採用・育成から戦力化まで外国人と共に働く
お店づくりトピックス
人手不足が深刻化する中、小売業や飲食業で外国人が活躍する場面が増えています。その形態は技能実習生から留学生のアルバイトまで様々です。雇用に関する基本的知識から教育や育成、戦力化まで、外国人と共に働くために知っておきたいノウハウを紹介します。
過去最高を記録した在留外国人 特定技能者数も大きく伸長
2025年は外国人入国者数が初めて4000万人を超え、過去最高を記録しました。日本に長期滞在する在留外国人数も約412万人に達し、国別では永住者や留学生の多い中国(1位)や韓国(3位)が上位に来ますが、就労を目的とした在留資格である「特定技能」に限ると、ベトナムが最も多く、インドネシア、ミャンマーと続きます(図1)。特に近年大きく伸びているのがインドネシアで、2024年比で60%以上増加しています。
ひと口に在留資格と言っても様々な種類があります。日本で働くことのできる在留資格は一般的に「就労ビザ」と呼ばれます。そうした就労にかかわる主な在留資格をまとめたものが図2です。
中でもよく知られているのが、「技能実習」です。これは働きながら日本の技術を学び、その技術を本国に持ち帰るのが本来の趣旨でした。しかし、実際には人手不足の現場で労働力として活用されてきた側面もあり、2027年に廃止され、より実情に即した育成就労制度へと移行します。
この技能実習とは別に、2019年から導入されたのが「特定技能」で、定められた分野での技能とある程度の日本語能力があれば、日本人労働者と同等以上の待遇で外国人を受け入れることができます。
これらの制度を利用して外国人を雇用する場合は、非営利の監理団体(組合)や登録支援機関に依頼するのが一般的です。
留学生の募集・採用には 学校への働きかけが有効
小売業やサービス業に就労する外国人の多くは技術・人文知識・国際業務、通称「技人国」と呼ばれるビザで働いています。家電量販店などでインバウンドの観光客向けに母国語で接客するスタッフの多くは、この在留資格で働いています。また、小売業や飲食業では、技能実習や特定技能の在留資格を持ち、惣菜などの食品製造業務に就いている人もいます。
近年はコンビニエンスストアで働いている外国人をよく目にしますが、彼らの多くは「留学ビザ」と呼ばれる在留資格を持ち、日本語学校や大学などで学んでいる留学生です。留学ビザでは資格外活動許可を取れば、週28時間、夏休みや春休みなどは週40時間まで就労が認められています。留学生は日本語をある程度話すことができ、授業のない夜間や休日に働けるため、接客を伴う小売店や飲食店でアルバイトとして働いているケースが少なくありません。出入国在留管理庁への届出も不要なため、外国人を初めて雇用する場合は、留学生から始めるとよいでしょう。
雇用する際に必ず確認していただきたいのが「在留カード」です。在留カードは中長期で日本に滞在する外国人に交付されるもので、常に携帯することが義務付けられています。面接時にこの在留カードを提示してもらい、表面だけでなく、裏面も必ずチェックしてください。留学生の場合、裏面の資格外活動許可欄に許可の印が押されていれば雇用できます(図3)。この記載がないと、不法就労助長罪に問われる可能性があります。
外国人留学生を募集したい場合は、ハローワークや外国人向け求人サイトを利用する方法が一般的ですが、お勧めしたいのが近隣の日本語学校や留学生の多い専門学校などに働きかけ、掲示板などに求人広告を出してもらうことです。また、店舗の貼り紙を見て応募する留学生も多く、「留学生歓迎」と書いた求人の貼り紙を出すのも効果があります。
留学生を一人雇用できれば、友人や知人を紹介してくれることが多く、定着率も高いというメリットがあります。そのためには、雇用条件や働きやすさなど、その留学生が友人や知人に勧めたくなるような労働環境にしていくことも欠かせません。
主語と述語を省略せずに 丁寧語で話す
外国人スタッフとスムーズにコミュニケーションを取るうえで重要なのが、「丁寧語で話す」ということです。日本に来る技能実習生や留学生は、〝ですます調〟の日本語を学んでいます。そのため、命令口調やフランクな言葉遣いではうまく理解できない場合があります。
丁寧語で話すと、話すスピードが自然とゆっくりになります。また、方言特有の単語や語尾、イントネーションは、外国人には伝わりにくいこともありますが、丁寧語で話すようにすれば、そうした弊害も和らげることができます。
主語と述語を省略せず、最後まできちんと言うことも大切です。日本人なら「明日9時からミーティングをやります」と言われれば、その時間にミーティングに出席するよう指示されていることがわかりますが、相手が外国人の場合は「〇〇さん、明日の9時からミーティングを開きますので、出席してください」と、「誰に何を求めているのか」を明確に言わないと伝わりません(図4)。
外国人スタッフを叱る際も注意が必要です。例えば、相手が遅刻してきた場合、日本人なら「どうして遅刻したんだ?」と言えば、怒っていることが伝わりますが、外国人は単に遅刻した理由を問われているだけで、叱られているとは思いません。「私はあなたが遅刻したことに怒っている」とはっきり言い、遅刻が良くない行為であることを伝える必要があります。
外国人スタッフと距離を縮めるには、相手の出身国に興味を持つことが大切です。食事や風習、生活習慣などについて尋ねると、喜んで教えてくれることでしょう。
近年、在留者が増えているインドネシアは、国民の約90%がイスラム教徒です。イスラム教では豚肉は食べることはもちろん、触れることも忌避されます。食事の提供や、食品を扱う仕事に従事してもらう際は注意が必要です。
外国人労働者は大きな戦力 インバウンドの誘致にも効果
外国人を雇用するメリットは、そのスタッフを通じて可能性が広がることです。例えば、技能実習生としてベトナム人を雇用してきた企業が、彼らが日本で培った技術を生かさないともったいないと、現地に製造拠点をつくった例が少なからずあります。小売業や飲食業でも、現地に進出する際には日本語の話せるスタッフの存在が大きな力になってくれます。
日本を訪れる外国人観光客は今後ますます増えていくと考えられます。特に大きく増えると予想されているのが、ベトナムやインドネシアなど東南アジアからの観光客です。
現地の言葉が話せる外国人をスタッフとして雇用することで、その国のお客様を誘致する大きなアドバンテージになります。
小売業や飲食業でも人手不足が顕在化する中、インバウンド需要にも対応できる人材として、外国人労働者を戦力化することがますます重要になっています。
監修:横山 仁(よこやま・じん)
近畿大学卒業後、リクルートグループに入社
2004年に株式会社ジェイタウンを設立し
人材ビジネス業全般で事業展開
- 当記事は2026年6月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。