中小スーパーのPB開発 ― 企画から販売後の検証まで ―

お店づくりトピックス

中小スーパーのPB開発をイメージした画像

物価上昇が続くなか、スーパーのPBに期待される役割は、NBより安い代替品を増やすことだけではありません。毎日の買物で感じる不便を解消し、「この商品があるから、この店へ行く」と思ってもらうことも重要です。一方、中小スーパーが大手のPBと同じ価格や品目数で競うのは容易ではありません。限られた販売数量で製造を引き受ける企業を探し、品質を保ちながら採算を合わせ、売場で定番商品として育てる必要があります。 本稿では、商圏の需要を商品企画に落とし込むところから、技術力のある製造先との協業、委託時の条件、NBとPBを併売する棚の設計の考え方まで、経営と現場の両面から考察します。

売場の課題から商品仕様を決め、損益を組み立て試作する

売場の課題から商品仕様を決め、損益を組み立て試作する様子をイメージした画像

PB商品開発の出発点は「何を作れるか」ではなく「既存の商品で満たせていない需要は何か」です。POS・ID-POSで売れ筋だけでなく、欠品時の代替購買、容量別の動き、曜日や世帯ごとの購入頻度を調べます。店頭で寄せられる「量が多すぎる」「味が濃い」「地元産が見当たらない」といった声も企画の手掛かりです。競合店とNBの品揃えを確認し、狙う顧客、用途、価格帯、販売数量を一枚の企画書に落とし込みます。

例えば高齢世帯が多い商圏なら、少量で使いきれる、調理の手間が少ない惣菜やたれが購買理由になるかもしれません。地域の製造業者や生産者の技術を生かせる品目も候補です。ただし地域産原料を掲げるなら、調達量の変動や代替原料を使う際の表示まで先に考える必要があります。

 

候補品目が決まったら複数の製造先に、配合、容量、包装、保存方法、賞味・消費期限、最低発注量、納期、試作費を確認します。既存の製造ラインや包材を活用できれば初期投資を抑えやすくなりますので、何をどう製造しているかの確認も大切です。

一方、独自の型や印刷包材を求めれば、商品本体より包材の最低ロットが障害になることもあります。製造先の衛生管理、原料調達、検査体制、供給停止時の対応も比較対象です。

採算は「売価-仕入原価」だけで判断しません。物流費、包材・版代、試食や販促費、値引き、廃棄、開発に使う人件費を織り込みます。たとえば製造ロットが3,000個で、期限内に売り切れる見込みが2,000個なら、見かけの値入率が高くても採算は悪化します。発売前に必要な週販、配荷店舗数、売り切りまでの期間を逆算し、損益分岐点と撤退基準を決めておきます。

 

企画と採算の目途が立ったら、試作、社内と顧客による試食、仕様の修正、製造・表示の確認へ進みます。味だけでなく、温めやすさ、開封のしやすさ、棚に並べた際の見つけやすさを確認します。取引契約には仕様書、原材料や配合を変更する際の承認、検査基準、不良品の扱い、苦情・回収時の連絡体制、余剰原料と包材の負担、商品終了時の取り扱いを明記します。

食品では名称、原材料、アレルゲン、内容量、期限、保存方法、栄養成分、事業者や製造所などの表示を品目に応じて確認しなければなりません。製造所固有記号は原則として同一製品を複数の製造所で製造する場合の制度であり、「PBなら製造者名を隠せる」という理解は誤りです。製造を委託しても、販売者は表示の確認と問い合わせ対応を製造先任せにできません。発売前に品質保証担当者と製造先が、表示原稿と実際の製造工程を突き合わせることが大切です。

三つの開発ルートを使い分け、製造委託先の得意分野を調べる

三つの開発ルートを使い分け、製造委託先の得意分野を調べている様子をイメージした画像

第一はボランタリーチェーンなどの共同開発・共同仕入れを活用する方法です。加盟企業の需要を束ねて生産量を確保でき、価格訴求型の基礎商品を揃えやすくなります。第二は地域の食品メーカーと自社専用の商品を共同開発する方法です。看板の惣菜、調味料、菓子など、顧客がその店を選ぶ理由につながる少数の品目に向きます。第三は既存のメーカー商品を専用容量や専用仕様に変える方法です。独自性は限定されますが、ゼロからの開発に比べて試しやすい場合があります。商品の商標が誰に帰属し、他社でも販売できるかは契約で明確にします。

いずれも製造先に価格引き下げや売れ残りの引き取りを一方的に求めるべきではありません。発注数量の見通しと費用負担を共有してこそ、改良や安定供給に協力してもらえます。大手の低価格PBは規模の経済を背景にしています。中小スーパーは価格で全品目を追いかけるより、共同調達で日常の値頃感を確保し、自社企画品では地域性を大切にしたいところです。

 

製造委託先探しは「PBを作れる会社を紹介してほしい」だけでは進みません。商品の核心となる技術を先に定めます。少量でも風味が安定する冷凍技術、地元野菜を生かす漬物加工、小容量の充填、添加物を抑えた製法など、求める工程によって候補企業は変わります。既存のNBや地域商品を食べて製造者表示を確認し、展示会や自治体・商工会議所の食品商談会、地元金融機関の紹介、包装資材・食品卸のネットワークから候補を挙げます。スーパーマーケット・トレードショーのような商談展示会も、製品の試食と製造担当者への質問を同時に行えるので足を運んでみることをおすすめします。

 

候補先には初回から価格だけを聞かず、主力品目と得意工程、年間生産量、受託経験、最小ロット、繁忙期の余力、品質管理体制を確認します。工場を訪ね、原料入荷から出荷までの動線、温度管理や異物混入対策などを確認します。HACCPに沿った衛生管理の運用状況も、書類の有無だけでなく実際の作業で確かめます。中小メーカーには優れた技術があっても、自店が望む少量多頻度納品には対応できない場合があります。製造は得意でもデザイン・表示校正は不得意という会社なら、役割を分けて補うことも考えます。

企画書作りと製造委託契約

企画書作りと製造委託契約をイメージした画像

製造先に渡す企画書は、商品名や希望価格だけを書いたものでは足りません。第一に顧客像と購入動機、使われ方を記します。第二に既存NBや競合PBとの違い、守りたい味・食感・原料と、調整できる項目を明記します。第三に容量、想定売価、初年度の販売店舗数と週販、発売時期、棚の温度帯、納品頻度、想定する期限を示します。第四に試作回数、官能評価の方法、ラベル表示や包材の担当者、発売判定の基準を記載します。販売予測は確約ではなく根拠を添えた見込みとして提示します。

たとえば「共働きの二人世帯向け、夕食の副菜として使える地元野菜の浅漬け。食べ切り量、週2回納品。競合品より塩味を抑えたい。ただし原価上限を超えるなら容量を再検討する」などと書けば、メーカーから製法や包材の提案を受けやすくなります。試作品の評価には売場担当者も加え、試食の好みと売場で売れる条件を分けて議論します。「おいしい」だけでは継続購買に結び付かないことも考える必要があります。

 

委託の契約では、基本取引条件と商品ごとの仕様書を分けて管理します。原材料と産地の変更、アレルゲンの交差接触、検査項目、期限設定の根拠、返品と回収、保険、納品後の温度管理、事故時の連絡順位を取り決めます。商標やパッケージ版下、レシピの利用範囲、独占販売する地域と期間も確認します。メーカー独自の製法まで小売側が当然に所有すると考えるのではなく、双方が何を持ち寄ったかを整理します。

最もトラブルになりやすいのは、想定より売れなかったときです。最低生産ロットと発注確定の時期、印刷包材や専用原料の余剰、急な仕様変更による費用を、発売前に数量と金額で可視化します。売れ残りを製造先へ一方的に戻す前提では、良い取引関係にはなりません。原料高やエネルギー費上昇時に価格を見直す協議の時期と手順も定めておきます。取引条件の適法性は契約形態や企業規模によって異なるため、個別契約の最終確認は担当部門と専門家が行います。

共同で育てる仕組みをつくる

共同で育てる仕組みをつくる様子をイメージした画像

発注後は、発売直後の試食反応、問い合わせ、再購入率、返品理由を製造先と共有し、月次で改良を話し合います。製造先からは原料歩留まりや工程上の制約、代替原料の候補などを聞きます。スーパー側の顧客理解とメーカーの加工技術を結び付け、パートナーシップを深めていくことが大切です。

共同開発品なら、包装に製造者を明示し、地域の工場や作り手の技術を伝えることも販促になります。ただし「地元産」「手作り」などの表現を使う場合は、実態と表示の整合を確認します。メーカーにとって自社NBとの競合や取引先への販売制約があるなら、初期段階で率直に協議します。小売側は数量の約束を守り、無理な短納期を避け、売れ行きが伸びた際の設備投資についても見通しを共有します。双方が利益を得られる条件が、品質と供給を長く支えます。

NBとPBの値入はカテゴリー全体で設計する

NBとPBの値入はカテゴリー全体で設計する様子をイメージした画像

同じカテゴリーのNBとPBでは、値入の出発点が異なります。NBは全国で認知され、比較購買されやすいため、競合店の実売価や特売頻度を踏まえて売価を決め、仕入条件との間で値入を組み立てます。PBは比較対象が少ない分だけ自由に高い値入を設定できる、と考えがちですが、それは危険です。顧客が認める品質と売価を先に置き、その価格で継続供給できるよう仕様と原価を調整します。安さを約束するPBと、味や用途で選ばれるPBでは、目標値入も当然異なります。

仮に税抜売価200円、仕入原価150円のNBなら値入率は25%です。PBを200円で売り、仕入原価が130円なら値入率は35%になります。ただしPBに1個当たり10円の物流・開発・販促・廃棄負担が加われば、これらの負担を差し引くと、1個当たり60円が残ります。値入率は売価に対する仕入差額の割合で、最終的な荒利益率とは値引きやロスによってずれます。単品荒利だけでなく、カテゴリーの荒利額、売上、客数、買い回りへの影響も考えて判断するようにします。

棚と販促も役割に応じて変える

「棚と販促も役割に応じて変える」をイメージした画像

NBはそのブランドを目当てに来店するお客様の需要を受け止め、PBは比較の中で新しい選択肢を示します。定番棚では、売れ筋NBを見つけやすい位置に残し、同じ用途のPBを近くに置いて価格、容量、特徴を比較できるようにします。PBの荒利益が高いからといってNBを下段へ追いやったり、フェースを機械的に奪ったりすれば、カテゴリーの売上を失いかねません。棚位置は手に取りやすさだけでなく、週販、補充負荷、欠品率、購買層を見て試行するようにします。

販促では、NBはメーカーの認知や共同企画、特売を活用しやすい一方、PBは小売自らが「なぜ作ったか」「どう使うか」を伝える必要があります。発売時は試食、献立提案、地元メーカーの紹介、比較しやすい棚札が有効です。値引きで一度買わせるだけではなく、二度目の購入につながったかをID-POSなどで確かめます。NB特売で客を呼びPBで利益を取るという単純な役割分担ではなく、両者を並べたときにカテゴリー全体の利益と顧客の選択がどう変わるかを検証することが重要です。

まず一品で検証し、育てる

「まず一品で検証し、育てる」をイメージした画像

最初から多品目に広げず、まず購買頻度が高く、需要が読みやすく、品質の差を説明できる一品を選ぶことをおすすめします。一部店舗で発売して、POSデータで週販、荒利益額、廃棄率、既存商品の売上減少を、ID-POSで再購入率を分析します。PBだけの売上増に見えても、同じ棚のNBを置き換えただけならカテゴリー全体の利益が増えていない場合があります。顧客の声を受けて容量や味を直し、供給が安定した段階で店舗を増やします。

PBの成否は、商品を発売した数では測れません。顧客が繰り返し選び、店の利益と信頼を積み上げるかどうかです。中小スーパーは、自店の商圏についての知見を製造先と共有し、商品を共に育てることに重きを置くべきです。

PBは発売すれば終わりではありません。最初の試作品が好評でも、継続して買われるか、製造先が無理なく供給できるか、カテゴリー全体の利益が増えるかは、売場に並べて初めてわかります。発売後は売上と値入率だけでなく、再購入、値引きや廃棄、NBへの影響、お客様の声を確かめ、製造先とともに味や容量、発注方法を見直すことが大切です。

中小スーパーの強みは、地元のお客様の暮らしを近くで見ていることです。その知見をメーカーの技術と結び付け、互いに利益の残る条件で商品を磨けば、大手のPBとは異なる存在価値が生まれます。まずは一品から、製造先と協力して商品を育てていく気持ちが大切です。

(文)食品商業・販売革新・飲食店経営 
統括編集長 株式会社アール・アイ・シー 代表取締役 毛利英昭

※ 当記事は2026年10月時点のものです。
 時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

Toshiba Tec Group Philosophy Creating with You ともにつくる、つぎをつくる