計画作成を「勘」から「根拠」に変えるデータ活用

国内外流通トピックス

データ活用のイメージ画像

食材原価や人件費など、さまざまなコストが上昇しています。こうした事態に苦肉の策として値上げする店が増え、お客様にとって飲食店が「気軽に行ける場所」ではなくなりつつあり、飲食店にはこれまで以上の工夫と付加価値が求められています。
しかし、根拠のない勘と経験に頼る店は少なくありません。これからは、POSデータなど活用して根拠のある店舗運営を考えなくてはならなくなっています。

求められる根拠のある計画作り

食材価格の高騰のイメージ画像

昨今の飲食業界を取り巻く環境は、かつてないほど厳しさを増しています。食材価格の高騰が続き、牛肉・豚肉・小麦粉・油などの基本食材が軒並み値上がりしているのはもちろん、人件費も最低賃金の引き上げや人手不足により急激に上昇しています。

これらの価格上昇は一時的なものではありません。今後も値上げによるコストアップが危惧され、従来通りの経営手法では立ち行かなくなる可能性が高まっています。

このように経営環境が激変する中、飲食店に必要なのは「新しい時代にあったローコスト経営」です。 無駄を徹底的に排除し、効率性を追求しながらも、お客様にとって魅力的な価値を提供し続ける。

そのためには、従来の「勘と経験」に頼った経営から脱却し、データを活用した「根拠ある計画運営」が不可欠で、POSシステムから得られるデータなどの活用が有効です。

なぜ飲食店で売上予測が使われてこなかったのか

PCで分析している女性のイメージ画像

これまで飲食店の経営者の中には、以下のような理由で売上予測にあまり前向きではなかったところがあるように思います。

1.「勘と経験で十分」という思い込み

「長年やっているから、明日の売上はだいたいわかる」、「天気や曜日を見れば、お客さんの数は読める」といった意識

2.データ管理の煩雑さ

「売上の記録はレジの日計だけで十分」、「細かい分析をする時間がない」という実態

3.予測の難しさ

「飲食店は天候や季節に左右されるから予測は無理」、「イレギュラーな要素が多すぎる」という事実

ここで、都内でラーメン店を経営するAさんの話をご紹介しましょう。

Aさんは15年間、勘と経験だけで仕入れを行ってきました。「雨の日は客足が減る」「金曜日は必ず混む」といった経験則に基づいて、毎朝市場で食材を仕入れていたのです。

しかし、実際にPOSデータを分析してみると、異なる事実が判明しました。

・雨の日の売上減少率:経験では「30%減」と思っていたが、実際は「15%減」

・金曜日の売上:確かに多いが、木曜日との差はわずか「8%」

・最も売上が多い日:金曜日ではなく「火曜日」

この結果、A店主は「15年間、間違った認識で経営していた」ことに気づいたのです。

POSデータが提供する「根拠ある数値」とは

改善後の女性のイメージ画像

POSシステムは、単なるレジ機能を超えて、経営に必要な様々なデータを自動的に収集・蓄積しています。

・売上データ

…日別・時間別・曜日別の売上推移
…商品別の売上個数と金額

・客単価の変動

…客数データ
…客層の分析(新規・リピーター)
…テーブル回転率

・商品データ

…人気商品ランキング
…死筋商品の特定
…売上構成比

これらのデータは、従業員が特別な操作をしなくても、日々の営業を通じて自動的に蓄積されていきます。つまり、「手軽に取れる根拠あるデータ」がすでに手元にあるのです。

とあるカフェB店では、POSデータを活用して以下のような改善を行いました。

1.モーニングタイムの最適化

…データ分析により、コーヒーと軽食の売上比率が「7:3」であることを発見
…軽食メニューを3品から5品に増やした結果、モーニング売上が20%向上

2.午後の閑散時間対策

…14時〜16時の来客数が極端に少ないことをデータで確認
…この時間帯限定の「デザートセット」を導入し、客単価を15%アップ

このように、POSデータは「なんとなく感じていたこと」を数値で裏付け、さらに「気づいていなかった事実」を明らかにしてくれます。

計画を立てないことによるリスク

飲食店のイメージ画像

計画を立てないまま勘と経験に頼っていると、適切な行動を取らなかったことで利益が失われることがあります。これを「機会損失」と言います。

飲食店においては、以下のような形で現れます。

・食材ロスによる損失

正確な予測なしに仕入れを行うと、売れ残りが発生する。

・品切れによる機会損失

人気商品が品切れになると、その分の売上を逃すだけでなく、お客様の満足度も下がる。

・人員配置の非効率化

忙しい時間帯にスタッフが足りず、閑散時間に人件費がかさむという無駄が生じる。

では、実在する都内の居酒屋C店(平均月商300万円)で調べた1年間の損失を紹介します。

1.食材ロスによる損失

・月平均ロス率:8%
・食材費率:30%
・月間ロス額:300万円×30%×8%=7.2万円
・年間損失:86.4万円

2.人員配置の非効率による損失

・閑散時間の余剰人件費:月5万円
・繁忙時の機会損失:月10万円
・年間損失:180万円

3.品切れによる機会損失

・人気商品の品切れ頻度:月4回
・1回あたりの機会損失:3万円
・年間損失:144万円

このC店の場合、年間売上3,600万円に対して年間総損失額は410.4万円で、売上高に対して実に11.4%もあることが、調査によって明らかになったのです。

飲食店の計画策定 5つのステップ

店舗運営設計図のイメージ画像

飲食店の営業計画とは、「勘」ではなく「数値」に基づいて店舗運営を行うための設計図です。POSデータを活用することで、誰でも実践的で効果的な営業計画を立てることができます。

1.現状把握(過去3か月のデータを集める)

勘ではなく事実(数値)に基づいた計画の土台を作る。

・過去3か月の売上、客数、客単価を集計
・曜日別・時間帯別・商品別の売上構成比を分析
・廃棄率、原価率、人件費率の確認

2.目標設定(売上・利益目標を決める)

「いつ・いくら売るか」を明確にし、スタッフ全員で共有する。

・月間売上目標の設定
・目標原価率・人件費率の決定(FL管理)
・利益額の逆算

  • FL:Food Cost(食材原価)とLabor Cost(人件費)

3.販売計画(何を・いつ・どれだけ売るか)

売上構成の内訳を明確にし、重点商品や時間帯を決める。

・商品別販売目標の設定(売上構成比)
・時間帯別・曜日別販売数の決定
・季節イベント・キャンペーンの組み込み

4.必要資源の計画(人員・仕入れ)

目標売上達成のための人員配置と仕入れ量を最適化する。

・時間帯別シフトの作成(ピーク強化・閑散圧縮)
・仕入れ計画の策定(原価率×売上目標で上限設定)
・発注点と安全在庫の決定

5.実績管理と修正(毎週チェック)

計画と実績の差を早期発見し、迅速に対策を実施する。

・週ごとの売上・客数・客単価を計画と比較
・原価率・人件費率・廃棄率の確認
・未達時の販促やメニュー推進の即座実行

では最後に今すぐできることを考えてみましょう。
まずは過去3ヶ月の売上データを振り返ってみることからはじめてはいかがでしょうか。

POSシステムをお使いのお店は、過去3ヶ月間の「日別売上レポート」、「曜日別売上集計」、「商品別売上ランキング」の3つのデータを確認するだけでも、きっと新しい発見があるはずです。

(文)株式会社横浜マネジメントコンサルティングJPS
中小企業診断士 江草 和彦
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭

  • 当記事は2025年8月時点のものです。
    時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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