RFIDで在庫管理革命!
工場・倉庫の現場効率が劇的アップ
2025年11月27日
コラム
■業種・業態:製造業/物流業・倉庫業
■キーワード:RFID/在庫管理/棚卸/効率化
この記事のポイント
- RFID在庫管理は棚卸時間を大幅に短縮し、在庫精度を向上させる技術です
- バーコードと異なり、非接触で一度に多数のタグを読み取れるため、大量在庫の管理に最適です
- 製造業では入出庫の高速化、小売業では棚卸効率化と顧客体験向上に貢献します
- 導入成功のカギは、スモールスタートと現場を巻き込んだ業務フロー再設計にあります
導入(概要)
なぜ今「RFID在庫管理」なのか
製造業や小売業の現場では在庫管理の課題が年々深刻化しています。人手不足による作業負担の増加、EC需要拡大に伴う出荷量の急増、サプライチェーン全体での在庫可視化の要求、従来のバーコードやハンディターミナルによる管理では限界が見えてきました。
RFID技術を活用した在庫管理はこれらの課題を根本から解決する手段として注目されています。経済産業省が推進する「IoT等を活用したサプライチェーンのスマート化」やアパレル業界での急速な普及により、RFタグのコストは年々低下し導入のハードルは確実に下がっています。
製造・小売の共通課題とRFIDの解決アプローチ
製造現場では部品や仕掛品の所在把握に多くの時間を費やし、棚卸作業で出荷を止めざるを得ない状況があります。EC倉庫や小売店舗では在庫データと実在庫の不一致により欠品による販売機会損失や過剰在庫が発生しています。
RFIDは「非接触」「一括読み取り」「リアルタイム性」という3つの特長でこれらの課題を解決します。タグを貼付した商品は箱に入ったまま数メートル離れた場所からでも瞬時に識別でき、在庫確認作業の大幅な時間短縮や在庫精度の向上を実現します。
RFID在庫管理とは何か?
RFタグ/リーダー/システムの基本構成
RFID在庫管理システムは「RFタグ」「リーダー/アンテナ」「管理システム」の3つで構成されます。
RFタグはICチップとアンテナを内蔵した小型ラベルで商品や資材に貼付します。固有のID情報を記録し商品情報と紐付けることで個体識別が可能です。在庫管理では低コストで運用できるパッシブタグ(電池不要)が主流です。
リーダーとアンテナは電波を発信してタグからID情報を読み取る装置です。ハンディ型、ゲート型、天井設置型など用途に応じた形状があり、一般的なUHF帯(920MHz帯)では数メートルの距離から一度に数百枚のタグを読み取れます。管理システムは読み取った情報を在庫データとして記録・管理しWMS(倉庫管理システム)やERP(統合基幹業務システム)と連携します。
バーコードとの違い(非接触・一括読み取り・見える化)
バーコードとRFIDの最大の違いは「非接触」と「一括読み取り」です。バーコードは1枚ずつスキャンが必要ですが、RFIDは段ボール箱の中や重なった商品でも一括で読み取れます。100個入りの段ボールなら箱を開けずに数秒で全数確認が完了します。
また固定式リーダーを設置すれば商品がいつどこを通過したかを自動記録でき、倉庫内での動線追跡や滞留在庫の早期発見が可能です。
RFID導入で期待できる在庫管理のメリット
棚卸作業の時間短縮
棚卸作業の効率化はRFID導入で最も劇的な効果が現れる領域です。例えばアパレル倉庫ではハンディリーダーを用い、棚を歩いて読み取るだけで短時間に全在庫の棚卸が完了し、作業負荷を大幅に軽減することが可能です。タグの一括読み取り性能により、商品を手に取る必要がなく、作業時間が大幅に短縮されます。
さらに、作業負荷が軽減されることで棚卸頻度を年2回から月1回、週1回に増やすことができ、在庫データの鮮度が保たれます。
在庫データの精度向上とリアルタイム化
従来の手作業による在庫管理では入力ミスや記録漏れにより帳簿在庫と実在庫にずれが生じていました。RFIDでは商品の移動と同時にデータが更新されるため、人為的ミスが大幅に削減され高い在庫精度を維持できます。
固定式リーダーを要所に設置することで商品がエリア間を移動するたびに自動記録され「今どこに何があるか」が常に把握できます。
作業ミスの削減・安全性向上
ゲート型リーダーを通過するだけで自動的に全数チェックされるため、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。ある電子部品メーカーでは出荷ゲートでの自動照合により誤出荷率が大幅に低減し、顧客クレームが激減したという事例があります。
また、高所在庫の確認に脚立が不要になり、重量物を動かす必要もないため、落下事故のリスクや作業者の身体的負担が軽減されます。
商品の動線追跡とトレーサビリティ強化
RFタグの固有IDにより個品レベルでの追跡が可能です。食品業界では賞味期限管理と組み合わせた先入先出の徹底、製造業では製造ロット番号との紐付けによる迅速なリコール対応が実現できます。
固定式リーダーで記録された商品の動線データを分析することで、レイアウトの最適化や頻出商品の配置見直しも可能です。
製造業の現場で進むRFID在庫管理の活用例
入出庫・検品の高速化
自動車部品工場などでは、入荷検品時にパレットをリーダーの下に通過させるだけで多数の部品を一括読み取りし、入庫処理が完了します。作業時間が大幅に短縮され、少人数での運用が可能になります。出庫時もハンディリーダーでピッキングミスを防止し出庫ゲートで自動照合することで誤った部品が生産ラインに渡されることを防ぎます。
ただし金属部品が多い環境ではタグの取り付け位置に工夫が必要です。金属対応タグの使用や非金属部分へのタグ貼付、スペーサーの挿入などの対策が有効です。実際の現場では取り付け角度や位置を調整しながら最適なポイントを見つけることで高い読取率を実現した事例もあります。
棚卸・在庫確認の省力化
電子機器メーカーなどでは、ハンディリーダーで棚ごとに読み取るだけで、帳簿在庫との差異が即座に表示されます。差異がある場合のみ再確認を行うため全数を手作業で確認する必要がありません。
在庫情報のリアルタイム連携
在庫情報をERPや生産管理システムとリアルタイム連携することで経営判断の迅速化が可能です。ただしリアルタイム連携とバッチ処理の使い分けが重要でシステム負荷を考慮した設計が必要です。
また導入前に商品コードの重複や欠番、品名の表記ゆれを整理するマスタデータ整備も不可欠です。
倉庫・小売業で進むRFID在庫管理の活用例
大量在庫の一括スキャンで棚卸効率化
アパレル物流センターなどでは、ハンディリーダーで棚を順番にスキャンするだけで、短時間に全在庫の棚卸が完了します。通常業務と並行して実施できるため出荷を止める必要がありません。
密集陳列された商品では、読み取り速度を調整したり角度を変えながら複数回スキャンしたりする工夫が有効です。
入荷検品・出荷確認の自動化とミス防止
EC倉庫などでは、段ボール箱を開封せずに中身を確認できることが大きなメリットです。RFIDゲートを通過させるだけで中身を一括読み取りし納品書データと自動照合します。
商品へのタグ貼付は入荷時に行う方法とメーカー出荷時に行う方法があります。入荷時貼付は倉庫での作業負荷が増えますが、タグ管理を自社でコントロールできます。
店舗業務の省力化と新たな購買体験
アパレルショップなどでは、レジでRFIDを活用することで複数商品を一括スキャンでき、会計時間が短縮されます。店頭在庫の可視化により欠品の早期発見やバックヤードからの補充タイミング最適化が可能です。
さらに試着室にRFIDリーダーを設置し、持ち込んだ商品を自動認識してディスプレイに商品情報や関連商品を表示するシステムなど、新しい購買体験の提供も始まっています。
RFID在庫管理を成功させる実践ポイント
導入目的と効果指標(KPI)を明確にする
RFID導入プロジェクトの第一歩は「何のために導入するのか」を明確にすることです。棚卸時間の短縮、在庫精度の向上、誤出荷の削減など目的が曖昧なまま進めると期待した効果が得られません。
具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定し導入効果を客観的に測定できるようにします。
対象商品・業務範囲の選定とスモールスタート
RFID導入はいきなり全社展開するのではなく、1つの倉庫または1つの商品カテゴリに絞って導入し、効果を検証してから横展開する方がリスクを抑えられます。対象商品は「タグ貼付が容易」「在庫回転率が高い」「課題が明確」といった条件を満たすものから始めるとよいでしょう。
業務範囲も最初は「入荷検品」のみまたは「棚卸」のみに限定し運用が安定してから拡大する方法が推奨されます。
環境に適したタグ/機器選定と電波設計
タグ選定では対象物の材質を考慮します。非金属製品なら汎用パッシブタグで問題ありませんが金属製品や液体を含む商品では金属対応タグや特殊設計タグが必要です。
電波設計ではアンテナの設置位置や角度、出力レベルの調整が必要です。金属棚が多い倉庫ではアンテナの向きを調整したり複数アンテナを組み合わせたりして読取エリアを最適化します。
業務フローの再設計と現場教育・運用ルール
RFID導入は機器設置だけでは効果が出ません。業務フロー全体を見直し、RFIDを活かした新しい作業手順を設計する必要があります。例外処理(読取エラーや数量不一致)の対応手順も明確にしておきます。
現場教育も導入成功の鍵です。長年バーコード運用に慣れたベテラン作業員にとって、新システムへの切り替えは大きな負担です。導入目的を丁寧に説明しメリットを実感してもらうことが重要です。
もちろん運用ルールの策定も欠かせません。タグの貼付位置や貼付タイミング、読取エラー時の対応手順などを明文化し作業者全員が同じ基準で作業できるようにします。
既存WMS・ERP・OMSとのデータ連携
既存のWMS、ERPとのシームレスな連携が不可欠です。RFIDで読み取ったタグIDを既存システムの商品コードと紐付けるマスタデータの整備が必要で、商品コードの重複や欠番、品名の表記ゆれを事前に整理しておく必要があります。
連携方式はシステム間連携(API連携)、ファイル連携、データベース直接連携など複数の選択肢があります。システム間連携やデータベース直接連携はリアルタイム性に優れていますが、システム負荷を考慮するとバッチ処理の方が安定する場合もあります。
東芝テックのRFIDトータルソリューション紹介
東芝テックはRFタグの発行から読み取り、データ管理まで在庫管理に必要なすべての機能を一貫して提供するRFIDトータルソリューションを展開しています。
特に注目すべきは「A3カラープリンターRFIDソリューション」です。A3カラープリンターにRFIDライター機能を搭載し、カラーラベルとRFタグを同時に発行できるため、既存帳票の運用を変えずにRFID対応を可能とします。詳しくは「A3カラープリンターRFIDソリューション」をご覧ください。
東芝テックはタグプリンターだけでなくハンディリーダーや固定式リーダー、ゲート型リーダーなど多様なRFID機器を提供しています。在庫管理ソフトウェアや既存システムとの連携ミドルウェアも含めた統合ソリューションを提案できるためお客様の業務要件に最適なシステムを構築できます。
お問い合わせ
RFID在庫管理の導入をご検討の際はぜひ東芝テックにご相談ください。お客様の業種や課題に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。
在庫管理の効率化、棚卸作業の負担軽減、誤出荷の削減などどのような課題でもご相談いただけます。経験豊富な専門スタッフが導入前の現場調査から、最適なシステム構成のご提案まで丁寧にサポートいたします。
詳しくは「東芝テックのRFIDトータルソリューション | 高性能なRFIDテクノロジーの導入」をご覧ください。
※当記事は2025年11月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

