
導入事例
DX構想の実現にスマートレシートは不可欠
株式会社東急ストア
ビジネスソリューション部
DX戦略課長 武井 裕文様
※所属は取材当時のものです

2021年にスマートレシートを導入した東急ストア様は、本稼働と同時に、東急グループの交通媒体やデジタル媒体を活用し、お客様の行動に合わせたプロモーションを展開。これにより、入会キャンペーンを成功へと導きました。駅近店舗が多い自社ならではの課題やお客様の潜在ニーズ、導入の経緯や成果、今後のDX構想の実現に向けたスマートレシートの活用について、お話を伺いました。
株式会社東急ストア

株式会社東急ストア
東急ストア、プレッセ、フードステーションの他、駅ナカ売店のtoksなどを幅広く展開。経営理念に「共存共栄」を掲げ、お客様と日々共に働くパートナー、双方の幸せへ貢献する。
店舗数:スーパーマーケット 90店舗、駅売店 26店舗、コンビニエンスストア 39店舗、ドラッグストア 8店舗、和洋菓子店 1店舗(2025年2月末現在)
本社所在地:東京都目黒区上目黒一丁目21番12号
設立:1956年10月10日
多くの人が捨てているレシート、なんとかならないか?
スマートレシート導入の経緯
きっかけの一つとなったのは、紙のレシートを減らせないか?という思いからでした。というのも、私たち東急ストアの店舗は、駅近のスーパーや駅ナカの売店が多く、電車利用や他の交通機関への乗り換えの際に数点だけ商品を買うお客様など、お急ぎの方にも多くご利用いただいております。その時に発行されるレシートはほとんど捨てられているという現場からの声がありました。当時は「SDGs」という言葉が普及し始めた頃でもあり、経費削減・環境配慮両方の観点から電子レシートの導入を検討し始めたのです。
東芝テック様とのお取引があり、以前より「当社(東芝テック社)における次の注目サービス」とご紹介いただいていたこともあり、スマートレシートの存在は元々知っていました。ちょうど社内のプロジェクトでデジタイゼーションを進めていた我々のニーズとも合致していたため、導入の決定に大きな迷いはありませんでした。

現場の意見を積極採用。
従業員は、接客スタッフであり、お客様でもある
導入時の工夫
まずは中目黒本店において、スマートレシートのテスト導入を実施。本社で働く社員と、店舗で働く社員・パート社員の皆さんにも使用していただきました。テスト後にアンケートを実施して発見があったのは、本社従業員と店舗従業員で、視点に大きな乖離があったことです。
本社従業員は、主に店舗運営上の視点で導入時に気を付けるべきことや改善点について考えていました。一方、店舗従業員は現場で接客をする側の視点と、自分がお客様になった時の視点、両方から意見を挙げてくれていました。これは面白い発見でした。とくにパート社員の方々の多くは店舗の近隣にお住まいで、ご自身が働く店舗のお客様になることもあります。両方の視点を持つ従業員の意見には説得力があり、本格導入までの留意ポイントとして積極的に意見・提案を採用しました。
特に配慮が必要だったのは、紙レシートをベースに設計していたルールの変更です。たとえば商品の返品や駐車券割引の対応などは、紙のレシートがあることを前提にルール設計がされています。それらを電子レシートではどのように対応するか、どう説明すれば店舗従業員も変更をイメージしやすいかなど、丁寧にルール変更を進めました。
東急グループの広告媒体を活用し、プロモーション展開
キャンペーンの活用
稼動直後のスマートレシート入会キャンペーンは、大々的に行いました。最初の集客が大切になると考えたからです。お客様のジャーニーに沿って施策を検討し、東急グループとして使用できるメディアも積極的に活用。東急線沿線での車内広告や駅貼りポスター、YouTubeや公式LINEなどのデジタル媒体も活用しました。
その後は各店舗が独自に地道な普及活動に取り組んでいます。従業員手作りのPOPやポスターなど、店舗での入会促進に継続的に取り組んでいるほか、メリハリをつけて定期的に入会キャンペーンを実施し、会員数向上を図る施策も行っています。直近では2025年1月から2月にかけてスマートレシートの新規入会キャンペーンを実施し、店舗でのチラシやデジタルサイネージ、公式LINEなどを活用しプロモーションを行いました。

365万枚分の経費と環境負荷の低減を実現
導入の成果①
現在、東急ストアのカード等と連携しているスマートレシートの会員数は約4万人、アクティブユーザー数は約95%です。当初目標KPIに掲げていた連携数やカバー率にはまだ足りていません。また、当社はオウンドアプリを持っていないため、アプリ連携経由でのユーザー獲得が実現できていません。今後、東急ストアのオウンドアプリの開発を予定しているため、アプリとの連携を行い、ユーザーの利便性を向上させることで、さらなる連携会員数の伸びを見込むことができると考えています。
一方で、当初の導入目的であった紙レシートの削減には大きな効果がありました。スマートレシートの加盟店ポータルサイトからデータを確認したところ、昨年1年間の電子レシート発行数は約365万枚。つまり、365万枚分の紙レシートが削減できたということになります。その分の経費や環境負荷の低減にも貢献しており、大きな可能性と期待を感じています。
*2025年2月末現在
「1秒でも早く」という潜在ニーズへ貢献することができる
導入の成果②
また、スマートレシートの導入で、お客様の潜在ニーズに応えることができたと感じています。さきほど少し触れたように、当社のお客様は、駅へ行くついでに1つ2つの商品を買っていく方も多くいらっしゃいます。なかには、電車の時間が迫って急いでいる方も。そういった方はレジでのやりとりが1秒でも短い方が嬉しいですよね。レシートの受け渡しがなくなるということは、決済時間短縮に寄与していると考えています。
スマートレシートの最大のメリットは、ユーザーが選択すれば誰もがサービスを利用し便益を享受できること。そしてユーザー側にデメリットが生じないことだと思います。入会にお金を払う必要もないですし、もちろんサービスを利用しないという選択もできる。お客様のニーズが多様化するなかで、ユーザー側が判断し、選択できるという利用ハードルの低さは、企業側の導入ハードルの低さにもつながっているのではないでしょうか。

レシート削減にとどまらず、DX構想実現に不可欠な存在
今後の取り組みについて
スマートレシート導入について、「レシートが電子化されて便利になった!」とお客様から嬉しい声をいただく一方で、「レシートは電子化されたのに、レシートクーポンはまだ紙なの?」というご指摘もいただきます。そういったお声に応えていくことは、直近の私たちの課題です。
中長期的に取り組んでいるのは、東急ストア内にあるデジタルトランスフォーメーション(DX)構想の実現です。先ほど挙げたオウンドアプリの開発もその一環。DX構想を形にしていくにあたり、お客様との接点の一つであるスマートレシートの存在が不可欠なのは間違いないでしょう。東芝テック様と今後も連携しながら、より多くの方との共存共栄を目指していきます。
