましょう。

なお、この点においてもお客様の声にヒントが隠れています。たとえばアンケートやモニターの自由記述欄や、SNSの投稿に、「○○という機能があった方が便利」「使用感をこうしてほしい」と記載されていることもあるでしょう。

これは、お客様が望んでいる改善策そのものです。参考にする価値は大いにあるでしょう。

お客様の声を集めるときのポイント

お客様の声を集めるにあたっては、コストや労力が発生します。やみくもに収集しても、お客様の声を効率的に拾えないどころか、少なくないリソースを無駄にしかねません。

効率よくお客様の声を集め、より良い商品開発・販売にフィードバックするためにも、インセンティブの設定とできるだけお客様の手間を省く工夫を施すことが大切です。

インセンティブの設定

回答してくれた人への特典として下記のようなインセンティブを設けると、回答率や参加率を高められます。

  • クーポンプレゼント
  • 商品の提供
  • 割引券 など

ただし、インセンティブとして提供する割引率や商品の価格は、適切に設定しなくてはいけません。

たとえばインセンティブを「80%OFFクーポンプレゼント」に設定する場合です。多くのお客様の声が集まることが予想できますが、回答者のなかには「80%も割引になるなら良いことを書こう」という心理が少なくない割合で介在します。これでは、お客様の声を通して商品やサービスの改善を図れません。

一方、インセンティブを低くしすぎると回答者が減る、あるいは内容の薄い回答が集まるといったことが懸念されます。

両者ともに参考にできる声が少なくなってしまうため、インセンティブは高すぎず、低すぎずの適切な設定が求められます。

手間や負担がなるべくかからない配慮

お客様の声の収集では、大なり小なりお客様側に手間が発生しています。たとえインセンティブが用意されていたとしても、お客様に協力する義務はないため、手間が大きくなればなるほど回答率や参加率は下がります。

そこで、次の点を意識してみましょう。

  • 簡単に答えられる質問に
  • 質問の内容は具体的に
  • ターゲットが回答しやすい方法を選ぶ

たとえば子どもがいる主婦をターゲットに設定する場合です。自分のことを後回しにするほど時間がなく忙しい日々を送っていることが多いので、1日のうちたった3分でも時間の捻出は難しくなります。素早く効率的に回答できるような設問を設計しましょう。

回答率・参加率を上げ、多くの人の声を集めるためには、ターゲットの背景を想像しながら、ターゲットが回答しやすい方法や質問内容を考えることが重要です。

お客様の声の活用事例

実際に、お客様の声を有効活用できている企業の事例を紹介します。

お客様の声はクレームとして捉えられてしまうケースもありますが、ここで紹介する企業では「お客様の声=貴重な意見」として受け止め、顧客満足度を高めていく重要なヒントとして活かしています。

テーマパーク・エンターテインメント企業の事例

世界中にテーマパークを展開する大手エンターテインメント企業では、園内で働いている従業員に寄せられたお客様のリアルな声を、日々のミーティングやイントラネットで共有する仕組みが設けられています。

改善が必要な意見に対して早急に対応するだけでなく、「待ち時間が長い」といった不満が多く寄せられている点は、心理学の活用や世界観作りを徹底することで解消を図っています。

お客様満足度98%という驚異的な数字をたたき出すベースには、こうしたお客様の声を活用した企業努力があると見られます。

ビールメーカーの事例

国内大手ビールメーカーでは、お客様の声を「指摘」と「声」に分類。指摘をもらった場合は、「すべてに優先する大切な業務」と「営業担当者の訪問」を原則に、迅速・適切に対応できる体制を構築しています。

さらに営業担当者は指摘に向き合う際の要点をまとめた手帳型の「お客様訪問時確認事項メモ」を携帯。「ご指摘対応事例集」「対応動画」「ケーススタディー」などのツールを全社員がいつでも利用できるように公開しており、対応力の向上を図っています。

一方、「声」に関しては、経営会議や各事業所で定期的に共有。経営会議では改善のヒントを見つけ出し、役員による判断および関係部署への指示出しに活かしています。そして各事業所においては「お客様視点」を徹底し、能動的に動くための意識改善に役立てています。

清涼飲料水メーカーの事例

アメリカに本拠地を置く清涼飲料水メーカーでは、寄せられたお客様の声を社内データベースで共有し、経営陣を含む全社員がイントラネット上で閲覧できる「お客様の声ポータル」を開設しています。

問い合わせや指摘に対応するだけでなく、貴重な意見として製品作りや事業活動に活かせるとして、月例レポートを通じて関係部署にも展開。お客様の声に応えられる体制を構築しています。

まとめ

お客様の声を有効活用し続ける仕組みができれば、企業の未来は明るいものになります。実効性の高いリアルな声を多く集められるよう、最適な収集方法を検討してみましょう。

また、お客様の声を集めること自体をゴールにしてはいけません。貴重なヒントを有効活用するためにも、まずはお客様の声を集める「目的」を明確にすることからはじめましょう。

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