〝推し活〟から〝エシカル〟まで「応援消費」でお店のファンを増やす

お店づくりトピックス

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好きなアイドルやアニメキャラクターなどにお金を使う「推し活」や、環境や人権などに配慮した商品を購入する「エシカル消費」などの「応援消費」が注目されています。その成り立ちや特徴、具体例などを紹介するとともに、小売店や飲食店で応用するためのヒントをお伝えします。

東日本大震災で生まれ コロナ禍で広がった「応援消費」

「応援消費」とは、がんばってほしい、力になりたいという気持ちを込めて商品やサービスを買う消費スタイルのことです。その言葉自体は、2011年の東日本大震災の頃に使われ始めました。震災の影響で東北地方の農産物が売れなくなり、観光客も減ってしまったことで、消費行動を通じて被災地を応援しようという動きが生まれました。
この言葉があらためて注目され、盛んに使われるようになったのが、新型コロナウイルス感染症が広がった2020年以降です。移動制限によって大きな打撃を受けた外食産業や旅行業などを支援する活動が積極的に行われるようになりました。その広がりを裏付けるように、同年12月の調査では2人に1人が実際に何らかの応援消費を行ったと答えています(図1)。

応援消費の代表例 「エシカル消費」と「推し消費」

応援消費という言葉が生まれる以前からあるのが「エシカル消費」です(図2)。社会課題の解決などに取り組む事業者を、消費行動を通じて応援することを意味し、具体的にはリサイクル品などの環境に配慮した商品や、途上国の安い労働力を一方的に搾取しない方法で生産された農作物の購入(フェアトレード)などが知られています。
2024年に日本で初めて調査されたエシカル消費の市場規模は、2022年時点で約8兆円でした(エシカル市場規模調査実行委員会資料より)。同年のイギリスにおけるエシカル消費は日本の約3倍の22兆8500億円あり、調査対象の違いなどから単純な比較はできないものの、今後は日本でもさらに伸びると考えられています。 
さらに、今日の応援消費を考える上で欠かせないのが、「推し活」「推し消費」と呼ばれる消費スタイルです。アーティストやアイドル、アニメやマンガなどのキャラクターを熱狂的に応援する活動のことで、CDや本の購入、ライブやコンサートへの参加、トレーディングカードやフィギュアの収集など多種多様な「推し」行動があり、一大市場となっています。例えば、国内のアニメ産業に注目すると、2002年に1兆968億円だった市場は、2021年には2兆7422億円と2倍以上に拡大しました(日本動画協会資料より)。
図3のように今ではふるさと納税やクラウドファンディングなども応援消費の枠組みに入るものと考えられています。

●図2 エシカル消費の定義と意義

図2 エシカル消費の定義と意義
水越康介・田嶋規雄著『推しからエシカルまで 応援消費がよくわかる本』 (秀和システム)より作成

●図1 応援消費の経験と意向

図1 応援消費の経験と意向
出典:「朝日新聞」2020年12月5日の1581人へのアンケート結果より

「なぜそこで買うのか」 という意味づけが重要

このように規模も分野も拡大を続ける応援消費ですが、小売店や飲食店が応援消費を集客や売上につなげるには、どんな方法が考えられるでしょうか。「おいしい」「安い」だけではお客様の心をつかむのが難しい時代です。「なぜそれを買うのか」「なぜそのお店で買うのか」という意味づけが商品や店舗選びにおいて重要になっています。企業や店舗で扱っている商品やサービスが自分が好きなことや応援したいことに重なることで、お店そのものを応援しようという気持ちが生まれます。
特にZ世代と呼ばれる20代前後の若い世代は、環境や人権などの社会問題に対する関心が高く、「その店が社会や環境に対してどのような姿勢で向き合っているか」を選ぶ基準にする傾向があります。
エシカル消費に限ると、スーパーマーケットのように多品種の商品を扱う業態であれば、無農薬・無添加の商品やフェアトレード商品など、エシカルな商品を集めたコーナーをつくり、関心のあるお客様に訴求する方法が考えられます。衣料品店や雑貨店なども環境や人権に配慮した商品を扱うことで、関心のあるお客様を呼び込むことができます。
ハラルと呼ばれるイスラム教徒向けの商品や、厳格な菜食主義者であるヴィーガン対応の商品などもエシカル商品として取り上げられることがあり、飲食店などはそうしたメニューを提供することで他店と差別化することができます。

店側の「想い」を積極的に発信 共感を応援消費につなげる

食品を扱う店舗で共感を得やすいのが、フードロス削減に向けた取り組みです。具体的には、これまで捨てていた野菜の皮や魚介のアラをスープに活用したり、規格外野菜を積極的に販売したりすることなどが挙げられます。
賞味期限の近い商品を「ワケあり商品」として安く販売することは、フードロスだけでなく、コスト削減の面でも効果的です。特に「大量に作りすぎて余ってしまった」「キャンセルが発生し、廃棄せざるを得なくなってしまった」など、店舗側が「困っている」という状況は応援消費に結びつきやすく、SNSなどで発信することで購入につながります。
SNSと応援消費は親和性が高く、SNSへの投稿がきっかけとなって情報が拡散され、大勢の消費者が応援消費を行ったという例は少なくありません。「困っている」だけに限らず、普段からその店のこだわりや商品に対する想いなどをSNSや店頭のPOPなどを使って発信することが大切です。
農産物であれば「地元農家の〇〇さんが育てた糖度10度の抜群に甘いトマト」、仕入れ商品であれば「当社バイヤーも使っているおすすめ便利グッズ10選」などと伝えることで共感が生まれ、来店や購買を後押しします。

●図3 応援消費の枠組み
エシカル消費は社会問題を解決する一つの手法として行われるが、推し消費(推し活)の場合は自分自身の嗜好や興味が消費行動の原動力となっている。しかし、映画やアニメの舞台を訪れる聖地巡礼がその地域の活性化に寄与するように、明確には区別できない応援消費もある。

図3 応援消費の枠組み
水越康介・田嶋規雄著『推しからエシカルまで 応援消費がよくわかる本』(秀和システム)より作成

●図4 小売店や飲食店で活用できる応援消費

図4 小売店や飲食店で活用できる応援消費

商店街や自治体と連携 地元ならではの魅力をアピール

物理的・心理的な「近さ」も「推し」の理由になります。地元のお店や昔から営業している店舗などは自然と親近感が湧きやすく、飲食店であれば地場の食材にこだわるなど、地元密着や地産地消といったローカルならではの魅力をアピールします。地域の商店街や自治体などと連携し、地元食材フェアや地域応援スタンプラリーなどのイベントを開催するのも効果的です。
また、店舗スタッフが「推し」の対象になることもあります。いわゆる「あの人がいるからその店で買う」が、一種の応援消費になるのです。
スタッフを通じて、その店舗のファンになってもらえるよう、お店側も研修などを通じてお客様が心地よいと感じる接客方法の確立や雰囲気づくりなどに努める必要があります。
応援消費を集客や売上アップにつなげるには、お客様が「推したくなる」理由を明確に伝え、参加しやすい仕組みをつくることが大切です。自店にはどんな推しポイントがあるのか、どうすればそれを上手に伝えられるかを考え、SNSなどで積極的に発信することが求められます。

監修:水越康介(みずこし・こうすけ)
東京都立大学経済経営学部教授

  • 当記事は2026年3月時点のものです。
    時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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