スーパーマーケットにおける価格政策と商品構成の考え方
国内外流通トピックス
価格は、お客様にとって商品を購入する際の選ぶ基準として非常に重要な要素です。
まったくの同一商品で品質が同じであれば、誰もが安い方を選ぶはずです。
スーパーマーケット(以下、スーパー)の商品の売価は、お客様が買いたくなる価格であるべきで、商品の原価に関係ないと考えるべきです。
しかし、かつてメーカーの力が小売業に対して圧倒的に強かった時代は、店舗ではメーカー側が設定した「定価」で販売するのが一般的だったのです。
この大きな壁は、メーカーと小売業の攻防の歴史の中で崩れました。
それを切り拓いたのが「良い品をどんどん安く、より豊かな社会を」との経営理念の下に、日本の流通革命の旗手として「価格破壊」を推し進めた当時のA社の創業者であったことは有名です。
今回は、スーパーの価格に関する基本的な考え方をご紹介します。
店舗における売価の設定
はじめに、商品構成グラフをもとに価格に関する用語を説明します。
商品構成グラフとは、商品ごとに、横軸に価格、縦軸に陳列量やフェース数、またはSKU数を取りグラフ化したものです。
売場の設計図の元ともなり、店舗(自店・競合)分析における基本的な手法で、価格の傾向や店舗全体のプライスポイント、プライスレンジ、プライスゾーンが把握でき、自店の売価構成(価格戦略)の決定や競合店対策に活用します。
①プライスライン
個々の商品の売価(帯)のことです。図表の食パンの例では、5つのプライスラインがあることが分かります。
②プライスポイント
ある商品群や店舗全体の中で、最も陳列量やSKU数が多い、売価を指します。食パンの例では、148円の売価がプライスポイントとなります。
③プライスゾーン
ある商品群や店舗全体の中での売価の上限と下限の幅のことです。これを次のプライスレンジという場合もあります。
④プライスレンジ
プライスゾーンの中で、最も陳列量やSKU数が多い価格帯を指します。競合店対策においては、他店のプライスレンジがどこにあるか(上か下か)やその幅(狭いか広いか)などが、競合対策の重要な検討材料となります。一般的には、お客様にとって、プライスゾーンが狭く、プライスポイントが少ない方が商品を選びやすく、買物がしやすいと言われていますが、店舗の規模や品揃え政策によって異なります。
また、同じ商品を同じ価格帯で品揃えしていても、プライスポイントをどこに設定するかによって、お客様の割安感と割高感の感じ方に大きな差が出ることとなり、値頃感を出して、販売を促進するためにはプライスポイントの設定が重要な鍵を握ります。
⑤値頃
上記の4つ以外で、よく耳にする言葉に値頃があります。多くのお客様が「この値段なら買っても良い」と感じる価格設定のことです。単に安いだけでなく、品質や味、品揃え、立地なども考慮して、お客様が納得できる価格であることが必要です。
一般的に使われる価格の種類
次に価格の種類について説明しましょう。
①希望小売価格(参考売価)
メーカーが小売業に対して「これくらいで売ってほしい」と希望する価格のことです。ただし小売業側は、これに従う必要はなく、自由に価格を設定できます。一般的には、その商品の品質などが適正に反映されている価格であるため、お客様にとって、商品の水準を判断する基準として役に立ちます。
②オープン価格
メーカーが希望小売価格を設定せず、小売業が市場の動向や競合状況に応じて、自由に売価を設定することです。希望小売価格からの大幅な値引きが常態化したことで、設けられた価格制度で、現在はこの価格による商品も増えています。
③定価
商品をメーカーが決めた価格で、一律に売ることが義務付けられた価格です。現在は、独占禁止法により、書籍や雑誌、CDなど一部の商品を除き、メーカーが小売店に対して定価販売を強制することは禁止されています。
スーパーの価格戦略
店舗の価格戦略は、大きくハイ&ローとEDLP(Everyday Low Price:毎日低価格)の2つがあり、ハイ&ローの中で特に集客を目的に採算を度外視して、特定の商品に極めて安い価格を設定するロス・リーダーが使われることもあり、通常、スーパーはこれらを組み合わせて価格を戦略的に操作します。
ハイ&ローとは、ハイ&ロープライシングの略で、特定商品を販売する価格政策です。
同じ商品の価格が日や時間によって高低することから、ハイ&ローと呼ばれます。
多くのスーパーが採用している特売を使った最も一般的な価格政策で、価格の変動によって集客します。
時には特売チラシなどで原価割れも辞さない「目玉商品(ロスリーダー)」で集客を図ることもあります。
【メリット】
①集客を促進し、来店したお客様に、通常価格での商品のついで買いをしてもらえる。
②チラシなど、状況に応じて即効性のある販売促進が実施できる。
③価格に敏感なお客様に訴求でき、店の認知度向上や商圏拡大が期待できる。
④イベントや季節商品の販売と組み合わせることで売場に変化を出せる。
【デメリット】
①お客様が特売を意識し、通常価格での購入を控える傾向が生まれる。
②定番商品の通常価格の信頼性がなくなる。
③チラシを打つために費用がかかる。
④特売商品の在庫確保、表示価格の変更、売場の模様替えなどの手間が増える。
EDLP(Everyday Low Price:毎日低価格)は、特売を行わず、言葉通り毎日変動しない低価格で販売を継続する価格政策です。
このEDLPを徹底的に追求して、1990年代に既存の同業他社の追従を阻止して、世界一の小売業として急成長したB社は有名ですが、その実現には大きな壁があり、日本においても全社的にその価格政策を実施しているスーパーは多くありません。
【メリット】
①お客様からの信頼の獲得と固定客の増加
EDLPは、お客様に「いつでも同じ価格で、安心して購入できる」という安心感を与えます。特売日やセールのタイミングを気にせず、自分の都合の良い時に計画的に買物ができ、「買物の総額としてはいつも得をしている」と感じることで、長期的な固定客になって頂きやすくなります。
②コストの大幅な削減と在庫の適正化
特売やセールを頻繁に行う必要がないため、チラシ作成や価格変更に伴う作業が減少し、広告費や人件費を削減することができます。さらに、価格が一定であるため売上予測が立てやすくなり、適正在庫の維持が可能となります。結果として、在庫管理の効率化が図れ、無駄な在庫や欠品を減らすことができます。
【条件・デメリット】
①徹底したローコストオペレーションと原価引き下げが実現できないと、経営が破綻する(赤字の常態化)。
②実施した場合も、短期的には売上は減少し、また特売などでの集客ができないため、売上増が難しい。
③競合他社との価格競争が激しくなり、さらなる価格の引き下げが必要となる場合が多い。
全社的なEDLPの実現が難しい中、多くの企業では2つの価格政策を組み合わせて実施しています。
例えば、種類が多く購買頻度の高い冷凍食品や日常的に使う常備野菜、原価を抑えやすいPB商品はEDLPで展開し、その他の商品群は、ハイ&ローで、売場と価格を変化させながら、季節感や買物のワクワク感を演出し、価格訴求商品と高利益商品の値入ミックスで適正利益を確保するなど、日々、店舗で仮説と検証が繰り返され、その進化が続いています。
以上、スーパーの価格戦略の基本的な考え方についてご紹介しました。
(文)特定非営利活動法人JOFリンク
代表 小川英治
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭
- 当記事は2026年3月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。