「人手不足時代」を生き抜く離職防止策と人材育成

国内外流通トピックス

人手不足のイメージ画像

日本の労働力人口は、少子高齢化により減少傾向にあり、「人手不足時代」に突入しています。しかし、売り手市場にともない企業間の採用競争は激化しており、最近では従業員の離職防止と人材育成が注目されています。その背景と具体的な取り組み内容について、分かりやすく整理しました。

「人手不足時代」の到来とその背景

日本地図と右肩下がりのグラフのイメージ画像

日本では、人口減少にともなう人手不足が顕在化して久しい状況です。特に地方では、大都市への労働力人口の集中により、深刻な人手不足に悩まされています。また、従業員数1,000人以上の大企業と比較して、5~29人の中小企業において人手不足となっています。

企業規模・地域別の欠員率(常用労働者数に対する求人数の割合)

企業規模・地域別の欠員率
(単位:%) 1,000人以上 300~999人 100~299人 30~99人 5~29人
全国 2.9 1.7 2.8 3.9 3.8 4.7
北海道 5.0 3.2 3.5 13.9 6.3 3.1
東北 3.1 1.6 2.1 3.5 3.7 5.7
北関東 3.6 2.0 3.3 3.8 2.6 8.1
南関東 2.5 1.7 2.6 3.1 3.6 4.2
北陸 2.8 1.6 2.5 4.0 2.8 3.9
東海 2.4 1.3 1.7 3.0 3.6 4.0
近畿 2.0 1.3 1.6 2.3 2.6 3.0
京阪神 3.3 2.1 4.2 2.3 4.9 4.8
山陰 3.0 1.7 3.0 5.8 5.4 1.2
山陽 3.2 1.7 1.6 5.2 2.2 6.9
四国 4.1 0.7 4.4 6.8 5.2 5.7
北九州 3.0 1.5 1.7 2.7 5.4 3.9
南九州 3.3 2.1 3.6 6.1 2.7 3.7

出典:厚生労働省「雇用動向調査(令和6年上半期)」

その他に、非正規雇用の増加や企業と求職者の間で求める人材や条件のミスマッチ、若者を中心とした価値観の変化(ワークライフバランス重視や転職の一般化など)といった要因も人手不足に拍車をかけています。

そして、慢性的な人手不足により労働環境が悪化すると従業員の離職につながり、さらなる人手不足を引き起こす悪循環を生みだします。

離職の主な原因と防止策

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今後も少子高齢化による労働人口減少が見込まれる中、人手不足を解決するためには採用した従業員を離職させないことが重要となります。

日本の平均離職率は令和6年上半期で8.4%となっていますが、産業別に見ると「宿泊業,飲食サービス業」が15.1%、「生活関連サービス業,娯楽業」が11.1%と、労働集約型産業の離職率が高くなっています。労働力に対する依存度が高いこれらの産業では、従業員の離職が事業の存続にも深く関わってきます。

産業別の離職率

産業別の離職率のグラフ画像

出典:厚生労働省「雇用動向調査(令和6年上半期)」

「雇用動向調査結果の概況(令和5年)」によると、転職入職者(調査対象期間中に事業所が新たに採用した入職者のうち、入職前1年間に就業経験のある者)が前職をやめた理由別割合(個人的理由)として、「職場の人間関係が好ましくなかった(男性9.1%・女性13.0%)」、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった(男性8.1%・女性11.1%)」、「給料などの収入が少なかった(男性8.2%・女性7.1%)」が高い状況となっています。

これらの離職理由に対する対策としては、「エンゲージメント向上施策の実践」、「働きやすい環境づくり」、「公正な評価とキャリア支援」という3つの方向性があります。

「エンゲージメント向上施策の実践」については、人材育成やモチベーション向上を目的に上司と部下が1対1で定期的に話し合う「1on1ミーティング」、社内SNSやイベントなどを通じての「社内コミュニケーションの活性化」が挙げられます。

また、「働きやすい環境づくり」には、リモートワークやフレックスタイムなど「柔軟な勤務制度の導入」、メンタルヘルス支援や育児・介護支援など「福利厚生の充実」が役立ちます。

そして、「公正な評価とキャリア支援」には、誰が・どのスキルを・どのレベルで持っているかを一目で把握できる「スキルマップ」に加え、どのようなスキルを習得し、どのような経験を積むことで、目標とするキャリアに到達できるのかを示した「キャリアパス」の明示が有効です。

助成金を活用した人材育成

笑顔の従業員のイメージ画像

近年は、人手不足が深刻化する中、離職の防止に加えて人材育成が注目されています。特に、大企業と比べて人材育成に投資できるリソースが限られている中小企業では、国や地方公共団体から支給される助成金を活用することで、限られた予算の中で質の高い教育を実現することができます。

人材育成のための助成金の代表例としては、厚生労働省の「人材開発支援助成金(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html)」があります。「人材開発支援助成金」は、企業が従業員に対して行う職業訓練やスキルアップ支援に対して、訓練費用や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

具体的には、「人材育成支援コース」、「教育訓練休暇等付与コース」、「人への投資促進コース」、「事業展開等リスキリング支援コース」の4つのコースが設定されています。

人材開発支援助成金の概要

人材開発支援助成金の概要
人材育成支援コース 教育訓練休暇等付与コース 人への投資促進コース 事業展開等リスキリング
支援コース
対象 正社員・非正規社員 正社員 デジタル人材・高度人材・自主的学習者 新規事業や異業種展開を目指す企業
内容 職務に関連する知識・技能を習得させる訓練(Off-JTやOJT) 有給での訓練休暇制度を導入し、社員が外部研修を受講 eラーニング、サブスクリプション型研修、外部講座など 異業種スキルへの転換訓練
助成
内容
訓練経費の最大75%、賃金助成もあり(中小企業の場合) 休暇中の賃金の一部を助成 訓練費用の一部+賃金助成 訓練費用+賃金の一部
事例 製造業A社:
技能系社員に対して「多能工訓練」を実施。
→生産ラインの柔軟性が向上し、繁忙期の残業時間が30%削減。
サービス業B社:
社員が語学学校に通うための有給訓練休暇を導入。
→外国人観光客対応力が向上し、顧客満足度が上昇。
IT企業C社:
新卒社員向けに外部講師によるプログラミング研修を実施。
→研修後の離職率が20%から5%に改善。
飲食業D社:
コロナ禍で売上が減少したため、従業員にEC運営スキルを習得させる研修を実施。
→自社オンラインショップを立ち上げ、新たな収益源を確保。

出典:厚生労働省HP「人材開発支援助成金」

「人手不足時代」を企業が生き抜くには、人材育成を「コスト」ではなく「投資」と捉えることが重要です。そして、「投資」の効果を最大化するためには、指数関数的に進化するITを組み合わせて「人間が持つ力をいかに引き出すか」がポイントとなります。

将来的には、離職防止策や人材育成を通じて「人を大切にする」企業文化が、競争力の源泉となるでしょう。

(文)田中イノベーション経営研究所
中小企業診断士 田中勇司
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

  • 当記事は2025年5月時点のものです。
    時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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