売り込まなくても売れる!「感情マーケティング」の実践

お店づくりトピックス

化粧品を見ている女性と対面販売を聞いている人のイメージ画像

情報があふれ、比較や選択に迷いがちな時代、人は「正しい情報」ではなく、「どうすれば安心して決められるか」で動いています。売り込むのではなく、お客様の感情に働きかけ、買いたい気分を誘う「感情マーケティング」の実践で売上を伸ばす秘訣を紹介します。

「気分」を動かすことで 自然に売れるようになる

これまでのマーケティングは、「どう売るか」を考えるものでした。価格を下げる、商品の特徴を詳しく述べる、様々なキャンペーンを行う――。確かにこうした手法は、情報が不足していた時代には効果がありました。しかし現代では、インターネットやSNSの普及により、口コミなども含め、膨大な量の情報が容易に手に入ります。商品の性能やスペック、競合店との価格の違いまで、お客様は来店する前から知っている場合も少なくありません。「売れない」理由の多くは「情報がない」のではなく、「情報が多すぎて決められない」ことにあります。

人は「気分」によって、購買行動に差が出ることがわかっています。スーパーマーケットの店内で流す音楽を変え、購買行動にどう影響するかを調べた実験では、ゆったりした音楽を流した日の方が、テンポの速い音楽を流した日より、売上が32%伸びたという研究結果があります。ゆったりした音楽ではお客様の歩くスピードが自然と遅くなり、店内の滞在時間が長くなって、「ついで買い」が増えたからだと考えられています。


つまり、現代のマーケティングに欠かせないのが、お客様の「感情」に働きかけ、「買いたい」と思われるよう、「気分」を動かすことです。その商品やサービスを購入したら「どんな気持ちになれるのか」「どんな未来が待っているのか」を提示することで、一生懸命売り込まなくても、自然に売れるようになります。

「13の感情トリガー」で お客様の心を動かす

お客様の心を動かすきっかけとして、ぜひ使っていただきたいのが、次ページ図1に掲げた「13種類の感情トリガー」です。これを売場づくりや接客時に取り入れると、お客様の気持ちに変化をもたらし、購買につなげることができます。中でも、取り組みやすく、効果が高いのが、最初に示した「①共感」「②希望」「③恐怖」の3つです。

まず「①共感」 は、「こんな悩みはありませんか」「今のあなたにはこれがぴったりです」など、相手の気持ちに寄り添った言葉を使うことで、「なるほど」「いいかも」という購入に前向きな感情を引き出すことができます。
「②希望」は、お客様になりたい自分の姿をイメージさせます。「すっきりしたウエストで、服選びが楽しくなる!」「偏差値を20上げて、希望の大学へ」などの言葉は、「現状を変えて、より良い未来を実現したい」というお客様の心を動かします。

3つ目の「③恐怖」は、危機感によって行動を促す感情トリガーです。例えば、「除菌効果の高い洗剤」とうたうより、「まな板には菌がうようよ」と表現した方が、「何とかしなければ」という感情を駆り立てます。

また、近年はバターや生クリームの量を増やした高カロリースイーツや、ボリュームとこってり感を前面に打ち出したラーメンなどが「背徳グルメ」として人気を集めていますが、これは健康志向の裏返しとして、「⑤罪悪感」をあえて刺激した商品といえます。

13種類の感情トリガー〜お客様の心を動かす「きっかけ」
出典:齊藤晃宏著『感情マーケティング〜「見せ方」と「気分」で売上は勝手に伸びる』(きずな出版)巻末特典より作成

商品やサービスではなく 「気分や体験」を売る

小売店や飲食店の現場では、こうした「感情マーケティング」をどう実践したらよいでしょうか。まず「商品やサービスを売る」という発想から、「気分や体験を売る」という発想への転換が必要です。その代表例が喫茶店です。単にコーヒーやスイーツを提供するだけではなく、「ゆっくりとくつろぎたい」「友人とおしゃべりを存分に楽しみたい」という「感情」にフォーカスし、その気持ちに合った「体験」を提供する場として機能しています。


例えば、スーパーマーケットの「メニュー提案」では、「たった10分で作れるカレー」「子どもが喜ぶ簡単手巻き寿司」のように、「忙しくても料理を作りたい」「家族を喜ばせたい」というお客様の感情に寄り添った打ち出し方をすると、心に響きます。さらに、メニューごとに必要な肉や野菜、調味料などを1カ所に集めて提案すると、「買物の手間を省きたい」というお客様のニーズも満たすことができます(図2)。

商品の種類ではなく シチュエーション別に陳列

お客様の感情に訴えかける手法として、売場を商品の種類やカテゴリー別ではなく、生活シーンやシチュエーションごとに編集して陳列するという方法もあります。例えば、ドラッグストアなら、商品の種類ごとに陳列するのではなく、「花粉症対策」「疲労回復コーナー」「ダイエットをサポート」のように、症状や悩み、目的別に商品を集めて展開すると、「この症状を和らげたい」「体重を減らしたい」といったお客様の想いに直接アピールすることができます。


売場を変えることも効果があります。例えば、書店の中には本や雑誌だけでなく、文房具や雑貨を扱っている店舗もあります。そうした店舗では、「秋の夜長を読書で楽しむ」などのテーマで、マグカップやコーヒー豆、アロマなどを展開すると、普段は雑貨店に行かないお客様が、コーヒーカップなどを購入するというケースが期待できます。


飲食店の場合も、メニューを肉料理、パスタ、デザートなど、種類ごとに並べるのではなく、「元気になりたい」「自分へのご褒美」「大勢でシェアしたい」など、お客様がどんな気分になりたいかによってメニューを提案します。メニュー数が多い場合は、「人気メニューベスト5」「店長おすすめの3品」のように、迷いを減らし、安心して決められる情報を提示すると、選びやすくなります。お店側が売り込みたい商品を、重点的に提案できるというメリットもあります。

お客様の共感を誘う言葉で 商品やサービスの価値を高める

人は手間や時間がかかっているものは価値が高いと、直感的に判断します。商品によっては「簡単にできる」「とにかく楽」という打ち出し方も必要ですが、「3日間煮込んだ秘伝のスープ」「職人が一つ一つ手作り」と言われると、よりおいしそうに思えたり、真似できない高級品に見えたりします。


これは、POPやチラシなどで商品をアピールする場合は特に有効です。単なる商品の説明ではなく、「完成するまでの苦労」や「職人や生産者の想い」、「この値段になった理由」などを詳しく説明すると、お客様の共感を呼び、より購買に結びつきやすくなります。その具体的手法が、図3「商品やサービスの価値を上げる7つのアプローチ」です。

お客様の不安や迷いを和らげ、「これなら大丈夫」と安心して決断できる状態をつくり出すのが「感情マーケティング」です。商品やサービスの価値を伝えるだけでなく、その先に得られる気持ちや体験を伝えることで、無理に売り込まなくても、自然に選ばれるようになります。 

小売店・飲食店における「感情マーケティング」の例と商品やサービスの価値を上げる7つのアプローチ

監修:齊藤晃宏(さいとう・あきひろ)
感情マーケティング戦略家・スマートプレナー合同会社代表

  • 当記事は2026年9月時点のものです。
    時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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