日本ショッピングセンター協会月刊誌
「SC JAPAN TODAY」2025年12月号
に当社の取り組みが掲載されました
当社では、生成AIを活用した社内業務の効率化や、お客様向けソリューションの開発に積極的に取り組んでいます。現場巻き込み型のワークショップやPoC(概念実証)の実施など、現場主導・部門横断・顧客共創を軸にした生成AI活用を推進しています。
今回、ショッピングセンター業界における生成AI活用の最新動向や想定されるユースケースとあわせ、これまでの弊社の取り組みや実践事例を「SC JAPAN TODAY」に寄稿させて頂きました。業界を問わず、生成AIによる現場の課題解決やサービス品質向上のヒントとして、ぜひご一読ください。
掲載誌: 「SC JAPAN TODAY」2025年12月号(https://www.jcsc.or.jp/category/cat_magazine)
発行元:一般社団法人 日本ショッピングセンター協会
※当社寄稿文は下記となります。
SC業務改革を支援する生成AI活用支援サービス
~現場参加型で共創を促進〜
2025年時点で、生成AIを業務で活用している企業は全体の約56%に達し、推進中・検討中を含めると9割近くが何らかの形でAI活用に着手している(*1)。ショッピングセンター(以下、SC)においてもAI導入は急速に進展している。しかしSCは、多様なテナント・店舗・顧客層を抱える複雑な現場であり、独自の課題を有する。人手不足や業務負荷の増大、顧客体験の多様化、情報・ナレッジの分散、現場のDX推進の壁などが、現場の生産性向上やサービス品質向上を阻害している。そこで、東芝テック㈱(以下、当社)では、生成AIの活用による顧客課題の解決を目的とした企業向け生成AI活用支援サービスの提供を開始した。
SC業務で想定される生成AIユースケース
SCは、単一企業の小売店舗とは異なり、多様な業種・ブランド・規模のテナントが一つの施設に集積し、施設管理会社が全体運営・顧客体験・安全管理・情報発信を担うという独自の構造を持つ。このため、生成AIの活用も「多テナント・多部門・多様な顧客接点」を前提としたユースケースが特徴的である。
(1)テナント横断の「お客様の声(VOC)」AIダッシュボード
SCでは、各テナントや施設管理会社に寄せられるお客様の声が、メール、アンケート、SNS、現場スタッフ経由など多様なチャネルに分散している。生成AIを活用したVOCダッシュボードは、全テナント・全館共通で顧客フィードバックを一元管理し、店舗環境・商品・サービス・イベント・安全対策など多角的な観点で自動分類・要約・傾向分析を行う。これにより、SC全体の顧客満足度や課題をリアルタイムで可視化し、テナント間・管理会社間での情報共有や改善アクションの迅速化が実現される。
(2)テナント支援・業務効率化AIエージェント
生成AIを活用したテナント向けFAQチャットボットや業務支援エージェントは、契約内容・館内ルール・イベント申請・販促支援・設備トラブル対応など、テナントからの多岐にわたる問い合わせに24時間自動応答する。これにより、SC管理会社の業務負荷軽減とテナント満足度向上が同時に実現される。さらに、AIは問い合わせ履歴分析し、よくある質問や課題を自動でナレッジ化・改善提案することも可能である。
(3)テナント間・館内横断のナレッジ共有・情報検索
SCでは、各テナントが独自に持つノウハウや販促事例、イベント情報、緊急時対応マニュアルなどが分散しやすい。生成AIによる横断ナレッジ検索・自動要約は、テナント・管理会社・警備・清掃・運営など多様な関係者が、必要な情報を自然言語で即時検索・取得できる環境を実現する。これにより、SC全体の業務標準化・属人化解消・教育効率化が促進される。加えて、多国籍顧客や多様なテナントスタッフ伝達が可能となり、テナント満足度、館内コミュニケーションの向上につながる。
(4)販促・イベント支援AI
SCでは、販促イベントが頻繁に開催される。生成AIは、各テナントの販促情報や商品データをもとに、館全体のキャンペーン案内文・POP・SNS投稿文を自動生成し、統一感のある情報発信を支援する。さらに、イベント後のアンケートや売上データをAIが自動分析し、次回施策の改善提案や効果測定レポートを自動作成することも可能である。
当社の取り組みと生成AI活用サービス
3.1 「TEC AI Innovation Hub」の活動と現場巻き込み
当社では、社内のAI活用を加速させるため、「TEC AI Innovation Hub」を設立した。本組織は、社内業務の効率化とAIによる革新を目指す全社的なタスクフォースであり、業務プロセスの最適化、AI人材の育成、企業ブランド力の向上、そしてAIを活用した新たなサービス創出を目的としている。TEC AI Innovation Hubでは、エバンジェリストの選抜、社内コミュニティの開設、勉強会の実施、ポータルサイトの構築、商標申請、プレスリリースの発信など、段階的かつスピーディーに活動を展開してきた。さらに、生成AIプラットフォームの検討やPoC(概念実証)の実施、業務で活用するためのサンドボックス環境の構築、コンテストやブートキャンプの開催を通じて、業務課題の洗い出しと活用の道筋をつけている。
TEC AI Innovation Hubの特徴は、現場巻き込み型のワークショップやブートキャンプを通じて、現場の課題を自分ごと化し、部門横断でのユースケース創出・PoC・定着支援を一気通貫で実現する点にある。エバンジェリストや現場リーダーが中心となり、現場スタッフのAIリテラシー向上や、現場主導の業務改善・サービス向上を促進している。
3.2 実践事例
当社では、社内で培ったAI活用のノウハウをもとに、生活協同組合連合会コープ東北サンネット事業連合、みやぎ生活協同組合との協業を実施した。現場の課題抽出からPoC、定着支援までを一気通貫でサポートし、現場の納得感や巻き込みを重視したアプローチで成果を上げている。具体的には、部門横断で業務課題を深掘りし、生成AIを活用した解決策を企画するワークショップを実施。30件以上の課題とユースケースが創出され、参加者からは「自部門では思いつかなかった活用の切り口に気づけた」「他部門の課題を知り、自分の業務にも活かせそうだと感じた」などの声が寄せられた。ワークショップ主催者からも「最初は議論が深まるか不安だったが、自由な雰囲気のなかで積極的に取り組む姿勢が見られた」との評価もいただけた。現在、このワークショップをきっかけに、業務改善や顧客サービス向上に向けて、生成AIの活用が着実に進展している。
3.3 生成AI活用サービスの概要と今後の展望
当社が提供する生成AI活用支援サービスは、DX推進や現場課題の解決ニーズに応え、業務改革を加速するものである。現場課題の洗い出しからユースケース創出、PoC、定着支援までを一気通貫でサポートする点が大きな特徴となっている。
SCは、多様なテナント・多部門・多様な顧客接点を持つ複雑な現場運営を特徴とし、生成AIの活用はその複雑性に最適化されたユースケースで大きな成果を上げている。TEC AI Innovation Hubによる現場巻き込み型のワークショップや、生活協同組合連合会コープ東北サンネット事業連合、みやぎ生活協同組合での実践事例は、現場主導・部門横断・顧客共創を軸にした生成AI活用の有効性を示している。今後も、SCならではの現場横断・多様性・リアルタイム性を活かした生成AI活用が、SC全体の価値向上と持続可能な運営に大きく貢献すると考えられる。(文/東芝テック(株) 宮坂真弓)
(*1) 出所:PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2025春 5カ国比較」 2025年6月
(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2025/assets/pdf/generative-ai-survey2025.pdf 2025年10月1日参照)