ワンストップ・ショッピングとショートタイム・ショッピング
国内外流通トピックス
ワンストップ・ショッピングとは、その言葉通り一か所で必要なものをまとめて買うことができることです。スーパーマーケット(以下、スーパー)は、肉屋、魚屋、八百屋、乾物屋といった、従来の食品専門店を一か所に集め、統合し、ワンストップで買い物できる、お客様の利便性を向上させた業態です。 ところが、いろいろ揃っているということが、品揃えによって探しにくく買いにくい売場になり、短時間で買い物したいというショートタイム・ショッピングを阻害することになりかねません。 そこで、ワンストップ・ショッピングとショートタイム・ショッピングのメリットを合わせ持つ売場づくりの考え方を紹介します。
業態によって異なる役割
同じように一か所で買い物ができる業態として、GMS(General Merchandise Store:総合スーパー)や百貨店があります。一般的なスーパーは毎日の食事の支度に必要な食材を中心に、購買頻度の高い日常必需品(最寄り品)を総合的に品揃えしています。
それに比べてGMSや百貨店は、規模、商圏、対象、取り扱い分野などの違いにより、取り扱う商品は買い回り品も多く、品揃えも幅広く深いものになっています。このように、総合的なという意味合いが業態によって異なることは言うまでもありません。
さらに同じスーパーでも、商圏や客層など様々な要因によって、方向性が異なります。大切なのは、自店、自部門において総合的とはどういうことかを考え、どう実現するのかということです。「スーパーにドレスや宝石などを買いに来るお客様はいない」といった極端な例であれば、誰もが理解できますが、日常的な仕事の中では、気づかないうちに、お客様の視点から離れてしまい、誤った売場づくりを実践している場合が往々にしてあります。
誤った判断を防ぐためには、まずは、スーパーの果たす役割とお客様の買い物の実態をしっかりと認識することが大切です。
問われる品揃えと買い物のしやすさの両立
「ショートタイム・ショッピング」とは、買い物にかける時間を短縮することで、短時間で必要な商品を見つけて購入したいというお客様のニーズに応えることです。買い物時間に対する考え方は、業態により異なります。例えば百貨店は、ウィンドウショッピングを含め、店内をゆっくり見て買い物を楽しむ時間消費型であり、スーパーは必要な商品を短時間で買えることが重視されます。短時間で必要な商品を購入できる店とは、「商品が探しやすく、選びやすく、安心して買える店」とも言えます。
ますます忙しくなっている現代人、特に多くの働く主婦は、平均的に週3~5回もスーパーへ出かけ、欠かすことのできない買い物(主に食材)を短時間で済ませたいという願望を強く持っています。さらにコロナ禍以降、「時間を有効活用したい」というタイパ(タイムパフォーマンス=時間対効果)がより重要視され、今後はワンストップ・ショッピングとショートタイム・ショッピングの両立こそが、お客様が店舗を選ぶ大きなポイントとなることは明らかです。
しかし、より豊富な品揃えを追求すれば、商品数や売場面積が拡大し続け、結果的に買い物に時間がかかってしまうなど、この両者は相反する側面があります。これをいかに高次元で両立させることができるか、店舗の総合力が問われます。
ワンストップ・ショッピングを快適にするポイント
では、選べる楽しさと時間節約を両立できる売場づくりの進め方について紹介します。
①商品の豊富さと品揃え(商品構成・商品分類)の改善
限りある売場の中で、お客様にとってより商品が豊富に感じる品揃えを実現する必要があります。豊富な商品の品揃えとは、単に商品の種類の多さで実現できるものではありません。例えば、品種(ライン)を多くすることで客層の幅は広がりますが、1品種の単品(アイテム、SKU)が少なくなり、お客様にとって、希望する商品がない可能性が高くなります。
逆に品種を絞って単品を多くした場合、各商品群のお客様の選択肢は広がりますが、多様なお客様のニーズに応えづらくなります。
品揃えを考える上で、「品種の数」のことを「品揃えの幅」といい「狭い/広い」で表され、「品目の数」のことを「品揃えの深さ」といい「浅い/深い」で表されます。品揃えは、商圏内のお客様の属性(年齢層、家族構成など)や店舗の規模、競合店の状況などによって、幅と深さのバランスを考慮した上で設定され、売上データなどを基に仮説・検証・商品の改廃が繰り返され、常に改善され続けています。
②商品の探しやすさ——インストア・マーチャンダイジングの最適化
商品があることが分かっていながら、探してもなかなか目的の商品が見つけられないといった、商品の陳列場所が分かりづらい店舗の原因として、インストア・マーチャンダイジング上に以下のような問題がある可能性があります。
①レイアウト
セルフサービスをより快適なものとするために、お客様を店舗内で計画的に誘導、案内するワンウェイコントロールという方法が確立され、今日に至っています。その原則を理解し、状況に応じて適切に活用することが求められます。
②棚割り
お客様が「見やすく、取りやすく、選びやすい」ように、場所を考慮して陳列しますが、商品分類の台帳上の区分だけではなく、料理用途、ライフスタイル(単身など)、価格帯などいろいろな関連でまとめて陳列することや、単品の大量陳列によってお客様が商品を探しやすい環境を作り出すことができ、また店舗側で販売したい商品を提案・訴求することができます。
③各種案内・POPなどの販促物
セルフサービスのスーパーでは、「物言わぬ案内係」として、その的確な設置が重要です。
③安心と信頼——品切れの防止・品質(鮮度・味)の保証・衛生管理の徹底
夕飯はすき焼きにしようと考えて買い物したところ、焼き豆腐が品切れだった。マグロの刺身がどれもドリップが出て鮮度劣化したものばかりで買えるものがない。いつ行っても、牛乳やパンの同じ商品で日付の違うものが複数陳列されていて、その都度よく注意して選ぶ必要がある……。もしそんな状況が常態化していたら、お客様はその店舗を信頼し、安心してワンストップ・ショッピングを行うことはできません。いつ行っても、売場に定番品の品切れがなく、品質に対しても安心して買い物ができることによって信頼できる店舗として認められ、固定客になっていただけるのです。
ワンストップ・ショッピングとショートタイム・ショッピングの両立には、スーパーの基本の徹底と創意工夫の積み重ねが大切です。そのためには、長いスーパーの歴史の中で、繰り返され積み上げられた仮説と検証、それに基づく改善の歴史を振り返って考えてみることをお薦めします。
((文)特定非営利活動法人JOFリンク
代表 小川英治
発行・編集文責:株式会社アール・アイ・シー
代表取締役 毛利英昭
※ 当記事は2026年4月時点のものです。
時間の経過などによって内容が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。