商圏の居住者ニーズに対応する
国内外流通トピックス
スーパーマーケット(以下、スーパー)にとって、岩盤支持層ともいえる店舗のファンとなって来店いただく固定客はとても大切な存在です。その数が多いほど安定して店舗を運営することができます。そのためには、自店商圏を的確に把握し、商圏を深掘りして考える必要があります。
商圏設定・分析の重要性
「商圏」とは、小売業、飲食業、サービス業など何かを提供する店舗・施設において、その店舗やサービスがターゲットとするお客様を集客できる可能性のある地理的な範囲のことです。狭い範囲であれば事業所内の自販機といった数十メートルの商圏もあり、逆に日本全国を商圏とするテーマパークやインターネット通販では世界的な規模のものもあります。
例えば首都圏にオープンしたテーマパークは、地方からバスツアーで日帰りできる範囲を「第1次商圏」とし、それより遠方で宿泊しながら来園する地域を「第2次商圏」、さらに海外のアジアの富裕層が居住する地域を「第3次商圏」と考えて集客しています。成功の要因は、開業した約40年前の時点で、すでに第1次商圏を首都圏以外にバスツアーで日帰りできる範囲にまで広げ、その集客のために旅行会社、バス会社との連携に注力したことにあったと言われています。
スーパーにおいても、自店が最も注力する商圏(基礎商圏)をどう設定し、重点的に深掘りするのかは重要な戦略の一つです。この点で判断を誤ると、多くの努力が無駄になってしまいます。当該商圏居住者のニーズに合致した地域密着の店舗運営こそが、スーパーの真骨頂と言えるのです。
スーパーの商圏
スーパーでは、通常売上高の上位80%を占めるお客様(顧客)の居住する範囲を商圏(全体)として考え、スーパーによって多少の違いはありますが、一般的には以下の①〜④に分類されます。
① 足元商圏
季節や天候に左右されず短時間で来店できる範囲で、通常は主に徒歩5分以内に来店できる範囲を指します。都市部では半径500m〜1km程度以内が目安です。お客様の頻繁な来店(ほぼ毎日)が期待されるため、食品を中心とした最寄り品(日常的な生活必需品)を中心に販売するスーパーにとっては、最重要商圏となります。
② 第1次商圏
主に徒歩や自転車で10〜15分以内に来店できる範囲を指します。足元商圏ほどでないものの、比較的高い頻度(週3〜4回)で来店される商圏で、まとまった買物をされる傾向がある重要な商圏です。スーパーでは通常、この範囲までを基礎商圏とし、店舗の売上高の60〜70%を占めるお客様の居住地域となります。
③ 第2次商圏
徒歩での来店が難しく、自転車や車によって10〜15分で来店できる範囲を指します。来店頻度は週1〜2回が目安となります。
④ 第3次商圏
来店には車や公共の交通機関で30〜40分かかる範囲を指し、来店頻度は月数回が目安となります。
商圏範囲は、「店舗まで1km」という距離ではなく、「店舗まで10分以内」というように主な交通手段による、店舗までの所要時間で決まります。また、店舗の状況(人口密度、立地場所、居住者の年齢構成、主な来店手段、駐車場の有無、店舗の規模、競合状況など)によっても異なります。都市部と地方の隔たりもあり、自店がどのような環境の中に立地しているのかを、できるだけ正確に把握することが大切です。
さらに基礎商圏は業態別にも異なり、主に規模に比例してその範囲が拡大します。食品の販売でスーパーと競合するコンビニエンスストア(以下、コンビニ)は半径500m、ドラッグストアは半径2〜5km 、GMSは半径10〜20kmとされています。
商圏の形と変化
実際の商圏は、単純に店舗を中心とした同心円ではなく、さまざまな要因によって歪み、複雑な形をしています。特に道路や河川、山などの物理的な障害、また大型商業施設や競合店舗の存在などが、商圏を歪める要素となります。これらの要因は「商圏バリア」と呼ばれ、仮に正確な商圏分析を実施する場合は、これらの要素を考慮する必要があります。
商圏は人口動態や社会状況の変化によって変動することも、認識しておく必要があります。近年では、2020年から3年ほど続いたコロナ禍によりお客様は自粛が求められ、行動範囲が縮小し、自宅に近い店舗を選ぶ傾向が顕著となり、足元商圏がより重要となりました。
今後長期的には、地域間格差はありますが、人口減少と高齢化により商圏の範囲や居住者のニーズが変化し、ますます狭域の足元商圏が重要になると予測されています。
商圏シェアについて
スーパー店舗の商圏シェアは、対象店舗の売上高を設定した商圏内の全スーパー店舗(競合店)の売上高合計で割って求めることができます。地域世帯数と一世帯当たりの食品支出(家計調査より)を掛け合わせた、商圏内の全食品支出額を分母にする場合もありますが、コンビニ、ドラッグストア、宅配なども含まれるため、競合対策などで使う場合、焦点が絞りづらくなります。
一般的なスーパーは、平均どれくらいの商圏シェアなのか、統計的なデータは見当たりませんが、首都圏1都6県に店舗展開するあるスーパーA社は、1km商圏シェアは20%で目標として同シェアを25%にすることを掲げています。増収増益を続け着実な成長を続けるA社では1km商圏シェアを重要業績評価指標(KPI)の一つとしています。
常にその向上を追求している点において、スーパーとしての商圏の考え方(戦略)が凝縮されているように思われます。
都市部の標準的なスーパーにおいては、通常半径1km(来店所要時間10〜15分以内)が基礎商圏となります。この商圏内で地域一番のシェアを取れれば、生鮮や惣菜が主力のスーパーは、安定した店舗運営が行え、計画した売上・利益を上げることができます。さらに企業としてドミナント出店することが可能となります。
基礎商圏のシェアは、スーパーにとって地域密着度を指数化したものと言えます。コンビニ、ドラッグストア、宅配など業種業態を超えた競争の激化、人口減少に直面し、多くのスーパーの商圏が矮小化する中、そのシェアに着目することに重要な意味があります。
高鮮度の生鮮や惣菜の充実、接客の質の向上など、商圏内の支持率をより高める複合的な施策の効果を検証する上で、有効な指標になるのです。シェア向上に全社で取り組む姿勢が重要となります。
商勢圏とドミナント戦略
「商勢圏」とは、特定の地域における一つのチェーンが持つ勢力範囲を指します。商圏が1店舗当たりの範囲であるのに対して、商勢圏は複数店舗の商圏をまとめた範囲となります。ローカルチェーンは一つの商勢圏のみに展開し、リージョナルチェ―ンは複数県にわたり、二つ以上の商勢圏に展開し、ナショナルチェーンは全国的に複数の商勢圏に展開しています。
ドミナントとは「支配的な」という意味で、ドミナント戦略とはチェーンストアが地域を限定して集中して展開することです。これにより競合他社に比べ市場シェアを上げ、配送コストの削減など経営効率の改善やお客様の認知度を高めて優位に立ち、他社の参入を抑制する戦略です。
このように商圏、商勢圏ともに、スーパーの出店戦略から店舗運営戦略、そして品揃えや価格設定、販促などの施策にまで影響する非常に重要な要素なのです。
(文)特定非営利活動法人JOFリンク
代表 小川英治
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭
- 当記事は2026年3月時点のものです。
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