世界が評価した「使われ方」のデザイン──東芝テックが見つめる、これからの店舗体験

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店舗でレシートプリンタを意識したことはあるでしょうか。 おそらく、多くの人はありません。 しかし東芝テックは、その「意識せずとも自然に会計を終えられること」にこそ価値があると考えています。 POSシステムは小売業の基幹システムというべきITインフラ。しかしそれは同時に店舗体験の一部となる大切な消費者接点でもあります。店舗空間に自然に溶け込み、店舗スタッフも消費者自身も直感的に使え、チェックアウト体験を妨げない。そんな「店舗空間への自然な調和と、スムーズなチェックアウト体験の実現」を追求したレシートプリンタ「TR-QT3(FLEXPrint)」は、2025年度グッドデザイン賞、iF Design Award 2026を受賞しました。 評価されたのは、造形美だけではありません。人手不足やセルフサービス化が進む中、店舗体験の未来を考え続ける東芝テックならではのデザイン思想でした。 受賞の先にあるものは何か。TR-QT3の開発ストーリーとともに、その思想に迫ります。

目指したのは、これからのレシートプリンタ

笑みを浮かべながら説明する河田氏
東芝テック株式会社 プロダクト・プランニング&クリエーションセンター デザイン室 エキスパート 河田 賢人氏

「レシートプリンタ」とは、小売店などの店頭でレシートを発行する業務用プリンタです。当社でも長年にわたり扱ってきた製品ですが、フルモデルチェンジとなる新製品の開発を行うプロジェクト─TR-QT3に至る挑戦─が始まったのは、2023年の秋のことでした。

製品刷新の背景について、プロダクトデザインを手がけた河田氏は次のように振り返ります。

「レシートプリンタが使用される環境が、大きく変わってきていたんです。人手不足等の課題から、店舗業務の省力化、中でもセルフレジの普及が進み、消費者が自分で端末を操作することが当たり前になってきました。かつてと比べて、多くの人の目に入る存在になったという言い方もできますね。一方で店舗スタッフがPOS端末操作する形態も依然広く利用されており、さまざまなシーンで異なる使われ方をする機器になっていました」

こうした時代の変化を踏まえ、「これからのチェックアウト体験に求められるレシートプリンタとは何か」という問いからプロジェクトはスタートします。プロジェクトメンバーが打ち出したコンセプトをもとに、その姿を描き出す役割を担ったのが河田氏たちデザイン室でした。

デザイン室、それはユーザー体験を追求するプロフェッショナル集団

「どこかの店に新しいレジが入ったと聞くと、それが当社製品であってもなくても、とりあえず見にいきます。どのような置かれ方や使われ方をしているか気になるので」と笑う河田氏。

東芝テックのデザイン室に昔から共通するのは、「まず現場を見る」という姿勢です。

新しい店舗ができたと聞けば足を運び、他社の端末も実際に利用する。チェックアウト時にお客様がどこに迷い、スタッフがどこで負担を感じているのかを観察する。そうした地道な積み重ねは、国内トップシェアを持つPOSメーカーとして長年培ってきた東芝テックの財産でもあります。

「使われ方」が導き出すデザイン

製品に触れる河田氏

TR-QT3の開発は、「どんな形にするか」から始まったわけではありません。先にあったのは、「これからの店舗でどう使われるべきか」という問いでした。セルフレジ利用者の増加、慢性的な人手不足、多様化する店舗業態。東芝テックは長年にわたり全国の売場でこうした変化を見続けてきました。その経験から見えてきたのは、レシートプリンタもまた、従来とは異なる役割を求められ始めているという事実です。

デザイン室は、その変化を形にする役割を担いました。

こだわり その1:店舗に馴染むシンプルさの追求──アイコンのような角丸キューブ

多くの人が目にする機器であることを踏まえて、角を丸めて柔らかく、様々な店舗になじむシンプルさを表現しました。特に難しかったのは用紙補給時に開閉するヒンジ部分。初期の設計構造では部品と部品の間に段差ができてしまうところを、設計担当とデザイン担当とでヒンジとカバーの構造を工夫したことで、角の丸みをもちながらシームレスにつながるデザインを実現しました。

製品の特長「アイコンのような角丸キューブ」

こだわり その2:隠された視認性の工夫──自然に目が行くレシート排出口

レシート排出口は、キューブの表面を走るスリットのようなデザインに。シンプルな美しさを阻害しないための工夫です。また、製品表面のほとんどはマット加工を施していますが、排出口のスリット部分のみ艶出し加工。初めて使う人でも自然とそこに目が行き、スムーズにレシートを受け取れます。

ハードウェアのアップ画像。

こだわり その3:異なる目的を両立する知恵──押しやすく目立たないオープンボタン

レシート用紙のロールを補充する際、筐体を開けるために押すボタンは、指の形に合わせた押しやすいくぼみのある形状に。また、レシート排出口のスリットに沿って一直線にくぼみをつなげてボタンをさりげなくなじませ、その存在が消費者の方の意識にのぼらない=うっかり押してしまわないよう工夫しました。

ハードウェアのボタンを押す河田氏

他にも、店舗のテイストによって選べる白と黒の2色展開や、細かいところでは蓋が中空で留まるほどよいヒンジの固さ(レシート交換の際に手を挟まないようにする工夫)など、こだわりを挙げていけばきりがありません。これらの細かな追求のすべてが、多くの方の快適なチェックアウト体験を提供することにつながると信じています。

東芝テックらしい「丁寧なデザイン」を、これからも

グッドデザイン賞、そしてiF Design Award 2026はともに権威ある賞であり、その審査員にTR-QT3が認められたことは本当に光栄なことだと河田氏は振り返ります。

「会社としては受賞歴がありましたが、私にとっては初めての受賞でしたから、ありがたいな、うれしいなというのが率直な感想でした。特に心に残ったのは、現場の運用想定など、デザインの丁寧さを評価いただいたことです。多様なユーザーを想定して、考えられる限りの課題に一つ一つ向き合っていく──そんな東芝テックらしいものづくりの本質を言い当ててもらったような気がして、感動しましたね」

グッドデザイン賞、iF Design Award 2026 授賞式での様子
グッドデザイン賞2025のロゴマーク
iF Design Award 2026 のロゴマーク

さらに、製品の機能を含めて評価されていた点も印象に残っていると語る河田氏。「従来製品比で約1.3倍の印字速度など、TR-QT3は機能面においても大きく進化を遂げました。そういった製品の形状に現れていない要素も、『デザイン』の一環と認めていただけたわけです。ユーザー体験の総合的なデザインを目指してきた私たちの姿勢は、間違っていなかった。そのことを再確認できたのも、大きな収穫だったと思っています」

国内外のデザイン賞受賞という大きな栄誉。その喜びとともに改めて見えてきたのは、東芝テックのデザイン室が大切にしてきた価値観でした。それはむしろ、華やかに脚光を浴びたり、注目されたりすることとは真逆の価値観です。会計をするとき、POS端末やレシートプリンタのデザインに目を止める人はほとんどいないでしょう。ストレスなく買い物を終えられた時ほど、印象には残りません。それこそが、当社製品のあるべき姿。誰もが快適に買い物を終えられる。

その当たり前を実現するために、東芝テックは何十年にもわたって売場と向き合い続けてきました。

TR-QT3に込められているのは、優れた造形や意匠だけではありません。変化する時代の店舗体験に向き合い、多様なユーザーにとって心地よいチェックアウト体験を追求してきた試行錯誤の積み重ねです。

デザインとは見た目を整えることではなく、より良い体験を実現すること。

その考え方こそが、TR-QT3の開発を支えていました。

製品を手に持ち説明する河田氏。

近年は商品企画部門とともにコンセプト設計の段階からプロジェクトに参画する機会も増えています。それは、変わりゆく時代や買い物シーンに寄り添ったものづくりに、より上流から関われるようになったということ。商品企画や設計など各部署との連携をさらに深めながら、新しい技術も柔軟に取り入れ、一人ひとりのユーザーにとって自然で快適な「使われ方」をこれからも追求していきます。現場で培った知見を、つぎの時代の新しい価値へ。東芝テックの挑戦はこれからも続きます。

【関連リリース】

レシートプリンタ「TR-QT3」(FLEXPrint)が2025年度グッドデザイン賞を受賞

レシートプリンタ「TR-QT3」(FLEXPrint)および「TRST-P4」が iF Design Award 2026を受賞

※(出典)Global EPOS and Self-Checkout 2026, Datos Insights 2025年「TOSHIBA」及び「東芝テック」のEPOS及びセルフレジの導入ベースシェア

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