作る、運ぶ、保管する、売る──データで全てをつなぐRFIDサービスの"進化"と"真価"

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衣料品の量販店で、かごの中に入れた全商品を一瞬で読み取ってくれる不思議なレジ台を使ったことはないでしょうか? 本記事は、その仕組みを支えている「RFID」のお話です。 一つ一つバーコードをかざす必要がない、ちょっと便利な買い物体験。それもたしかに魅力ではありますが、RFIDの可能性はもっと幅広く壮大なもの。 20年以上にわたりこの技術と向き合ってきた東芝テックの歩みと、新時代に見えてきたさらなる躍進のチャンスについてご紹介します。

学生時代に出会い、魅せられたRFIDとともに

RFIDとは「Radio Frequency Identification/無線周波数識別」の略称。「RFタグ」と呼ばれる情報媒体のデータを読み取ったり、書き換えたりする技術です。RFタグにはICチップとアンテナが内蔵されていて、電波を使った非接触検知が可能。間に障害物があっても、向きがばらばらでも、タグが複数あっても一括で読み取れるのがバーコードにない強みです。冒頭の「かごの中の全商品を瞬時に読み取るレジ」は、これらの特性によって成り立っています。

多様なRFIDタグの画像
RFタグ

現在、東芝テックでRFID事業の推進に携わっているのが西橋蘭氏。大学時代にこの技術の魅力に触れて専攻し、その活用や普及に携われる仕事を探している中で入社することになった筋金入りのエキスパートです。

「当社がRFIDを手がけるようになったのは2002年頃で、最初は大手百貨店の在庫管理に活用する目的だったと聞いています。私が入社した2005年頃には、回転寿司の皿にRFタグをつけて、鮮度管理や会計に活用するプロジェクトが進行していました。事業としてはまだまだ黎明期で、地道に実績を積み上げていた時期ですね」

笑みを浮かべながら説明する西橋氏
東芝テック株式会社 プロダクト・プランニング&クリエーションセンター ハードウェア商品部 リテール&ロジスティクス商品企画室 エキスパート 西橋 蘭氏

ハードとソフト、そしてタグ。“三位一体”確立へ

当時の当社が手がけていたのは、もっぱらハードの開発。POSレジ事業で培ってきた技術で、RFタグを発行するプリンタや、タグを読み取るハンドリーダーを相次いで上市していきました。しかし、それらを使っていただくお客様の声を聞いているうちに、ただモノをつくって提供しているだけでは限界があることも分かってきます。RFタグのデータを扱う情報管理システム(ソフトウェア)についても、既存のものでは現場の細かなニーズをカバーしきれません。ならば、自社で作るしかない。ソフトウェア開発担当と連携し、東芝テックだからできるRFID用システムの開発がスタートしました。

「私たちは当社製品を導入いただくお客様の店舗や倉庫に赴き、棚卸や出荷などの作業を体験させていただくようにしているんです。そうすることで、資料を読んだりお話を聞くだけではわからない、リアルな課題を体で実感できる。ソフトウェア開発においても、そうして得た知見を共有しながら、機能に反映させていきました。なるべく多くのお客様にとって使い勝手の良いものを目指しつつ、対応できるようシステムをカスタマイズできるようになったのも、自社開発ならではの強みですね」

加えて、RFタグそのものも、利用目的によって最適化する必要があることが見えてきます。タグの大きさや素材、取り付ける位置などが変わると、影響を及ぼすことが分かってきたのです。

多様なRFIDタグの画像
多様なRFタグ

「あるアパレルメーカー様は、ブランドのテーマカラーである黒色の値札にRFタグを貼り付けていました。しかし、どうも反応が悪い。サンプルをお預かりして社内の専門部門で値札の素材を分析したところ、黒を出すためのカーボン系の素材が電波に干渉し、RFタグの読取性能を低下させていることが判明したのです。すぐに別の素材を検討いただき解決しましたが、やはり私たちからご提案するなら最初から避けたい事態。研究を重ね、タグ製造の専門企業とのネットワークを築いて、最適なRFタグの選定から運用方法まで責任を持てる体制を整えていきました」と西橋氏は振り返ります。

ハード、ソフト、そしてタグを三位一体で提供できるRFIDサービスの土台は、このような歩みの中で整えられていきました。

お客様とのたゆまぬ挑戦がもたらした“進化”

当社のRFIDサービスは三位一体体制の確立後も、さらに多くの多様なお客様との挑戦を重ねながら、さらなる進化を遂げていきます。

西橋氏の印象に強く残っているのは、大手アパレル様と挑んだ物流センターの検品効率化の取り組みだと言います。

「ベルトコンベアで流れる段ボール箱を開封せず、そのまま中身の商品を検品できるようにする、RFIDの得意分野ともいえるプロジェクトでした。データ読み取り用のゲートを手作りしてセンターに持ち込み、『この角度だと後ろの箱まで読み取ってしまう』『ベルトコンベアに使われている金属の影響でうまく作動しない』など、お客様と一緒に試行錯誤しながら実用に足るゲートを作り上げていったのです。なかなかに泥臭いプロセスでしたが、物流現場におけるRFIDソリューションの可能性を大きく広げることにつながりました」

また福井県立恐竜博物館のミュージアムショップでの取り組みも、ユニークな事例です。夏休みなどの繁忙期とそれ以外の時期で来客数が大きく変わる中、取引先と連携したRFタグ運用とRFIDを活用したセルフレジを組み合わせることで、繁閑差に対応しながら限られた人員でも効率的な店舗運営を実現しています。

大手アパレル様との取り組みで開発したRFID読取ゲートの図
大手アパレル様との取り組みで開発したRFID読取ゲート
RFIDセルフレジの画像
福井県立恐竜博物館ミュージアムショップのRFIDセルフレジ

他にも数々の挑戦がありましたが、そのいずれにおいても、当社はお客様とともに現場の課題に向き合い、その解決に知恵を絞ってきました。2025年からは某アパレル大手様の約1,100店舗でのRFID棚卸システムの本格導入が始まりましたが、これもまた長い試行錯誤と伴走の歴史を経て実現した成果だと西橋氏は語ります。

「業務効率向上を目指して、RFIDの検討を始めたのは10年以上前のことです。当社にお声がけをいただき、静岡事業所(大仁)の電波暗室でRFタグの読み取り実験を実施。さまざまな制約から進行を見合わせていた時期もありましたが、その間にもRFIDのハードやソフトは進化し、同社の課題解決に貢献できる体制が整ってきました。助走の期間が長かった分、導入が実現したときは感慨深かったですね」

RFIDの導入により、棚卸作業はバックヤードの棚や店頭のハンガーラックにリーダーをかざすだけの作業となり、かかる時間はおよそ10分の1に。店舗のスタッフからは「これまでの棚卸は何だったのか」「もう元には戻れない」という声が寄せられています。何より大きな成果は、空いた時間を丁寧な接客に回すことができ、サービス品質と顧客満足の向上につなげられていること。技術を提供する側として、こんなに嬉しいことはないと西橋氏は目を細めます。

RFIDシステムによる棚卸の様子
お客様に導入いただいたRFIDシステムによる棚卸の様子

AI時代の到来がもたらす、RFIDの“真価”

数々の現場に大きな効率化をもたらしてきたRFIDサービス。しかし、その役割は、作業を速くすることだけにとどまりません。一つ一つの製品に固有のIDを持たせることで、製造、輸送、保管、販売まで、その製品が「いつ、どう動き、どこにあるのか」を正確に記録できるという大きな特徴。そこで蓄積される情報は、物流網の改善や在庫ロスの削減、トラブル発生時の迅速な商品回収など、流通全体をより良くするための手がかりになりえます。

「すでに導入が進んでいるアパレル業界でも、店舗の棚や試着室にアンテナを設置することで、『商品が手に取られた』『鏡の前で合わせた』『そのまま棚に戻された』といった売れる前の動きを自動的に取得できます。こうしたデータには、本来、非常に大きな価値があるはずなのです」

商品が売れたという結果だけでなく、そこに至るまでの動きも捉えられるRFID。これまで、その膨大な情報を十分に生かすことは容易ではありませんでした。しかし、AIをはじめとする分析技術の発展によって、データの中から傾向を見つけ、需要予測や在庫配置、商品提案などの判断につなげられる環境が整いつつあります。長く技術的には可能だった「データですべてをつなぐ」という構想が、いよいよ現実の価値へ変わろうとしているのです。

RFIDハンドリーダーUF-3000の画像
RFIDの幅広い可能性に触れられる体験・体感・検証ルーム「TEC UX Lab」の画像

「タグのさらなるコストダウンを始め、普及に向けて越えるべき課題は少なくありません。それでも、世界のRFID市場は大きく成長を続けており、新しい活用も次々と生まれています。当社には、20年以上にわたって積み上げてきた技術と知見があり、お客様の現場で一緒に答えを探してきた経験もある。それらを生かして、これまで見えなかった商品の動きを、より良い商流や買い物体験につなげていきたいですね」

RFIDハンドリーダーUF-3000を手にする西橋氏。

西橋氏が見据えるのは、遠い未来の夢ではありません。お客様と一つずつ課題を解き、可能性を形にしてきた東芝テックだからこそ踏み出せる、次なる確かな一歩です。

Toshiba Tec Group Philosophy Creating with You ともにつくる、つぎをつくる